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18話:ヒーローの生き様

「え、戦いが!?」


キラはフウヤに聞き返した。

フウヤがジュエルワールドでの戦いを察知し戦場に向かっている所を、キラが偶然見つけたのだ。


「ああ、結構大規模な……おい!」


フウヤが話している途中にも関わらず、キラはこの場を駆け出した。

フウヤは呆れて肩を竦めた。


「お前が行って収まる保証も無いってのに」


フウヤも移動を再開した。




《タックルキラー》


「ぬおおおおお!!」


ゴウカは赤いエネルギーを身に纏い、超高速でダッシュした。

テルは何とか回避するが、ヒーローは直撃を受けてしまう。


「うわああああああ!」


ヒーローは河川敷をゴロゴロ転がるも、すぐに起き上がる。



「はっはっはっ。ヒーローを攻撃するとは許せないんだぜ!」


《スーパーキラー》


ヒーローの体が鮮やかな紫色にキラキラ輝き、一瞬でゴウカの目の前に移動する。


「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」


ヒーローが物凄いラッシュで繰り出す拳をゴウカは防ごうとするが、耐え切れず体勢を崩す。


「今だ!」


《アッパーキラー》


ヒーローの右手が帯電し、ゴウカを殴り飛ばした。

ゴウカの体が宙を舞い、追撃のチャンスに思えたが、ヒーローは立ち尽くしたまま動かない。

ゴウカが地面に倒れると同時にヒーローは両腕を天に掲げた。


「カッコイイポーズ」



《スラッシュキラー》


テルは剣に紫のオーラを纏わせ、斬撃を飛ばしてヒーローの背中に命中させた。


「くぅ、ヒーローに向かって失礼なんだぜ!」


「うるさいわよ」


ヒーローのズレた言動にテルのイライラも限界が近づいてくる。

更に切り掛かろうとしたテルの腕を誰かが掴んで引き止めた。


「………キラ、放して」


「いや」


もう顔を見ずともテルには分かった。

こんな状況で不意打ちもせずにジュエラーにわざわざ近づく者などキラ以外にいるはずがない。


テルは自分を引き止めた少女と向き合う。


「どうして……どうして、テルは戦うの?人を殺してまで叶えたい願いってなんなの?」


キラは今まで何度も尋ねてきたことをまた問うた。

どうしてジュエラーは殺し合いをやめないのか。

その理由はやはり己の願いを叶えられることだろう。


なら、テルの戦う理由はなんなのか。

キラはそれが分からなかった。



また……また、この子か。とテルは内心悲しみ、同時に怒っていた。


この子は私が戦う理由を話すまで何度でも私の前に立ちはだかるだろう。

もう、素直に明かすべきだろうか。

それは出来ない。


それを言ってしまえば、私はこの子を認めてしまう。

私の中に、刻み込まれてしまう。

それでは駄目だ。

キラを大切に思っては、認めてはいけない。



「貴女には関係無い」


テルはキラを突き飛ばし、背を向ける。

そうこうしている内に、戦いは混戦を極めていた。


エメラルドとルビーとアレキサンドライトが三つ巴で争っていた。


キラは仲裁しようと足を進める。




《サモンキラー》

《サモンキラー》

《サモンキラー》


次の瞬間、キラの体にミサイルと毒が叩き込まれ、水で吹き飛ばされた。


「っ!!」


テルはすかさずキラの元へ駆け寄り、安否を確かめる。

キラは気絶こそしているものの、デッキ等に被害は無いようだった。


「ふぅ…チッ」


テルはキラが無事なことに安堵している自分に心底嫌気がさした。



「あーれー?力加減間違えちゃったかなぁ?」


現れたのはユカリだった。


「折角ダイヤちゃんと遊ぼうと思ったのにー」


厄介な奴が来た……とテルは心の中で悪態をついた。

下手に刺激するとどうなるか分からない。

とりあえず様子を見ることにした。


「ああっ!お前は指名手配犯の九留実ユカリ!」


「うん。貴方だあれ?」


突然ユカリを指差したヒーローに、ユカリは尋ね返す。



「くー!超極悪犯との戦いなんて燃えるぜ!まさしくヒーローなんだぜ!」


「私と、遊んでくれるの? ありがとう!」


《スラッシュキラー》


ユカリの手元に斧が召喚され、ヒーローに向かって駆け出した。


「うおおおおおおおおお!」


ヒーローは真正面から殴り掛かるが、ユカリの斧に押し負けて吹っ飛ばされる。

しかし、すぐにまた起き上がる。


「ヒーローの攻撃を喰らわないなんて失礼すぎるんだぜ!お前はヒーローになれないんだぜ!俺はヒーローだぜ!」


「馬鹿かアイツは」


フウヤは呆れて一歩下がった。

この二人に関わらない方がいいと判断した。



「もう怒ったんだぜ! 行くぜ! ヒーローアタック!」


《ファイナルキラー》


ヒーローの体に炎、雷、水、風の四つのエネルギーが集まる。

そして、ヒーローは四つのエネルギーを纏めると拳型の衝撃波にして打ち出した。


《ファイナルキラー》


ユカリも必殺技のカードを使う。ライオサードニクスがユカリの背後に移動し、ミサイルやらレーザーやらを目茶苦茶に発射した。

二人の必殺技はぶつかり合い、相殺した。



「まだまだぁ!」


《ファイナルキラー》


すると、ヒーローが二枚目のファイナルキラーを使った。


「二枚目のファイナルキラーだと……」


ゴウカもまさかの展開に驚く。

ユカリは気にせずにカードを魔導書に差し込む。


《ファイナルキラー》


今度はラビットアクアマリンが現れた。


「どおりゃあああああ!!!」


ヒーローは黒いエネルギーを纏いながら小さな竜巻と化してキックを繰り出す。


「必殺、ヒーロー旋風脚!」


ユカリはラビットアクアマリンの作った激流に飛び込み、不規則な軌道でヒーローの必殺技に向かって行く。



二人のキックがぶつかり、お互いに勢いよく弾き飛ばされる。

ヒーローはすぐさま飛び起き、ユカリはノロノロと起き上がった。


「うん。君も結構面白いねぇ」


「当たり前だぜ!俺はヒーローだからな!」


そして、二人はまた同時にカードを差し込んだ。


《ファイナルキラー》

《ファイナルキラー》


「まだあるの!?」


テルはまた驚いた。

複数のモンスターと契約したユカリはともかく、一体のモンスターと契約しているだけのはずのヒーローまで三枚のファイナルキラーを所有しているとは。


「あいつのデッキ構成どうなってんだ」


フウヤも軽く引いていた。



そうこうしている内に最後の衝突が始まろうとしていた。


ヒーローの後ろにバッタ型のモンスターが現れ、光の粒子に分解するとヒーローの体を包み込んだ。


「行くぜええええぇぇぇ!!」


天高くまでジャンプし、右腕を振るって、まるで一筋の流れ星のようにユカリ目掛けて襲い掛かる。


ユカリの後ろにイーヴィルサファイアが現れ、毒々しい青色のエネルギーに乗ってヒーローに向かってユカリが飛び出した。


「ハアアアアアッ!」


ユカリの脚とヒーローの拳がぶつかり、エネルギーが辺りに飛び散って爆発が起こる。



爆発が収まり、煙が晴れるとユカリとヒーローの姿が現れた。

二人ともボロボロで、肩で息をしていた。


それを見ると、フウヤが鞭を持って前に進み出す。

テルはフウヤに尋ねた。


「傍観するんじゃなかったの?」


「九留実ユカリはファイナルキラーを使い切った。倒すなら今がチャンスだ」


その時、ユカリがいきなり笑い始めた。


「っハハハハハハハハハ!!いいよいいよいいよ!面白くなってきたぁ!」


バックルからカードを勢いよく引き抜くと魔導書に差し込んだ。


《フュージョンキラー》


イーヴィルサファイア、ラビットアクアマリン、ライオサードニクスが現れ、宝石となって砕けたかと思うと、一つに集まって合体を始めた。

周りの誰もが息を呑んで見守ると、次の瞬間、恐ろしいモンスターが現れた。


イーヴィルサファイアの体をベースに、背中の羽はライオサードニクスのように機械的な様で、砲門やミサイルでうめつくされていた。

足はラビットアクアマリンのように水色をしており、キラキラと輝いていた。


イーヴィルサファイア、ラビットアクアマリン、ライオサードニクスの三体のモンスターが合体したキメラ型モンスター、カラージョンが誕生した。



「何だ、あれ………」


フウヤはその異様な怪物を見て動きが止まった。

カラージョンは咆哮を何度もあげ、その度に大地が大きく揺れる。


「やっちゃって」


ユカリが命令すると、カラージョンは直ぐさま辺りにビームを撃ち始めた。

口からは大きな高密度のビームが、手足からは細いビームが大量に乱れ撃ちされる。


フウヤとルビーは全力で逃走をして、ゲートを探し始める。

テルもキラを抱えて退散する。





ジュエルワールドはすっかり沈黙が支配していた。

辺りは黒焦げになり、不気味なまでに何の音もしなかった。


そこで、一人の男がピクリと動き出した。



「びっくりしたぜ。俺がヒーローじゃなかったら危なかったぜ!」


ヒーローが独り言を言いながらノロノロと地べたを這っていた。

カラージョンが攻撃を始めた際に、ヒーローは地面に穴を掘ってそこに隠れたのだ。


もっとも、それで完全に回避出来るはずもなく、何発かビームを喰らってしまったのだが。

そのせいでヒーローは今地べたを這うしかないのだ。


「他の奴らもやられてそうだな……ま、ヒーローであるこの俺が一番元気だがな!」


ヒーローは一人で大声で笑う。

確かに他の面子に比べると隠れていた分ヒーローの被弾は少なかったかもしれない。



ただ、ヒーローは一つ見落としていた。

そのビームを発射した側の人間はまだピンピンしているであろうことを。


「……………」


ユカリは無言でヒーローに近付いて行く。

足音で気付きそうなものだが、ヒーローは笑っているため気付かない。

そして、ユカリはヒーローを蹴り上げて河川敷の坂にたたき付ける。


仰向けになったヒーローの腹を思いっ切り踏み付ける。

ヒーローは苦悶するとユカリに懇願した。



「金をやるから見逃して欲しいんだぜ!」


「だーめっ♪」


ユカリはヒーローの要求を一蹴するとカードを魔導書に差し込む。


《スラッシュキラー》


ユカリは斧の柄を強く握ると、ヒーローの胸目掛けて思いっ切り振り下ろした。

装甲に大きな衝撃が伝わり、ヒーローは余りの痛みに血を吐き出す。


何度も何度も叩き付け、装甲が砕けると共に血が滲み、ユカリの斧にも血が付着する。


「ック、アハ、ハハハハァ」


休むことなく、むしろどんどんスピードを上げ、時には斧の腹で頭をたたき付けながらヒーローをいたぶる。


「やっぱり!やった!楽しいイイイイイィィぃ!!」


狂ったように斧を振り続け、人を殺す快感に酔いしれる。


先程の様に必殺技をぶつけ合うのも嫌いではない。

が、やはりユカリはこのように人を何かの道具で殺すのが一番好きだった。

直接殺す感触を味わうのではなく、武器を通して間接的に感触を得る。この遠回しな感じがユカリをより興奮させた。


「ねぇ死んじゃう!? もう死んじゃう!? 死ぬなら言って…やっぱり言わないで! いつ殺すか分からないギリギリが大好きなの!!」


一人で勝手にまくし立て、ユカリはより一層力を込めて斧を振るう。


ヒーローはもう何も喋れなかった。

一応うめき声は出ているため生きてはいるだろう。だが、どの道致命傷だった。


そして最後の瞬間が訪れる。

ヒーローの首目掛けて思いっ切り斧を振り下ろす。

ヒーローの首はあっさりと切断され、血が吹き出る。

ユカリは血を浴びるのも構わず、跳び上がった頭を斧でぶち壊した。

最高のフィナーレを迎えたユカリは地面に仰向けに倒れた。



「………!!!ッッ!」


晴れやかな笑顔でユカリは地面をゴロゴロ転がり、時間切れギリギリまでユカリは喜び続けた。




「おーおー、またサファイアがやったのか。アイツも好きだねぇ」


「君が選んだんだろう」


パラサンが呆れ気味にケセランを見る。

事の顛末を見守っていたが、やはりユカリは色んな意味で規格外だった。


「確かにこれはちょっとやり過ぎたなぁ……」


ケセランは暫く考え、やがて不敵に笑みを浮かべた。



「ならコイツを、アメジストにプレゼントしてやろうかねぇ」


ケセランの中から、光り輝く一枚のカードが現れた。

パラサンは、そのカードの名を呟いた。






「エターライト」

超六ヒーロー CV.緑川光



アレキサンドライト

デッキ構成


スーパーキラー

アッパーキラー×1

サモンキラー×1

ファイナルキラー×3

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