16話:超新星、現れたヒーロー
「さー皆。遊んでいいよー」
ユカリが手を振って指示すると、三体のモンスターはジュエラーを襲いに掛かった。
「くっ!」
アキラは咄嗟にガードの体勢を取るが、ライオサードニクスの前足に蹴飛ばされる。
ラビットアクアマリンは背中から光線を放ち、光線は放物線を描きながらテルに直撃する。
「ああっ!」
テルは肩を抑えて倒れ込む。
「くそっ」
フウヤはイーヴィルサファイアが放った光弾を鞭で防ごうとするが、防ぎ切れずに吹っ飛ばされる。
「ああ・・・」
キラはやられていく皆を見てうろたえる。焦って頭が回らなくなる。
その時、キラはイーヴィルサファイアが自分を狙っていることに気がついた。
襲い来る拳をかわし、振り下ろされる両手を跳んで回避する。
地面を一回転してバランスを取って辺りを確認すると、三体のモンスターが自分を狙っていることに気付いた。
ライオサードニクスはミサイルを、ラビットアクアマリンは光線。
イーヴィルサファイアは魔弾を両手から放つ。
キラは急いでバックルからカードを引き抜き、バイザーにセットする。
《フラッシュキラー》
桃色の閃光が辺りを覆う。
あまりの眩しさにユカリは目を手で隠す。
ユカリが目を開けると、辺りには誰もいなかった。
召喚したモンスターもキラのフラッシュキラーに消されてしまった。
逃げられたことを悟ると、ユカリは背伸びをする。
そして、満足げに息を吐いた。
「あー楽しかった。やっぱりダイヤちゃんは最高だね!」
翌日、キラはアキラに出会った。
「昨日はあのあと大丈夫でしたか?」
「ああ、問題は無かったよ・・・お前やテルは大変だな、学校があるというのに」
アキラはキラの持っている鞄を見て思わず呟く。
キラはアキラに尋ねた。
「アキラさんは、普段は何をしているんですか?」
「私はスポーツジムのバイトをしているよ。親のやっている所だから、とりあえず生きるだけなら充分だよ」
アキラはキラの側に寄り、空を見上げた。
「私は、最初は自分が何を望んでいるのか分からなかった」
自分の拳を、強く握り締める。
「だが気付いたよ。私は、やっぱり弟を生き返らせたい」
キラは、黙って話を聞く。
「それが禁忌だとしても・・・私の叶えたい願いはそれしかない」
「アキラさん・・・」
アキラはキラに向き直る。
そして、キラの肩に手を置いた。
「お前も、何か願いをきちんと決めた方がいい。でないと、この先が辛くなるだけだ」
キラは俯いて黙り込んだ。
アキラの言っていることは分かる。
この先、自分がアキラやフウヤの様に信念を持った相手と対峙した時にちゃんと向き合うことが出来るだろうか。
アキラが言いたいのは、そういうことだろう。
「私、は」
その時、キラとアキラの頭にキーンと甲高い音が響いた。
モンスターが出現した気配だ。
「アキラさん!」
「ああ」
キラとアキラはモンスターのいる場所へ駆け出した。
キラとアキラが向かっている場所には、既にテルとフウヤがいた。
モンスターを成長させるため、二人とも次々とモンスターを倒していく。
《スラッシュキラー》
テルの剣が藍色に輝き、モンスターを切り刻む。
フウヤも、鞭でモンスターを叩きつける。
その時、
「は――――っはっはっはっ!!」
誰かの耳障りな大声が辺りに響き渡る。
テルとフウヤは耳を塞ぎながら音の発生源を探す。
そして、テルは電柱の上に人影を見つけた。
「まさか・・・」
「新しいジュエラーか?」
フウヤは未知のジュエラーの存在に警戒する。
電柱の上に立つ男は、まだ少年に見える顔つきをしている。しかし、背の高さを見ると中高生よりも年上の印象を与える。
男はニッと笑う。
「俺の名は超六ヒーロー!またの名を・・・」
ヒーローは電柱から飛び降りると、空中でクルクル回転しながら地面に着地する。
「アレキサンドライトだあああああああああああああああああ!!!!!」
ヒーローは右腕を天に向かって突き上げる。
ヒーローの背後が何故か爆発し、名乗りを演出する。
テルとフウヤ、リーダーのサナギ型モンスターは固まってヒーローを見る。
全員呆れて言葉も出ない。
そこへ、キラとアキラがゲートを通って現れた。
キラはリーダーを見抜くと攻撃に戻る。
サナギモンスターは我に帰り、キラの拳を受け止めていく。
「あ!?おいお前、俺を無視するn・・・ぶべ!」
ヒーローはサナギモンスターに文句を言い始めたが、途中で躓いてこけてしまう。
アキラ達は群がる芋虫モンスターを次々と蹴散らしていく。
キラはサナギモンスターの猛攻をかい潜ると、腹を蹴り上げる。
《オフェンスキラー》
キラの右手にドラゴンヘッドが装着され、キラはモンスターを殴り飛ばす。
そしてドラゴンヘッドから巨大なダイヤモンドを発射し、サナギモンスターの両足を消し飛ばす。
《ファイナルキラー》
ドラゴンダイヤキックを叩き込み、サナギモンスターは爆散した。
キラは無事に着地し、モンスターの魂を捕食するダイヤドラゴンを見送った。
「おい、お前!」
ヒーローがキラを指差し、キラはビクッとした。
「だ、誰?」
キラは知らないジュエラーの存在に驚く。
そんなキラのうろたえには構わず、ヒーローは話を続けた。
「お前、俺よりヒーローっぽいことしたな・・・・・気に入らないんだぜ!」
ヒーローはいきなりキラを殴り飛ばした。
キラは地面を転げ回る。
やっとこさ起き上がり、頬を押さえながらヒーローに尋ねた。
「な、何するの!?」
「俺よりヒーローっぽい奴はいたら駄目なんだぜ!」
ヒーローは「うおおおお!」、と叫びながら再びキラを殴ろうと駆け出す。
が、テルが足を引っ掛けてヒーローのバランスを崩す。
バランスを崩してよろけるヒーローをアキラが殴り飛ばした。
「ありがとう、テル」
キラがお礼を言うと、テルは顔をしかめた。
「私は、ただあれに早いところ退場して欲しかっただけよ」
その時、フウヤは自分の体が蒸発し始めたことに気付いた。
「俺は一足先に帰るんだぜ!!」
「はや!」
アキラが突っ込むより先に、ヒーローはこの場を走り去った。
「あれは長生きしないタイプね」
テルはキラを引っ張ってゲートを潜る。
アキラ達も続けてゲートを潜り、ジュエルワールドを後にした。