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14話:ありがとうマイフレンズ

「え?」


トモヒコは状況が掴めずに呆然とした。


唖然としているトモヒコに先生が説明した。


「ここ数週間、トモヒコ君がからかわれてるって聞いてね。皆にやめるように言っておいたの」


トモヒコは理解が追い付かず、声が出ない。


そして、クラスメイトの子供が前に出る。



「あのー、トモヒコって大人しくて無愛想だからさ。だからからかってたらちょっと止まんなくなったんだよ」


「最近はちょっとやり過ぎたかなって」


「ゴメンな」


そして、クラスメイト達はまた頭を下げる。



「ね。だから、トモヒコ君にはこの子達を許してあげて欲しいの」


トモヒコは動揺していた。


憎んでいたクラスメイト達が急に和解を求めてきたのだ。



「ま、まぁ、許そうかな」


トモヒコの口から勝手に言葉が出て来た。気が動転していたのかもしれないし、もしかしたらこれが本心だったのかもしれない。


「じゃあ、今から皆で遊ぼう!」


クラスメイトに手を引かれ、トモヒコは運動場へと付いていく。


先生も、微笑みながら付き添いに行った。








「九留実ユカリの居所?」


テルはアキラの質問の内容を聞き返した。

家路を歩いていると、急にアキラに呼び止められたのだ。


「ああ。あいつはこの戦いに関係ない人まで巻き込みかねないしな」


それにユカリが脱獄したと、世間では大分騒がれていた。


噂では隣町や県外でも発見されたという。


「ゲートでジュエルワールドを経由していけば簡単に長距離を移動できるものね」


ゲートは時々遠く離れた場所まで繋がっている時もあるため、それを使えばありとあらゆる所へ行く事が出来る。


「だから、被害が拡がる前に奴を倒したい」


アキラの申し出をテルは承諾した。


「まぁ、ジュエラーが減るのに越したことはないわね」


「ああ、だからキラにも協力して貰いたいんだが」


「あの子は、やらないと思うわよ」



テルの意外な発言にアキラは驚いた。


「どうしてだ?確かに九留実ユカリを殺すことになるが・・・しかし、これはある意味人の命を守ることになるんだぞ」


「それも出来ない甘ちゃんよ。キラは」


テルは溜息をつきながら答える。



「しかし昨日は・・・」


「今日そのことでグチグチうざったく落ち込んでたわよ」


テルはイライラしながら地面を足でグリグリえぐる。

アキラはそれを見て噴き出した。



「お前、キラのこととなると本当に楽しそうだな」


テルは思いっ切り不快な表情になる。







「じゃあまたねー!」


クラスメイト達が手を振ってトモヒコに別れを告げる。

トモヒコも手を振って応え、姿が見えなくなるまで見送った。

トモヒコは手を降ろすと呆然とした。


「ジュエラー、どうしよう・・・・・」


クラスメイトへの復讐のためにジュエラーになったものの、その必要が無くなってしまった。

どうしようかと考えていると、目の前にケセランが現れた。


「あ、ケセラン。あのさ、ちょっとジュエラーを辞めたくなったんだけど・・・」


「駄目だぁ」


トモヒコの要求を、ケセランは即座に否定した。


「な、なんでだよ」


「つまんねぇからに決まってんだろぉ。言わせんなよぉ」


ケセランの自分勝手な物言いにトモヒコは腹が立った。


「お前、そんな自分勝手なこと言うなよ!」


「お前こそ、自分勝手な理由でジュエラーになったくせによぉ」


ケセランの言葉に、トモヒコは何も言い返せなかった。

ケセランは更に続ける。



「別に戦いたくないならそれでいいぜぇ。もっとも・・・そいつは黙ってねぇだろうがなぁ」


ケセランにニヤニヤほくそ笑みながらトモヒコの背後を見詰める。

そこには、トモヒコを威嚇するラビットアクアマリンがゲートを隔てて唸り声をあげていた。


「ヒッ!」


トモヒコは恐怖で地面に転ぶ。


「諦めなぁ、お前はもう逃げらんねぇ・・・ジュエラーになった瞬間からなぁ」








「で、まだ悩んでたのかい?」


パサランは落ち込むキラに声を掛けた。

キラは小さく頷いた。


「私、どうしよう?」


「僕に相談しても、何も解決しないと思うよ」


パサランがそう告げると、キラは力無くうなだれた。


「じゃあ、何で私の所に来たの」


キラが顔を上げて尋ねると、パサランは答えづらそうな顔になる。

暫く黙っていたが、やがて口を開いた。


「そう、だね・・・・・まぁ、君は面白いからかな」


パサランの言葉にキラは尚更機嫌を悪くする。


「何で皆、私のこと面白いとか言うのかな」


「それだけ、君は君が思ってる以上に周りへの影響が強いってことだよ」


パサランは意味ありげに言うとどこかへ飛んで行き、キラはそれを黙って見送った。







「おいおいトモヒコ、お前固くなりすぎだぞ?」


「変な顔ー」


「笑うなよー」


トモヒコはクラスメイト達と笑いながら道を歩いていく。

今日はクラスの全員が集まるお楽しみ会がある。

トモヒコ達はその準備のために集まっていた。


(何か復讐なんか考えてたのが馬鹿みたいだな)


トモヒコはジュエラーとして戦っていたことを無駄と思い始めていた。

こんな簡単に解決することを、わざわざジュエラーになってまで成し遂げようなどとしていたとは。


その時、



「ウウウウウウ!」


ゲートからイタチのモンスターが現れた。

それを見たクラスメイト達が泣き叫びながら後ずさる。


「きゃああああ!」

「うわあああああ!」

「ヒイイイ!」


皆が後ずさる中、トモヒコは前に出てケースを突き出した。

バックルにケースを差し込む。


「変身!」


トモヒコはアクアマリンに変身し、モンスターに体当たりしてゲートの中に入って行った。

クラスメイト達は呆然とその場に立ち尽くした。







《ガトリングキラー》


連射砲台が召喚され、イタチのモンスターを狙撃する。

ガトリング砲を喰らって動きが止まったモンスターを、トモヒコはコンパスで殴り付ける。


「そうだ、俺は・・・」


トモヒコの脳裏にクラスの皆の笑顔が浮かび上がる。

今まで憎くて仕方なかった存在が、今では守りたくなっている。


「あいつの様に・・・ダイヤモンドの様に、人を、皆を守るんだ!」


トモヒコはコンパスを大きく振り、モンスターを叩き飛ばす。

そして、カードをコンパスに差し込む。


《ファイナルキラー》


ラビットアクアマリンがトモヒコの背後に現れ、トモヒコを泡で包む。

そして、激流と共にトモヒコを打ち出す。


激流はカーブや円を描きながら不規則に進み、モンスターに直撃した。

激流と一緒に叩き込まれたトモヒコの両足が、モンスターを吹き飛ばして爆散させた。


「やった・・・」


トモヒコは無事にモンスターを倒したことに安堵し、ラビットアクアマリンがモンスターの魂を食べるのを見守る。






「見ーつけたー」


トモヒコの背後から何者かの声と足音が聞こえた。

そこには、嬉々とした表情のユカリ・・・サファイアが歩み寄って来ていた。








「あれ?トモヒコ君、まだ来てないの?」


先生は買い物袋を提げて扉を開けて入って来る。

そこにはトモヒコ以外の全員が集まっていた。

何人かは先生と同じく不思議そうな顔をしていたが、先程トモヒコと一緒にいた子供達は沈んだ顔をしていた。


が、その内の一人が明るく言った。


「トモヒコは、遅れてやって来るよ!」


それに続けて、他の子供達も先生に話す。


「うん、ちょっと遅れてるだけ」

「すぐ来るよ。きっと」

「絶対来るから!」


先生は良く分からずに子供達を見た。

クラスメイト達は、きっとトモヒコは帰って来ると信じた。









「グアァ!」


ユカリに顔を殴られ、トモヒコは地面を転がる。

起き上がり様を蹴り飛ばし、トモヒコは地面に倒れた。


「ッアハハハァ」


ユカリはニヤニヤ笑いながらカードを魔導書に差し込む。


《スラッシュキラー》


ユカリは斧を振り下ろし、トモヒコはギリギリで回避する。

すぐさま斧を横に振るい、トモヒコの腹に斧が直撃する。


「ガッ・・・!」


装甲を越えて衝撃が伝わりトモヒコの動きが止まる。

続けて斧の腹でトモヒコの頭を地面に叩き付ける。

トモヒコの髪を掴み上げると、斧を放り捨てて顎を拳でぶん殴った。


トモヒコは地面を転がって倒れ伏す。

顎を殴られた衝撃で、立ち上がることも言葉を発することも出来ない。


トモヒコはゲートを探す。何としても逃げなければならない。


そして、トモヒコはゲートを見つけて潜ろうとはいずる。



しかしトモヒコは、そのゲートが自分とユカリの間にあるとは気づいていなかった。


「っ・・・アアア」


首をポキポキ鳴らし、深く息を吐くとユカリはカードを差し込んだ。


《ファイナルキラー》


イーヴィルサファイアがユカリの背後に現れ、ユカリは後方へ高くジャンプする。

深青のエネルギーに乗せてユカリのキックが発射される。


トモヒコが正面から迫り来るユカリに気づいたのは漸く立ち上がれた後だった。


「アアアアアア!」


ユカリの連続蹴りがトモヒコの腹に何度も命中し、トモヒコの・・・・・アクアマリンのデッキケースが砕け散った。


「・・・み、な・・・・・」


トモヒコは力無く倒れ、やがてその体もアクアマリンとなって砕けた。



「・・・ああぁぁぁ」


頬を赤く染め、ゾクゾクしながらユカリは快感に酔いしれた。

同じ殺し方でも、やはり感触は全然違う。だからやめられない。


「ジュエラーって、良いねぇ」


まだ新しい快感に酔いしれながら、ユカリは上機嫌でその場を去った。



後には水色の宝石のかけらのみが残り、それは風に飛ばされて塵となる。

やがて、すべての破片が消え去った。


トモヒコの痕跡は、もうどこにもない。

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