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13話:解かれる糸

「お前エエエエエエエェェェ!」


キラはユカリに向かって突っ込む。さっきまで動けなかったのが嘘のように体が軽い。


ユカリは向かって来るキラに斧を振り下ろす。


キラは盾と剣で斧を受け止める。互いの武器がせめぎ合い、火花がバチバチと弾ける。


キラは腕を振るって斧を受け流し、ユカリに剣を突き出す。


ユカリは横に飛んで剣を避け、真横に斧を振る。



キラは宙返りで避けながらユカリを斬り、蹴りでユカリの手から斧を落とす。


ユカリは素早くキラに殴り掛かり、その拳がキラの顔面に叩き込まれる。


が、キラは少しも動じずにカードをセットする。


《バーストキラー》


キラの周囲に七つのダイヤが浮かび上がり、ユカリを弾き飛ばす。


ユカリは空中で体勢を整えて着地するが、その足元にダイヤが降り注ぐ。



《オフェンスキラー》


キラの右手にドラゴンヘッドが装着され、ユカリに向けて突き出す。


ドラゴンヘッドの口から巨大なダイヤが発射され、ユカリに向かって進んでいく。


ユカリはジャンプでダイヤを回避する。



その目の前に、


「うおおおおおお!」


キラがユカリの目の前まで跳び上がり、ユカリの頭をドラゴンヘッドで叩き付けた。


ユカリは地面に物凄い速さで叩き付けられ、地面を転がった。



「アハハハハハハハハハ!」


ユカリは狂喜しながら跳び起きる。


「キミ、すっごいねー。名前は?」


「あああああ!」


キラはユカリの問いを無視してユカリに突っ込む。



その時、イーヴィルサファイアがキラを殴り飛ばした。


すると、空間を裂いてダイヤドラゴンが現れてキラが地面に衝突しないように体で受け止める。


螺旋を描くようにキラの周囲を囲んで、咆哮で威嚇する。


「ギャオオオオオ!」


「グゥウオオオオ!」


イーヴィルサファイアも声をあげ、ダイヤドラゴンと対峙する。




その時、キラ達の体が蒸発し始めた。


「まずい、時間切れだ!」


アキラが告げると、フウヤは真っ先にゲートを探しに駆け出した。


それを見てトモヒコも走り去って行く。



「んー?」


ユカリは何事か分からなかったが、自分の背後にゲートが現れたのでとりあえず入って行った。


「ま・・・」


キラはユカリを追いかけようとしたが、ダイヤドラゴンが体を噛んでどこかへ連れていく。


「っ放して!」


キラはダイヤドラゴンをバンバン叩くが全く効かず、ゲートの中へ連れ込まれた。






「・・・・・」


俯いて座り込んだキラを、テルが見つけた。


キラは体を震わせて拳を握り、地面に叩き付けた。


「何で、どうしてあの子はあんなこと出来るの!」


キラはテルに怒鳴り付けた。

テルはキラの怒った表情に驚いたものの、冷ややかに告げた。



「貴女も、同じじゃない」


「!?私は、ちが」


「あのままなら貴女は九留実ユカリを殺していた」


テルに突き付けられた事実にキラは言葉を失う。

頭を押さえて、さっきの自分を思い返す。


「私、は」


「貴女だって結局は自分の願いのために戦っている・・・・・私達と変わらない、一人のジュエラーに過ぎないのよ」


そう言って去るテルの姿を、キラは黙って見送るしかなかった。







翌日、フウヤは絵の道具を回収するためにあの河川敷を訪れた。


「・・・・・」


「あ、やっと来たー」


そこでは、ユカリが無茶苦茶に塗り潰した悲惨な絵の姿があった。


フウヤは呆れながらユカリに尋ねた。



「何の用だ?」


「貴方の名前、教えて欲しいなー」


ユカリが筆を折るフリをしながら尋ねたので、フウヤは仕方なく答えた。


「五階堂フウヤ」


「そっか、フウヤ君かぁ」


フウヤはユカリの発言にイラッとした。



「言っておくが、俺はお前より六つ年上だ」


「年齢なんて、殺すのに関係ないよ?」


フウヤはあまりの価値観の違いにまともな会話を諦めた。


「最後に、あの子の名前も教えて?」


「あの子?」


「あの龍の子。とっても面白い」


キラのことか、とフウヤは察した。



「ダイヤモンドだ」

「ダイヤモンド?」


ユカリは指を頬に当てて首を傾げた。


「あいつのジュエラーとしての名前だ・・・・・言っとくが、殺人鬼に他人の本名明かしたりはしないからな」


「ダイヤちゃんかー。そんだけ聞けたら充分だよ」


フウヤはユカリに尋ねた。


「・・・どうして、名前なんて聞いたんだ」


「フウヤ君と話すのは面白いし、ダイヤちゃんと戦うのは楽しかったから」


ユカリは筆を落とすと楽しそうにクルクル回る。



「あいつは、もうあんなふうに戦わないぞ」


フウヤが言うと、ユカリは動きを止めて不思議そうな顔をした。


「あいつは数日すりゃ頭も冷えるだろうからな」


フウヤが言い終えると、ユカリはクスッと笑う。


「それでいいよ。お楽しみは貴重なものだから」






トモヒコは学校の教室に入る。クラスの視線を無視し、自分の席の前に立つ。机は雑巾で拭いたように水が薄く広がり、中は教科書やノートの順番もぐちゃぐちゃになっていた。


慣れたものだ。特に理由は無かったが、いつの間にか嫌がらせの対象になっていた。


(覚えてろよ・・・・・僕が最後の一人になったら、お前ら全員に復讐してやる・・・そうだ、俺様の天下だ!)


「何つっ立ってんだよ」


クラスメイトの一人がトモヒコの背中を押し、トモヒコは机を巻き込んで倒れる。


クラスメイトはやり過ぎたかと思ったが、何を言えばいいか分からずにしどろもどろになる。


そこへ、担任の先生が教室の扉を開けて入って来た。


先生はすぐにトモヒコに駆け寄る。



「トモヒコ君、大丈夫?」


トモヒコは「はい」とそっけなく答える。


(待ってろよ・・・・・俺様が復讐してやる!)


トモヒコは一人、復讐を誓った。







「・・・・・」


「いきなり引っ張り出したと思ったらだんまりなんて、失礼ね貴女」


テルは隣で俯いているキラをうっとうしげに見ながら文句を言う。


無理矢理引っ張られて、前に来たおでん屋に連れて来られたのだ。


前はカウンターで食べたが、今回は店主から離れた席にいる。



キラはテルを上目遣いで遠慮気味に尋ねた。


「昨日の私って、どうだった?」


「何?」


テルはキラに質問の意図を尋ねた。


「その・・・変じゃなかった?」


昨日、怒りに任せて戦ったことが相当ショックだったようだ。


テルは軽く呆れた。



「貴女だって人間なんだから、怒りもするでしょ」


「そうだけど」


「そんなことで落ち込むくらいなら、もうやめなさいよ」


テルの言葉はいつもキラの胸を突き刺してくる。

ただ、それは真っ直ぐで素直な言葉だ。


「私、やっぱり甘かったのかな」


「・・・ジュエラーを誰ひとり殺させないなんて、無理があったのよ」


テルはキラの理想を切り捨てる。


「それでも、私は諦めたくないよ」


テルは何も返さず、キラもそれ以降話すことは無かった。








「んー」


ユカリは自分の服装を改めて見直した。


スカートはいいとして、同色の制服はボロボロになっていた。


紺色なので汚れはある程度ごまかせたが、流石に限度があった。


これから寒くなるので出来れば肌の露出は避けたかった。


そこでユカリは、小さな店を見付けた。


ニッと笑うと、ユカリは店の中へ入って行った。




店員のお婆さんは誰かが入って来たのに気付き、レジへと出向いた。


「はいはい、いらっしゃいませー」


そんな店員の頭に、


「て〜いっ♪」


サファイアの斧が振り下ろされた。




誰もいなくなった店内で、ユカリは変身を解いて物色を始めた。


小銭や小物を手に入れると一旦レジに置き、新しい服へ着替える。


「おー」


ユカリはスカートをフリフリさせながら自分の着ている服を鑑賞する。


それは自分が通っていた中学のもので、深い紺色のセーラー服だ。


ユカリはポケットに荷物を突っ込むと店を出た。




「ん?」


ユカリは自販機を見付けた。同時に喉が渇いてきた。


「むー」


ジュースを買おうと思ったが、お金が勿体ない気がしたので


「えい」


鉄パイプで何度も何度も何度も自販機に叩きつける。


ユカリは壊れた自販機から缶ジュースを取り出すと、ゲートを探し始めた。


そしてゲートを見つけると、その中へと飛び込んで行った。






チャイムが鳴り、ホームルームが終わった。


トモヒコはランドセルに教科書を積めて帰ろうとする。


「あの、トモヒコ君」


その時担任の先生がトモヒコに話し掛けた。


「何ですか?」


トモヒコは先生に用件を尋ねた。



「ちょっと来て欲しい所があるの。来てくれるかしら」


トモヒコは出来るなら学校からさっさと帰りたかったが、ここで無下に断るのも悪いので承諾した。


先生に付いて行き、廊下を歩いてゆく。


暫く歩いた後、先生はある部屋の前で立ち止まった。


そこは生徒指導室だった。


トモヒコは自分がどうして此処に連れて来られたか分からなかったが、促されるままに扉を開けた。


そこには・・・



「皆、トモヒコ君が来たわよ!」


「ゴメン!」

「ゴメン!」

「ゴメン!」

「ゴメン!」


先生が呼び掛けると同時に一斉にトモヒコに頭を下げて謝罪する同級生達がいた。


「・・・え?」


トモヒコは、状況が掴めずに呆然とした。

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