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1話:スタートライン

日本の、静かな夜。


一人の女性が仕事を終えて家路についていた。

女性の足音のみが周囲に響き、コツン、コツンと規則正しく音がなる。


静かで、何一つ騒音が無い夜だった。



ある時、女性は何者かの視線を感じて立ち止まり、振り返った。

しかし、どこにも誰もいない。


気のせいかと思い、歩き出す。


しかし、やはり何者かの視線を感じる。


再び振り返る。


だが、誰もいない。



不審に思いながらも、女性は家へと帰ろうとする。


その時、女性の肩を何かが掴んだ。


女性がそれを認知する前に、その体はどこかへ引き込まれてしまった。


後には宝石などの鉱石で出来た穴が残った。キラキラと輝くその穴は暫くすると消えてしまい、後には何もなくなった。



何もなくなった場所に、虚しく風が吹き荒れた。






時刻は5時を過ぎ、下校を始める生徒が現れ始めた。


ここ花山第三中学校は首都東京から離れた瀬戸内海に接した田舎町にあるごく普通の公立学校である。


田舎といっても、首都とレベルが違うだけで電車もコンビニもテーマパークもある立派で活気の溢れる町だ。



一人の中学生が学校の門を歩いて通り過ぎ、家路につく。


少女の名前は倉四季(くらしき)キラ。

白い髪の先は薄く赤い髪がグラデーションで彩り、短い髪が揺れて首を擽る。どこにでもいる普通の女の子で、今日も授業が終わって少し勉強をして帰る所だ。



母は専業主婦で父親は役所に勤める公務員。

兄も妹もいない一人っ子で、至って普通の家庭で育ってきた。時々普通過ぎて地味かな、と思いはしても現状には何も不満はなかった。



商店街は夕飯の材料を買いに来た主婦や散歩をする高齢者で賑わっていた。


商店街というものがいつまで残ることになるのか分からないが、キラはこのいつもの風景が好きだった。


「キラちゃん、この飴どうぞ!」


饅頭屋のおばちゃんがキラに飴を差し出す。

キラは両手でその飴を受け取り、お礼を言う。



「おばさん、ありがとう」


キラは歩きながら飴の袋を開け、口に放り込む。

苺味の甘味が口中に染み込む。


「甘いなぁ」


甘いものは嫌いではないので思わず顔がにやけてしまう。





飴を食べ終え、キラはてくてくと歩いていく。

その最中、ふと商店街で見たテレビのニュースを思い出した。


最近頻発している失踪事件がまた起こったのだと言う。


噂ではテレビで挙げられている量の二倍以上の被害が出ているとか。



怖いなぁ、と思いながら歩いていると、突然前方から悲鳴が聞こえた。


目線を足元から前方に移すと、視界にスーツケースがボトンと落ちたのが入った。


そのすぐ横に宝石で出来た穴があった。


陽の光ではなく、自身で発光しているようだ。

綺麗と言えばそうだが、どこか妖しい空気を漂わせていた。



「・・・逃げた方が良いよね」


キラは身の危険を感じ、その場から逃げようとした。


しかし、あのスーツケースの持ち主の安否が気になった。

もしかしたら自分が行けば助かるかもしれない。


そう思い、キラはスーツケースの元まで走って来た。


そして、宝石で彩られた穴を見る。

よくみると周りの縁に宝石や鉱石が生えているだけで、中心はグラグラと揺れている怪しげな空間になっている。


しかし、その先にある景色は何の変哲もないものだった。


よくみると穴に隔てられた向こう側の景色だ。



キラは少し躊躇ったが、意を決して穴に飛び込んだ。


何とも言えぬ感触が全身を包み込む。

そして、まばゆい光がキラの視界を塞ぐ。





キラは気が付くと穴をくぐり抜けていた。


辺りを見渡すと、そこは穴をくぐる前と大して変わらない場所だった。


そして、穴は消えて無くなってしまった。



「人はいないのかな・・・」


キラはいなくなった人物はいないか探しはじめる。


そこで、初めてこの場の奇妙な点に気付いた。



遠くにあるビルや建物から巨大な宝石が生えていた。


そして、近くの川や足元の芝生からもまちまちなサイズの宝石が生えてくる。




キラは気味が悪くなり、スーツケースの持ち主はいないか探し出す。


そして、倒れている男を見つけると、傍に駆け寄って助け起こす。


「大丈夫ですか?」


「ううう・・・」



男は苦しそうに呻いている。

ここに来たショックで気を失ったのだろうか。


その時、キラの目の前に何者かが現れた。


それは、蜘蛛の姿をした人型の怪物だった。


「なっ!?」


キラは急いで男を掲げ、引っ張って逃げようとする。


次の瞬間、キラは顔を殴られて横に吹っ飛んだ。


見ると、新たなモンスターが立っていた。

先程と同じ蜘蛛の怪物だった。


ただ、さっきの蜘蛛は緑色だったのに対し、こいつは赤い体だった。


二匹のモンスターは倒れた男にかぶりついた。




「っっっっ!?っぁゃっ!!?!」


男は声にならない悲鳴をあげ、悶え苦しむ。


そんなことはお構いなしにモンスターは食事を進める。


肉のちぎれる音。

それを噛みちぎる音。

飲み込んで喉を通る音。


ムシャムシャと音を立て、二匹のモンスターは食事を続ける。


その場からドロドロと血が流れ出し、男の声も途絶えた。


キラはただ呆然とその景色を眺めていた。



食事を終えた蜘蛛のモンスターは次なる矛先をキラに向ける。


キラは逃げようとするも、足が震えて動けない。

ただ食われるその瞬間を待つ。



その瞬間、二匹のモンスターが吹き飛んだ。


キラは思わず腕で頭を庇う。

やがて煙が晴れ、キラは恐る恐る目を開けた。



そこには一人の少女がいた。

長い藍色の髪を靡かせ、揺らがぬ眼差しでモンスターを見続ける。


右手には細身の剣を持ち、紫色の宝石で出来た鎧を纏っていた。

アメジストで出来たその鎧は鋭い輝きを持ち、近寄り難い雰囲気をより一層強めていた。


少女は横目でキラの姿をチラッと見ると、すぐにモンスターに視線を戻す。



「・・・まだ生きてたの」


「大丈夫か?」


少女の冷たい声と違い、暖かい宥める様な声が背後から聞こえてきた。


振り返ると、そこには一人の女性がいた。



赤いショートカットに赤い鎧。

少女を紫と例えるなら、女性はまさに赤だった。


その両手には赤い宝石がついたナックルが装備されており、少女の剣に当たる武器がこのナックルなのだろう。



「あの、貴女達は・・・」


「彼女達はジュエラー」


キラが女性にこの状況は何なのか尋ねようとした瞬間、何者かが答えた。


キラが声のした方向を向くと、そこには二つの光る小さな球体がいた。


黒と白の二つの球体には顔のパーツがついていた。

白い球体は無表情で、あまり興味なさげな顔をしており、黒い球体はニヤニヤとこちらを挑発するような顔をしていた。


そして、二つの球体はキラに話し掛けた。



「・・・もし、君が望むなら、」


「ジュエラーにならねぇか?叶いたい願いがあるならなぁ?」


黒い球体はニタニタ笑いながらキラに持ち掛けた。




キラはこの不可思議な状況に戸惑い、何も言えなかった。

いよいよミラクル☆ダイヤモンドが始まりました。

精一杯頑張ります。



倉四季キラ CV.植田佳奈

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