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怒りの演説

とある留学生の話

作者: むぎしゅ
掲載日:2026/03/08

国王陛下不在中。BLではない。

 何というふざけた事を!!


 ……失礼しました。

 つい驚いて声を上げてしまいました。

 

 いや、まさか、栄えある王国でこんな事が。

 国にいい土産話を持って帰れますよ。


 お前は誰だ?

 私はレオニード様の友人で、隣国から一年前に留学に来たオーツ男爵ボールドウィンと申します。


 そうだ。

 せっかくですし、サマンサ第三王女殿下が言い分があれば申してみよと仰ったので、是非私がその通りにさせていただきとうございます。それはレオニード様に言った?たんに裁判で証人が出廷するのと同様の事ですよ。




 まず確認させていただきます。

 殿下とダニエル・モンロー子爵令息の間には


 真実の愛


 があり、それに嫉妬した私の友人レオニード・ウィーデン・クロウ伯爵令息が彼を虐げたと。

 そんな奴は王女の未来の夫に相応しくない、だからレオニード様有責で婚約破棄を宣言した。

 そのような主張でよろしいでしょうか?


 ところで真実の愛とは聞き慣れませんね。この国の新しい法律ですか。違う?

 つまり愛の無い政略ではなく互いの気持ちに従い、尊き愛により結ばれる事。それは誰にも邪魔されるべきではない。

 サマンサ殿下は堅物で可愛げのない上に嫉妬深いレオニード様より、美しく可愛げのあるモンロー子爵令息が大事だと。

 

 成る程。

 サマンサ殿下の仰る事はよくわかりました。殿下は王女としての責任を放棄し、自分の欲望に従って動くという事を宣言されたのですね。


 理屈としては合っておりますよ。

 つまり、サマンサ殿下は、献身的に尽くしてきた優秀で誠実なレオニード様を貶め、長年国のために働いてきたクロウ伯爵家を蔑ろにし、法律を無視し、国王陛下の命を無視してまで、特に利点も無いモンロー子爵令息と欲望のままにくっつこうとしている。

 まさに自身の御心のままに動かれているではありませんか。




 不敬?

 私もサマンサ殿下にならい、自身の心に忠実に話しているだけです。


 私とレオニード様の間には


 真実の友情


 が存在しているのですから。


 互いの気持ちに従い、尊き友情により結束している者たちは誰にも邪魔されるべきではありません。つまり不敬罪よりも真実の友情による言動は勝るのです。

 レオニード様、何で笑っているんですか。こっちは真剣なんですよ。これがうまく終わったらくるみのケーキ奢ってもらいますからね。

 約束ですよ。




 話を戻して、レオニード様が嫉妬によりモンロー子爵令息を虐げた件ですが、何か証拠はおありですか?


 ふむふむ。一番酷かったのはレオニード様に「サマンサ殿下に近づくな」と言われて階段から突き落とされた事。左足首を捻挫し、腫れ上がって痛みで歩けないほどだったが、偶然通りがかったサマンサ殿下に助けられた。


 それは大変でしたね。目撃者は?

 いないのですか。


 仕方ありません。保健医のアッシャー先生はいらっしゃいますか?

 モンロー子爵令息がこのように言っていますが、彼が保健室に来た日時はわかりますか?記録があるならお貸し願います。

 わざわざありがとうございます。

 成る程。確かにこの日時、先生はサマンサ殿下に連れられて来た彼を治療したと。怪我に関してはかすり傷とありますが、一応怪我をしたのは事実のようですね。


 ただ、この時間は……まだレオニード様は教室にいたはずですよ。


 私の言葉が信用できないと。

 ようは不在証明です。何故なら、レオニード様は王立学園の成績上位者しか入れない優秀者クラスに所属しているからです。

 優秀者クラスは普通クラスと比べより深い学びを提供する目的で設置されています。この時間は確かに普通クラスは授業が終わっていますが、優秀者クラスはまだ授業中です。

 となると、レオニード様は堂々と教師や他の生徒の目の前で授業を抜け出して、普通クラス近くの階段に行き突き飛ばした事になりますね。

 優秀者クラスの時間割は婚約者であるレオニード様が所属しているのでご存知ですよね?あぁ、サマンサ殿下は普通クラスだから知らなかったんですね。


 そもそも優秀者クラスでの授業の後、生徒会副会長として活動し、ご自身だけでなくサマンサ殿下の分の課題もやり、さて一体どこにレオニード様がわざわざ他人を虐げる時間があるのでしょうか。

 彼の目の下の隈は婚約をしてからの三年分の苦労の結晶とも言えるでしょう。




 それ以外にも悪行はある?

 そうだ。モンロー子爵令息。あなたがまた口を開く前にご忠告をと思いまして。

 あなたが大勢の前でレオニード様の名前を出した瞬間、この話は個人間ではなくクロウ家とモンロー家の問題に変化しています。勘違いでは済まされません。

 サマンサ殿下は確かに王女ですが、家同士の事に王家は簡単に口を出す事はできません。


 そうそう、こういう場合取り巻きが代わりに突き落とした、なんて仰る方もいますが、名前を出した瞬間に次はその取り巻きとされた方の家を敵に回す事になります。

 くれぐれも発言にはお気をつけください。

 確かモンロー子爵家はあまり裕福でも、政治的に強い家でもありませんよね。サマンサ殿下の存在以外に勝算があるといいのですが。

 それでは続きをどうぞ。



 

 固まってしまいましたね。




 たかが隣国の男爵家の息子風情が可愛いダニエルを傷つけるな、ですか。

 そう言えばモンロー子爵令息は随分と質の良い礼服や宝飾品を身に着けてらっしゃいますね。特に宝飾品は全て青、サマンサ殿下の目の色と同じですね。しかも今流行のデザインだ。ずいぶん値が張ったのでは?


 でもモンロー子爵家は投資で失敗したために借金があり余裕はないと聞いていましたが。


 殿下の金で買い与えたから問題ないと。

 はて、サマンサ殿下は領地経営等をされていたのでしたか?

 公費、ではなく私の、と仰るくらいですからもしかしてと思っただけですよ。

 まさか、婚約者との交友費をモンロー子爵令息に使ったなどと仰るわけではありませんよね?もしそうなら横領になってしまいますからね。犯罪ですよ。

 それとも真実の愛ならば法を超えるので横領も無効になるのでしょうか。

 知らなかった?国王の娘であるあなたが国の法を知らないとは……税金は無限に湧くお小遣いじゃないんですからね。




 うるさいからつまみ出せ?

 あぁ!私に触らない方がいいですよ。

 これでもグウィン公爵家の一員でして。


 私の名前はボールドウィン・サイモン・グウィン、祖父はグウィン公爵、父はベケット伯爵でこの国との外交責任者、そしてその長男である私はオーツ男爵です。

 騙してはいません。公爵家の名を出すと色々と面倒なので、オーツを名乗っていただけです。国王陛下にも学園長にも許可はいただいています。従属爵位って便利ですね。

 どうやら何らかの理由でサマンサ殿下には私の情報が伝わっていなかったようですね。

 外交責任者の息子を拘束するつもりですか?家同士どころか国と国との問題になりますが?



 

 さて皆さん。

 何を他人事のように見ているのですか?


 あなたたちが

 拍手を送り祝福し一人の人間を貶めた


 真実の愛

 

 がどういうものか。


 綺麗な言葉を並べた所でその中身は


 王命の無視。

 国益の無視。

 法の無視。


 何より

 不確かな噂に群がり

 一人の人間をよって集って叩く醜悪さ。


 よくもまぁ、事実をご自身で確認もせず、ご自身の行為の意味を考えもせずに、残酷な行為ができるものです。


 知らなかった?

 知ろうともしなかったくせに?


 幼子ではないのですから、何の影響があるか考えずにきゃっきゃと手を叩いたり、不用意にペラペラ言葉を発するべきではありませんよ。

 



 ああ、でもこれらは全て


 真実の友情


 によるものですので。

 皆様もどうか寛大な心で今日の私のご無礼はお許しください。




 皆様のおかげでこの国の事をたくさん知る事ができ、とても充実した留学になりました。

 それでは失礼いたします。

 色々と祖父や父に報告もありますし。


 あ、レオニード様、くるみのケーキの件は忘れないでくださいね。ここを去る前に挨拶に行きますから。

 絶対ですよ!

後日真実の友人によりケーキは奢られた模様。

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― 新着の感想 ―
頭の悪そうな王女だから、賢い、けれどあまり爵位の高くない婚約者を付けて、王女が社交や外交で大きな問題を起こさないよう取り計らったつもりやったんやろな、国王陛下。 完全に裏目に出て、ハニトラに引っ掛かっ…
「男爵令息」じゃなくて「男爵」 勘のいい人なら気づく舐めてかかると危ない人物ですね。 ボールドウィン君はなかなかに腹黒そうとか思ってしまいましたが、高位貴族ゆえ多少腹黒いのは致し方なしか。
これは短編ではなく、連載として読みたいっす!
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