第六話 天音の見る景色
「綾音、一条知ってるでしょ?」
「え、うん。でも、一条って顔、咲の好みの感じじゃなくない?」
一瞬きょとんとした綾音がそう聞き返す。
「いや、違うから。私のことなんだと思ってるの。なんか部活来てないって聞いて」
「あぁ〜、そうそう。そうなの。それ私も気になってた。まじ、めっちゃ上手いんだけどね。どしたんだろ。そういえば、なんかちょっと、和真と揉めてるのは見たかも。二人が揉めてるの珍しいから驚いたな。あんま何があったかよく知らないけど。男子バスケいいメンバー揃ってたし残念」
「そっか。女子もさ。三年は引退した?」
「うん、そう。新人戦に向けて新キャプテンのもと練習中でっす。応援来てね」
「うん、行く」
「あれ、珍しい」
「だって、今まではあんまり綾音出てなかったし、他に仲良い人もいなかったから。でも、もう綾音出るでしょ?」
「スタメンでやるつもりバンバンですよ。副キャプテンだし、うん」
「しっかりしてよ? 副キャプテン」
「任せてよ!」
ニッと綾音は笑った。綾音の明るさは天音にも負けないと私は思う。
「友奈も見にきてね」
眠たそうに机にもたれていた友奈の頬を綾音がつねる。
「痛い痛い。行くよ。一緒に応援するから」
「よし、やる気でた。部活行ってくる」
「いってらっしゃい。私も部活行ってくる。今日一緒に帰るよね?」
綾音を見送ってから、友奈に話しかける。
「うん。てか、ほんと眠い。最近咲も部活熱心だよね?」
「いや、別に熱心って程じゃ。暇つぶしに良いだけ。じゃ」
「うい〜」
「あ、夏月さん」
後ろから声をかけられて、振り向くと天音が駆け寄ってきていた。
「どうしたの天音」
「ごめんだけど、今日僕行く場所ができて。今日は部活おやすみでもいい?」
「そっか」
「ごめんね……」
「良いよ。全然、てかそれぐらいLINEで言ってくれたら良かったのに」
「あー、確かにそうだったかも。でもほら一応校内だから夏月さん気づかないかもだし」
「確かに。わかった。一条と話できた?」
「ううん、まだなんだけど、多分それは大丈夫」
どういうことだろう。とも思ったけど聞くのも面倒くさかったのでやめた。天音が大丈夫というなら大丈夫なんだろう。
「……そっか。そういえば綾音から聞いたんだけど。一条、来なくなる前に瀬尾と揉めてたんだって」
「へぇ、そうなんだ。あの二人が、珍しいね」
「うん、綾音もそう言ってた」
「それも、聞いてみるね。ありがと」
「いや、当然のことでしょ。一応私も相談されたわけだし」
「ふふ、そうだね。そう思えるのは夏月さんの良いところだと思う」
そういう言い方をされると少し恥ずかしい。
「じゃあ、行くね。バイバイ」
天音は行ってしまった。さて、どうやって暇を潰そうか。
私は、なんとなく職員室に部室の鍵を取りに行って部室にやってきていた。
珍しい、というか、初めてだ。天音がいない時にここを開けるのは。
机と椅子は後ろに追いやっただけの普通の教室。いつもの席に座ってみる。
暇だ。
今度は天音がいつも座っている席に座ってみる。
「これが天音が見る景色」
いや、だからなんなんだ。別に座るところが変わったところで特に変わることはないし、天音になれるわけでもない。なりたいとも別に思わない。
後ろの机を見る。硬い表紙の小説や、ちょっと細長い社会問題とかの本、あとは普通の文庫本なんかも並んでいる。
一番読みやすそうな本を手に取った。
本を開くと、しおりが滑り落ちた。
慌てて拾う。手作りだろうか、小さな押し花が入っている。かわいい。
「誰かにもらったのかな」
しおりを元のページに戻して、私はそっと本を閉じた。
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