第十一話 赤い羽根
新生活が忙しすぎる上に楽しすぎてずっと投稿サボってました。すみません!割と忙しい大学生活を送ることになりそうですが、小説投稿頑張ります!
「と、いうわけで、私たちは今県内の大型ショッピングモールに来ていまーす! イェーイ! 夏休みー! ほら、みんな集まって」
「いぇーい」
綾音がハイテンションで動画を撮り始めた。インカメでみんなの顔が映るように精一杯腕を伸ばしている。友奈はしょうがない、という感じでノって、柚は可愛くポーズを決める。私もそれっぽくピースした。
「これ、何してるの。綾音」
満足気に綾音が動画を終了した。
「Vlogだよ。VideoのblogでVlogなの」
「へぇ〜、流行ってるの?」
「Vlog界隈ではね」
そう言ってドヤ顔をする綾音。
「綾音、界隈の意味分かってる?」
「いつメンみたいな感じでしょ?」
あながち間違ってもいないからツッコミにくい……。
「まぁ、あんまり流行ってるわけじゃないことは分かったよ」
「えぇ、でも、良いんだよ。楽しいでしょ? 思い出は残ったほうがいいから。さっ、行こう」
はじめは綾音の元気に呆れていたけど、夏を強調する看板や商品に次第に私たちの足取りも軽くなった。
「あっ、あれ! 美味しそう! クレープ買おうよ」
綾音が、指をさした先には新しくオープンしたらしいクレープ屋さんがあった。オープンセールと大きく打ち出している。
「いや、あとで良くない?」
「うんうん、それにこれから水着試着するのに、お腹膨れたら嫌だし」
「まぁ、それは大丈夫だと思うけど、昼ごはん食べるわけだしね〜」
「そっか、じゃあ、あとで寄ろうね」
綾音は食べ物には反応するけど、雑貨なんかにはあんまり興味がない。逆に私と友奈はそういうのが大好きだ。
「これ、可愛くない?」
「うん、ちょ〜似合う」
「ちょっと、二人とも? もういいでしょ? 昼前に水着買おうって言ったじゃん。早く行くよ!」
そんなこんなで全然目的の場所までつかない私たちを柚が引っ張っていってくれた。流石、計算高い女。目的達成が最優先だ。
30分ほどかかって、水着売り場に着いた。
「さて、どれにしよう」
気になるものを手にとっては戻す。柄、色、形、どれも一長一短で悩む。
「見てこれ! ほぼ紐!」
奥の方から走ってきた綾音が嬉しそうに、水着を見せてくる。
「誰が着るのそんなの」
「えぇ、咲スタイルいいし似合うと思うけど」
「あほか」
「あはは〜、あ、じゃあこれは?」
「競泳水着じゃん、どんだけ泳ぐつもりなの」
「えぇ〜、泳ぎやすいよ」
「別に、そんな泳がなくて良いから」
綾音が、えぇーと文句を言いながら戻しに行くのを見てから、また水着探しにもどる。
というか、綾音も買うつもりないんじゃないか。
うーん、花柄とか、こういうのは可愛すぎるかな。これは、柚とかが似合うタイプだ。
「あ、咲が持ってるそれ可愛い」
「柚とか友奈ならこういうの似合いそう。私は、あんまり柄じゃない気がするけど」
「えぇ〜、咲も着てみたら?」
「うん、似合うよ」
「いや、別に私は……」
結局、友奈と柚との悪ノリによって選ばれた水着と、いくつか良さげなのを持って私は試着室に向かった。
やっぱり、花柄のは可愛すぎるかも。いや、でも、着てみたら案外悪くない?
「ねぇねぇ咲。どんな感じ? 見してよー」
外から綾音が話しかけてきた。いつもなら勝手にそれぞれ試着してみたいな感じだから珍しい。
「こんな感……じ。え、え?!」
つい素っ頓狂な声が出た。目の前になぜか天音がいたのだ。さっと、カーテンをしめて体を隠す。顔だけ出して天音をにらむ。
「なんでいるの?」
天音は首から募金箱をぶらさげている。ボランティアだろうか。
「いや、なんか石橋さんに呼ばれて……。男子の意見が欲しいみたいな……もしかして何も聞いてなかった?」
「あーやーねー?」
「ごめんごめん。たまたま天使くん見つけて、思いついちゃって」
「はぁ、天音もなんでホイホイとついてくるかな」
「あはは、ごめんね」
天音が苦笑いして頬をかく。別に水着だし、いいんだけど。海やプールなら気にならないのに、ショッピングモール内で見られるのは恥ずかしい。露出が多いのじゃなくて良かった。
「まぁ、でも、ほら。せっかくだから男子の意見もらいなよ」
「ちょっと、石橋さん。なんか邪魔して悪いし、僕もう帰るよ。ごめんね、夏月さん」
む。それはそれで、私が恥ずかしがっているみたいでむかつく。いや、恥ずかしがってはいるんだけど。てか、さっきから綾音がにやにやとみてくるのがうざい。
「待って、別に水着だしいいよ」
一度、隠れてしまったばっかりに、もう一度開けるのは少し勇気が必要だった。
「はい。どう?」
どうって何?! 自分の口が信じられない。はっず。なんか自分の身体に自信があるみたいな、いや、なくはないけど。そもそもなんで天音に見せてるの。
頭の中がこんがらがって、プライドと羞恥で混乱している私に対して、天音の対応は落ち着いていた。
「うん。とっても似合ってると思うよ。花柄も、咲って名前にぴったりだね」
さらっと私の全身を見た天音は、私の目を見てニッコリと笑った。
そういえば、こういう人だった。
なんだか一気に気が抜けてしまった。プルタブを開けた炭酸飲料みたいに。
「そっか。でも、まぁ、私的にはこれはやっぱり違うかな」
それだけ言って私はカーテンを閉じた。
「天音はちょっと離れて待ってて」
「え?」
「いいから」
少しぐらい、照れてくれてもいいのに。
一旦、試着は中断して、もとの服に着替える。
外で待っていた天音と、アホ綾音を捕まえて、私は憂さ晴らしをすることにした。
「柚は絶対いい反応してくれるから」
「確かに」
「えぇ、それドッキリでしょ? 悪いよ」
「いいからいいから。大丈夫、大丈夫」
天音の背中を押して、柚の試着室の方へ向かわせる。
天音が渋るのを構わず背中を押していると、私たちの声に気づいてか柚が顔を出してきた。
「咲、綾音。って」
キャーっと柚の叫び声が響いた。咄嗟にしゃがみ込んだ柚が天音のことを睨む。
「なんで天使くんがいるの?! ヘンタイっ!」
顔を真っ赤にした柚が恨めし気に天音を罵った。
「ごめんごめん、違うんだよ」
目をつぶって両手を挙げた天音がいう。
柚が呆れた目で私を見てくる。というか柚に関しては勝手に出てきただけでしょ。
「はぁ、咲と綾音か。天使くん。この際だから、意見聞かせて? どう? 可愛い?」
目を開けた天音が柚の方を見る。
「うん、とても似合ってると思うよ。柚さんの感じにぴったりだね」
「可愛い?」
「うん。可愛いと思うよ」
柚の悩殺ポーズにも動じない天音。無駄だよ、柚。天音はこういう人なの分かってるでしょ。
あきらめた柚が溜息をついて私と綾音をジト目で見てきたので、私はぐっと親指を立てた。
柚はまた溜息をついた。
天音がサッと私たちから距離を取って向き直る。
「辻本さんも一緒? 夏だもんね。プールとか行くの?」
「プールも行きたいけど、先に海の予定」
「そっか、楽しんでね。それじゃあ、僕戻るから」
「あ、私、募金するよ」
綾音が天音を呼び止めて財布を取り出す。
「ありがと」
「私も」
財布から小銭を取り出して募金箱に入れる。お礼の羽をもらって、私たちは天音とお別れした。
帰りの電車、綾音と友奈が降りて車内は静かになった。扉にもたれかかりながらぼんやりと柚の横顔を眺める。
腕には今日の戦利品。紙袋が腕に食い込むが、それでも満足だ。
「そういえば、天使くんに見せた水着は買ったの?」
「見せたっていうか見られた奴ね? 買ってない」
天音は今回の海には来ないし。そもそも、あれは私が選んだとは言い難い。
「そっか。てか、私は咲のせいで見られたんだけどね」
「ごめんて、でも、ほらノリノリでポーズしてたじゃん。全然天音には効いてなかったみたいだけど」
「相手が悪いよ。私だけ照れてるのが嫌だったんだけど。まぁ、天使くんだしね~」
「ふーん」
ふと窓の方を見ると車窓に自分の顔が映った。崩れた前髪を手櫛で直す。疲労感はあるけど、良い日だった。
「天音。誘ったら海来ないかな」
「え」
「あ、いや。人が多い方が楽しいし」
「まぁ、天使くんは来ない気がするけど、他にも人呼ぶのはいいかもね」
「そうだね」
私は、ポケットに入れた赤い羽根を撫でた。
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