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放課後の天使くん  作者: 絲夜しづる
第四章 天使は夏休み

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第十話 夏休みのはじまり

 夏休み前、最後の登校日。

 持ち物検査から逃れるために置いておいた私物を回収しに、部室に来た。


「あ、やっほ〜」

 扉を開けるとすぐに、振り返った天音が私の顔を見つめて柔らかく笑った。

 天音は箒で床を掃いている。


「掃除中?」


「そう、ここも大掃除しとこうかなって。夏月さんはどうしたの?」


「私物取りに来た。私も手伝うよ」


「ほんと? ありがと」

 カバンを後ろの机の上に置いて箒を取ってくる。天音と反対側から真ん中に向かうように掃いていく。

 

 開け放たれた窓から、蝉の声が聞こえる。

 それにしても、暑い。掃除してるだけで、汗がにじんで、首筋を伝う。

 人が少ない分まだマシだけど。エアコンつけたいな。

 

「夏休みが始まるねぇ」

 手は動かしたまま、天音が呟いた。


「うん」

 心なしかみんなの顔も明るいし、気が早い人は早くも少し肌が黒くなっている。綾音とか。

 室内スポーツなのに……。


「今年はたくさん遊ぶ」


「うん、沢山遊ぶのはいいことだよ〜」


 他人事みたいにいう天音が面白くてちょっと吹き出してしまった。


「え、なんか僕、面白いこと言ったかな?」

 天音が箒を動かす手を止めて振り返る。


「ううん、なんでもない」

 夏休み、綾音とか、友奈とか、柚とかとは遊ぶだろうし、文化祭の準備もあるから、クラスでも遊ぶだろうけど。天音とはどうかな。


 瀬尾に教えてもらった天使くんファンクラブサイト。正直、一般人の天音に対してあまりいい趣味だとは思わないけど、天音について色々なことが載っていて、中には少し気になることもいくつかあった。

 例えば、『天使くんは遊びの誘いを受けない』とか。


 一通りゴミを集めて、あとは天音が帰る時にゴミ捨て場まで持って行くことになった。私も持っていくと言ったが、もう少し部室に残るから、今はいいそうだ。


 夏休みの間はもうここに来ることはないだろう。

 部室を見回すと、天音と目が合った。

 

「天音はさ、夏休みどうするの?」


「まぁ、色々ボランティアとか勉強とか」


「遊ばないの?」


「家族と旅行とかは行くかも」


「そっか。それは良いね」


「うん」

 天音は頷くと、そのまま本の整理を始めようとした。


「それだけ?」


「え」


「友達と遊びに行ったりは?」


「うーん、あんまり友達と遊びに行ったりはしないんだよね。クラスで何か打ち上げをするとかで人数が多い時は行くこともあるけど」


「そっか、それはやっぱり、天音がみんなの味方だから?」

 天音が取り上げた本を置いて、体ごとこっちに向き直った。

 天音の目が真っ直ぐに私の目を見つめる。


「そうだね、僕はみんなの味方だから、あんまり誰かと個人的に出かけたりはしないかな」

 天音はそう言って微笑んだ。


 ここで、寂しそうな顔をするならなぁ。文句の一つもいいようがあるのに。


「あのさ、一冊、本貸してよ。夏休みの間」


「本? うん、いいよ。ここにあるやつ?」

 意外だったのか、一瞬目を丸くした天音は一拍置いて状況を飲み込み、嬉しそうな顔をした。


「うん。でも、私あんまり本読まないから、できるだけ短くて読みやすいのがいい」


「短くて読みやすいのかぁ。うーん、あ、これとか?」

 そう言って、天音が一冊の文庫本を私に見せた。


「星の王子さま?」

 なんか子ども向けっぽい絵の表紙だった。


「結構不思議なお話で、おかしいでしょって、思うこともあるかもだけど、そこは気にせず。時間があったら、ぜひ読み通してみてほしいな」


「うん、わかった」

 天音からその本を受け取って、私は立ち上がった。


「じゃあ、バイバイ。また夏休み明けかな」


「そうかもね、何か困ったことがあったらいつでも連絡して」


「うん」


「あ、危ないこととかに巻き込まれないように気を付けてね。海とか川も溺れたりしないように」


「天音は私のお母さんなの? 大丈夫だって、わかってるよ」

 私が笑うと、釣られて天音も小さく笑った。


「またね」


「うん、また」

 そう言って、今度こそ私は部室を出た。



「あ、遅〜い」

 教室の扉を開けると、綾音が振り返ってそう言った。


 教室にはもう綾音たちしか残ってなかった。でも、エアコンついてる。涼し~。


「なんで柚がいるの」


「別にいてもいいでしょ?! というか毎回このやり取りいる?」


「あはは、相変わらず反応いいね」


「そういえば、男子たちカラオケ行くんだって、女子も茜とか美遊とかが追っていった」


「カラオケかぁ、先週行ったばっかだね」


「私は何度行っても良いけどなぁ」

 友奈がゆるい口調で言う。友奈は最近暑いからか覇気がない。


「私も!」

 綾音は相変わらず元気がいい。早くも少し日焼けで黒くなっている。夏休み明けの姿を想像すると恐ろしい。


 カラオケはいいけど、クラスの集まりなら柚は来づらいだろう。

 チラリと柚の方を見ると、目が合った。


「よし、カラオケ行こっか」


「ステイステイステイ、ちょっと待って? なんで私の顔見てその結論に至るの? そのカラオケ、私はいけないよね? 普通、私に気を遣って他のところ行かない?」


「いや、ほら、なんか、いいかなって」


「薄情過ぎる! まぁ、別にいいけど、私も友達いるし」


「いいじゃん、柚も一緒にカラオケ行こうよ」


「え、」


「うん、多分、他のクラスの人もちらほら参加するし大丈夫だよ」


「え、あ、そうかな? じゃあ」

 結局、柚もカラオケに行くことになった。この女、ちょろい。




「いつにも増して、柚のぶりっこがすごかった」

 カラオケ終わり四人で、新作フラペチーノを飲みながら話をする。


「え、そうかな?」


「マイクもらったとき、いちいち謙遜しなくていいし、歌い方も可愛い子ぶってさぁ」


「『あ、間違えちゃった〜』」


「似てる似てる」


「全然似てないよ! 知らない人も多かったから緊張してたのっ」


「ごめんごめん」

 友奈の柚のものまねのクオリティが意外と高くて綾音も私も笑いが止まらなかった。

 

 柚は最初こそ困っていたけど、途中からは呆れて取り合ってくれなくなった。

 ……で、私たちはアイスを奢る羽目になった。柚め、あのアイスで太ってしまえ。



 そんな感じで、実質の夏休み初日はあっという間に終わった。

 その晩、四人のグループチャットに綾音からメッセージが届いた。


『海、行こ!』

 画面の向こうから綾音の明るい声が聞こえたような気がした。

 海、そうだ。夏と言えば海。これは外せない。


『行こう』


『じゃあさ、水着買いに行こうよ』

 水着か、去年も買ったけど、良いよね、女子高生なんだし。

 自然と口角が上がっていく。夏休みが始まったって感じだ。


 柚が日程調査をササっと用意して、予定はポンポンと決まっていった。


「楽しみ……。お風呂入ってこよ」

面白かったら、いいね、評価お願いします!

感想も書いてくれると、とても嬉しいです!


珍しく、お昼に出せる……。健康的な生活を心がけたい。

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