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放課後の天使くん  作者: 絲夜しづる
第三章 天使はバスケ部エースと賭けをする

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第八話 友情!努力!勝利!

 木曜日、天使部の部室で私と天音と瀬尾は話をしていた。

 一条に話を聞きに行っていた天音が、少し申し訳なさそうに言う。

「ごめんね、あんまり話聞いてこれなかった」


「いや、良いよ。迷惑かけてごめん、伊織に嫌なこと言われなかった?」


「ううん、全然」


「そっか。あいつ、割といい性格してるからさ」


「うん、良い子だよ」


「天音、多分今のはそういうい意味じゃない」


「え、あ、あぁ、はい。うん、分かるよ?」

 天音は自分の間違いに気づいたらしく、少し照れように笑った。


「天使くんもそういうことあるんだな。それじゃあ、どうしよっか。俺、多分伊織に避けられてるんだよな」

 さすが新キャプテン。こういうとき、話を進めてくれるのは助かる。

 天音は自主性に任せるだし。


「家に凸るのは?」


「それは……ちょっと早いんじゃないかな?」

 私の案に天音は苦笑した。まどろっこしいことなんてやめて、直接問いただせば早いのに……。


「あのね。一応、約束してきたの。約束ってのはね……」

 天音は昨日、公園でバスケをしたときのことを話し始めた。


「それは……ちょっと無謀じゃないか?」


「そうなの? 五回で四点ってまぁまぁな点差じゃない?」


「いや、でも、天使くんじゃ流石にアイツ止めれないだろ。スリーもあるし、一本スリーとあとはレイアップでもなんでも一回入れれば勝ちだろ?」


「ちょっと、僕が決める可能性を考えてよ」


「でも、十回やって一回しか決まらなかったんだろ? 本気でやって?」


「うん、だから練習手伝って欲しいなって」


「手伝うのは良いけど。一日じゃ難しいんじゃないかな」


「まぁね、それは分かってるよ」


「じゃあ、なんで」


「大丈夫」

 天音はいつものように笑った。でも、流石に今回ばかりは瀬尾も訝しげだった。


「まぁ、それなら良いけど……。天使くんがバスケ部に入るってのも悪くないしな」


「あはは、そうなっちゃったらごめんね。邪魔はしないように、でもちゃんと頑張るよ」

 バスケ部に入ったら、この部はしばらくできないかもしれない。まぁ、休部的な形でもいいか。


「それじゃあ、取り敢えず。作戦は僕が一条くんに1on1で勝って引き戻すということで」


「うん、まぁ、俺も見に行って。その時に伊織と話もさせてもらうわ」


「うん。ちゃんと本人と話すことが大事だからね」


「それじゃあ、今日は部活ないけど。これから練習しに行く?」


「うん、そうする」


「そっか、じゃあ俺、一回家戻ってボール取ってくるわ」


「あ、ありがと」


「おう、じゃ」

 そう言って瀬尾が部室から出る。

 私と天音が残った。


「……天音にしては強引じゃない? 今回」


「え、強引かな……」


「うん、もう少しゆっくりとお互いを引き合わせてから話合わせて間取り持つ的なことするのかなって」


「うーん。確かにそうした方が良かったかもなぁ」


「じゃあ、どうして?」


「あはは、僕だって失敗することはあるし、いつでも理屈があるわけじゃないよ。これで良かったのかも、正直分からないけど。来週からテスト週間でしょ。県大会も終わったばっかりだけど、新人戦に向けて夏休みも練習あるだろうし。時間は有限だから。それに、一条くんにはバスケ好きでいて欲しいなって、そんな感じ」


「ふーん、全然わかんないや」


「あはは、まぁ、そうだね。じゃあ、僕がそうしたかったからっていうのは?」

 僕がそうしたかった、ね。


「まぁ、良いや。天音にも天音の考えがあるわけね」


「うん」


「隠してることもあるみたいだし」

 天音は少しだけ目を見開いた。


「隠してるというか、うん。本人に言わないで欲しいって言われてるから」


「そっか。天音は口固いもんね」


「うん、伝言ゲームみたいになっても、困るから」


「行こっか」

 私は立ち上がった。


「夏月さんも来てくれるの?」


「私部員なんだけど」

 そう言いつつ、この行動は最初の私ならありえないことだった。


「そっか、ありがと」

 いつもありがとうって言ってくれるのは嬉しいけど、そろそろもう少し巻き込んでくれてもいいんじゃないかな、なんて思う。

 私も一応、部員なんだし。

 

 まぁ、ちゃんと意思確認してくれるのは天音の良いところなんだろうけど。



「お、来た」

 公園で待っていると瀬尾がやってきた。


「待たせてごめん。じゃあ、天使くん特訓計画、始めようか」


「うん、お願いします。準備運動はしてきたよ」

 天音は学校指定のジャージに着替えている。瀬尾も動きやすい服装だ。


「そっか。じゃあ実力を見るために1on1しよっか」

 並んで立つとやっぱり二十センチぐらい差がある。一条は瀬尾よりは低かったはずだけど、それでも十五センチ以上は差がある。


 勝てるのかな。

 天音も十分動けてるけど、シュートは入らないし、レイアップは落とされるし、全然ダメそう。

 それに、瀬尾のシュートが全然止められてない。


「うーん、いや、思ったより全然基礎はできてるわ」


「ちょっと、一条くんに教えてもらったからね」


「でも、技術は向こうのが上だし、それに身長差がね」


「うーん、そっか」


「伊織対策教えるから。あとはひたすらシュートの練習って感じかな。小回り活かす感じで行こう」


「頼りになるね。さすが、新キャプテン」


「ちょ、やめてくれよ」

 楽しげな二人。私はベンチに座ってそんな二人を見ていた。

 こちらに振り向いた天音が走ってきた。


「どうしたの?」


「夏月さんも一緒にする? 楽しいよ」


「動いたら暑いし、それに見てるのも楽しいよ。大型犬にいたずらする子猫を見てるみたいで」


「あはは、一泡吹かせられるように頑張るよ。これからシュートの練習するけど、それだけでもちょっと混ざったら?」

 シュート練習か。確かにそれは見てるだけじゃちょっとつまらないかも。


「分かった。私も混ざる」

 天音は水筒を取り出して水分補給をしていた。首筋を汗が伝っている。


「はい、タオル」


「あ、ありがと」



「お、夏月もやんの? てかそのスカートで出来んの?」

 確かに。スカートは膝上まで折っている。校則違反だけど。あまり激しくは動かない方がいいかもしれない。


「まぁ、ジャンプしなけりゃいけるでしょ」


 天音が戻ってきた。今度は水筒とタオルを持ってきてコートの近くに置く。


「じゃあ、まずは俺から」

 瀬尾が放ったシュートは緩い放物線を描き危なげなくゴールに入った。


「こんな感じだな」

 おぉ〜、と天音が声を上げる。

 そのまま天音は走ってボールを取りに行き。瀬尾にちょっとうってみなと言われるままにシュートを放った。シュートはバックボードにぶつかってリングに入った。


「おぉ、いいね。フォームも大体できてる…ここはね……」

 瀬尾が天音を指導してる間にボールを拾ってくる。


「……伊織はマジで上手いんだよ。中学から同じバスケ部なんだけど。一年からレギュラーやっててずっと、目標だったんだ」


「そっか」


「ウザい時もあるんだけどな。上手いからって周り馬鹿にしてた時もあったし。でも、まだ……あいつとバスケしたい」


「そう言ってくれる友達がいることは、とても嬉しいことだと思うよ」


「天使くんが負けたら俺も勝負して引き戻すわ」


「ねぇ」

 すっかり二人の世界に入っている瀬尾たちに声をかける。


「うっていい?」


「あぁ、男子のだからでかいかもだけど」

 確かに、大きい。まぁ、両手で持てば。

 トントンと二回ついて、ボールを持ち直す。放ったボールは弧を描いて、そのままネットを揺らすこともなくすっとリングを通った。


「え、今入った? すご……」

 天音が驚きの言葉を漏らす。瀬尾にいたっては、口を開いたまま突っ立っている。


 私は踵を返して、髪をかきあげた。

「夏月さんってクールだよね」


「ほんと、時々めちゃくちゃかっこいいよな」


 思ったより上手く決まって満足したので、私はベンチに戻った。


 天音は瀬尾に指導されながらシュートの練習をしている。

 色んな角度から打てるように毎回位置を変えながら撃つ。少しして、瀬尾がディフェンスに立ち、それを避けながらシュートするようになった。

 ドリブル、フェイント。時折汗を拭いて、水分補給をする。

 

 天音は一生懸命練習していた。瀬尾も熱心だ。

 一度伸びをする。なんだか少し眠たくなってきた。


 ちょうど柚からLINEが来た。今から帰るから一緒にカフェに行こうって。

「瀬尾、天音。ごめん、帰るわ」


「オッケー」


「はーい」

 瀬尾はこっちに軽く手をあげ、天音は小さく手を振った。私も軽く振り返す。

 私が視線を外すと、すぐに天音は練習に戻った。


 何飲もっかな。

 まだ日は高い。


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