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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第2章 株価防衛戦

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第2章(7)市場が息を呑む朝

### 5. 開示前――何も言わない総裁


朝八時半。

上海証券取引所が動き出す直前。

龍騰グループのIRフロアは、異様な静けさに包まれていた。


「総裁、メディアからの問い合わせが——」


「全部、同じ回答でいい」


昊天は、資料から目を上げない。


「現時点で追加の開示事項はありません」


それ以上でも、それ以下でもない。


——だが、市場は知っている。

何も言わない時の李昊天が、一番危険だということを。


---


### 6. 数字が語り始める


寄り付き。


龍騰株は、

売り気配で始まると思われていた。


だが——


「……買いが、厚い?」


ディーラーの声が上ずる。


前日まで売りに回っていた外資系ファンドが、

ポジションを畳み始めている。


「ショートの巻き戻しだ」


「噂、回ってます。

 “背後に、動かせない資金がいる”って」


昊天は、スクリーンを見つめたまま動かない。


——まだだ。

これは序章にすぎない。


---


### 7. 叔父たちの朝


一方、李家の旧邸。


「……どういうことだ」


叔父の一人が、新聞を叩きつける。


「株価が、下がらない」


「海外ファンドが——」


「買いを、止めました」


報告役の声が震えている。


「一社は、完全撤退。

 もう一社も、契約条項の“再精査”を要求してきています」


「ふざけるな!」


——だが、誰も“李昊天の名前”を口にしない。


言った瞬間、

すべての背後に、彼がいると認めることになるからだ。


---


### 8. 菲菲――最後の確認


同時刻。


「総裁」


菲菲が、静かに端末を差し出す。


「当局側。

 “自主的な資料提出”として受理されました」


「担当は?」


「……中央です」


昊天は、短く息を吐いた。


地方ではない。

逃げ道は、もうない。


「叔父派の名義口座、

 取引制限が始まっています」


「予定通りだ」


昊天は、時計を見る。


九時三十分。


——開示まで、あと三十分。


---


### 9. 総裁の決断


「記者会見の原稿、最終版です」


菲菲が差し出した文面に、

昊天は一度もペンを入れなかった。


「このままでいい」


「……感情を、出しませんか?」


一瞬だけ、昊天は考えた。


「私情は、不要だ」


視線を上げ、静かに言う。


「これは、家族の問題ではない。

 企業統治と、法の話だ」


菲菲は、深く頷いた。


——李昊天が、

情を切った瞬間だった。


---


### 10. 鐘が鳴る


九時五十八分。


会見場の扉の向こうで、

フラッシュの音が波のように重なる。


昊天は、ネクタイを正し、立ち上がった。


「行こう」


この一歩は、

市場を救うためではない。


一族の恩讐を表に出すための一歩だ。

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