第1章(12)家族になる
―――昊明邸にて。
「兄さん! 奥さん! ようこそ〜! うちは兄さんちみたいに殺風景じゃないから、ゆっくりしてよ!」
昊明の妻、水蘭が笑って「ようこそ。昊天総裁の奥様、ゆっくりしていってくださいね」と優しく迎える。
3人の子供たちが駆け寄ってきて、長女が「昊天おじさん! おっきい!」と昊天の足に抱きつく。
昊天は一瞬固まり、無表情で「…放せ」と低く言うのに、子供は「やだー!」と無邪気に笑う。
元気いっぱい、しかしきちんとしつけられた子供たち。
妻は微笑んで子供を抱き上げて「可愛いわね……」と自然に遊んでいる。
昊天はそんな妻と子供たちの姿を見て、胸に何か温かいものが広がる。
夕食は昊明が「パパ特製BBQ!」と大騒ぎしながら庭で焼いて、みんなで囲む。
昊明が肉を片手にニヤニヤしながらやってくる。
「兄さん、見てよ。奥さん、子供好きなんだな。うちみたいに家族作ったら、毎日こんな感じだぜ? 跡継ぎ作るモチベ上がったろ〜?」
昊天は「黙れ」と返すけど、視線は妻から離れない。
「いやいや、俺から言っとくけどさ。 叔父派の残党もいなくなった今、グループの安定って言ったら、もう『跡継ぎ』しかないぜ?
取締役会のジジイども、内心みんなそれ待ってるよ。
兄さんは『イケメン独身覇道総裁』じゃなくなったんだから、次は『李家の後継者』だろ〜」
一瞬、手が止まった。
跡継ぎ。
子供。
妻との……。
昊明はチャラく笑いながら、でも目は本気だ。
それは、確かに「必要」だ。
古株の役員からそれとなく水を向けられたが「時期を見て」とだけ答えた。
株主の信頼、外部の評価、龍騰の長期的な支配……跡継ぎとなる子供がいれば、内外に李家の安定を示せる。
合理的な理由。 俺はいつも、そういう理由で動いてきた。
だがそれでいいのか。
水蘭が妻に「昊天は忙しいだろうけど、家族の時間は大事よ」と話しかけている。
水蘭は昊天の昔なじみだ。スイスに行く前に通っていた上海のインターで同級生だった。
妻は頷きながら、「……はい、素敵です」と小さく呟く。
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昊天は帰りの車で低く言う。
「……昊明の家は、賑やかだったな。」
母の言葉がよみがえる。
政略結婚の義務。
私は「ええ……私たちも、いつか……」とあいまいに微笑む。
昊天は一瞬沈黙して、手を握る。
「そうだな……」




