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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第2章 出会い

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第1章番外 契約結婚の葛藤

(承前)代理人からメールが届いた。


『件名:結婚式ドレス試着写真』


添付ファイルは一枚だけ。

クリックして、画面に映った白いドレス姿の女性を見た。

オフショルダーの袖が肩から優しく落ち、繊細なレースが光を捉えている。

世間が期待する「李昊天の妻」にふさわしい、洗練された選択。


画面を数秒見つめた。

……美しい。

それだけは、認めた。

胸の奥で、何かがわずかに動いた。

一瞬だけ。

すぐに押し殺した。

(……これは契約だ。感情を入れる必要はない。)


彼女の表情は穏やかで、微笑んでいるように見える。

でも、その瞳の奥に、ほんの小さな影がある。

俺が原因だ。

お見合いの日も、契約の場でも、彼女をまともに見なかった。

視線を窓の外に固定し、言葉を最小限にした。

彼女が傷ついているかもしれないことなど、考えたくなかった。

考えたら、また「人を幸せにできない男」になる。

写真の彼女は、これから妻になる人。

それなのに、この瞬間も、彼女の顔を「人」として見ている気がしなかった。

ただの「契約相手」の姿。

それで十分のはずだ。

指がキーボードに伸び、返信を打った。

「問題ない。」

送信。

それだけ。

メールを閉じ、画面を資料に戻した。


執務室は静かだった。

胸の奥に残った小さな揺らぎは、すぐに沈んだ。

……いや、沈んだふりをした。

あの白いドレスを着た彼女が、式の日に祭壇でこちらを見る瞬間を、

無意識に想像してしまったから。

その想像を、すぐに切り捨てた。


(……俺は、彼女を幸せにできない。)

だから、近づかない。

触れない。

見つめない。

それが、俺の守り方だ。

でも、あの写真の一枚が、

心に、ほんの小さなヒビを入れた。

気づかないふりをして、書類に目を落とした。

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