表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第1章 出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/35

第1章番外 結婚式前夜

(承前)結婚式1ヶ月前、実家にドレスが届いた日。

実家の応接間は、いつも通り静かだった。

重厚な木製の扉、祖父の代から続く調度品、窓から見える庭の古木。

ここは私の育った家なのに、温かみを感じたことはほとんどない。


使用人が大きな白い箱を運んできた。

「三娘。お召し物が届きました。」

私は立ち上がり、箱を受け取った。

蓋を開けると、純白のドレスが丁寧に畳まれ、繊細なレースとビーズが光を反射している。

派手すぎず、でも上品で洗練されたレースのディテール。

オフショルダーの袖が優雅に落ち、ボディラインを美しく引き立てるシルエット。

世間が噂する「覇道総裁の妻」にふさわしい、かつ「32歳」という名家の娘にしては後れた花嫁という立場をわきまえた――落ち着いた大人の美しさ。


私はドレスを広げ、鏡の前に立った。

白い生地が肩から滑り落ち、腰を優しく包む。

鏡の中の私は、静かに微笑んでいるように見えた。

でも、胸の奥で何かが小さく疼いた。

母は隣の部屋で、電話をしていた。

父は書斎に閉じこもっている。

ドレスの到着を伝えても、「ふむ、そうか」とだけ返ってきた。

「おめでとう」の一言も、試着を見たいという言葉も、なかった。

(……両親にとって、これは「家の取引」の一つでしかないんだ)


私はドレスを着たまま、窓辺に立った。

庭の木々が風に揺れている。

留学時代に恋をした人たちは、もっと熱く気持ちをぶつけあった。

しかしあの人は私の顔すらまともに見なかった。


総裁は、私の顔をまともに見ない。

お見合いの日も、契約の場でも、

視線はいつも遠く。

でも今は、それが正しいと思った。

結婚は恋愛じゃない。

家同士の約束。

ドレスを脱ぎながら、私は静かに息を吐いた。

箱に戻す前に、指でレースをそっと撫でた。


(……このドレスを着た時、

昊天さんが、少しでも私を見てくれるなら。)


贅沢な願いかもしれない。

でも、諦めきれない自分がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ