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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第1章 出会い

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第1章番外 お見合い(妻ver)

(承前)高級ホテルの個室は、静かすぎて息苦しかった。

午後の陽が白いカーテンを透かし、テーブルに柔らかな影を落としている。

私は向かいの席に座る李昊天総裁を、静かに見つめた。

37歳。龍騰グループの覇道総裁。

写真で見た通り、端正で冷たい容貌。

でも、実際の彼はもっと……遠い。

挨拶の言葉を交わした瞬間、総裁の目は私を一瞬だけ捉えた。

「よろしくお願いいたします。」

私は微笑んで頭を下げた。

返事は小さく、「こちらこそ。」

それきり。

会話はすぐに両家の代理人へ移り、資産配分、グループの将来、子どもの可能性……すべてが数字と条件のように並べられた。

私は頷きながら、時折総裁の横顔を見た。

表情は変わらない。

まるで、ここにいないみたい。

(この人は、何を考えているのだろう)

留学時代、恋をしたことはあった。

優しい言葉をかけてくれた人もいた。

でも、結局「結婚と恋愛は別」と自分で決めた。

両親のように、冷え切った関係になるくらいなら、

契約として割り切ったほうが、傷つかずに済むと思った。

姉たちだって、そうしている。

それなのに、なぜか胸が少し痛む。


総裁の視線が、私を通り越して窓の外の上海の街並みに向いている。

まるで、私という人間を「見る」ことすら、避けているように。

(……嫌われている? それとも、ただ興味がないだけ?)

代理人が「では、これで合意とさせていただきます」と言う頃には、

私はもう、笑顔を保つのに精一杯だった。


総裁が立ち上がった。

「これでよろしいか。」

声は低く、無感情。

私は立ち上がり、丁寧に頭を下げた。

総裁は振り返りもせず、部屋を出て行った。

背中が遠ざかるのを、ただ見送るしかなかった。

部屋に残された私は、ゆっくり息を吐いた。

代理人が「三娘、お疲れ様でした」と声をかけてくる。

私は微笑んで「ありがとうございます」と答えた。

でも、心の中では、別の言葉が浮かんでいた。


(……この結婚で、私は幸せになれるのだろうか)


総裁は、私を「妻」として見てくれないかもしれない。

それでも、私は決めたのだ。


私は窓辺に立ち、上海の空を見上げた。

形式だけの午後が、静かに終わった。

でも、私の「始まり」は、ここからだと思った。

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