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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第2章 株価防衛戦

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第2章(1)市場の拒絶

###第2章 登場人物


李昊天り・はおてぃえん

龍騰グループの3代目。覇道総裁と評判のやり手。一方、李家の当主として一族の血やしがらみに抑圧されて生きてきた。そのトラウマで「人を幸せにできない男」と思い込み、感情を閉ざす。

ヒロイン

名家の三女として生まれた。留学経験あり、それなりに恋愛もしたが「結婚と恋愛は別」と覇道総裁の妻になった。 両親の仲が冷え切っており、あたたかい家庭への憧れがある。 優しいが他人に踏み込むことも、踏み込ませることもない。 昊天のトラウマに気づきながらも、静かに信じて待つ強さを持つ。

昊明はおみん

昊天より2歳年下のいとこ(父の妹の子) チャラい見た目・口調だが、根は情に厚い。 昊天とはスイスのボーディングスクールで一緒に青春を過ごした。常に「昊天兄さん」呼び。 龍騰ではリスク管理担当。昊天と対立する叔父派の監視が裏の役割。3人の子がいるイクメン。

菲菲ふぃふぃ

昊天の秘書兼ボディガード。冷静沈着、武道の達人。実は昊天が好き。 昊天の結婚を機に思いを完全封印し、あるじとして仕え続けることを決めるが、心は揺れる。

小猫しゃおまお

妻のお付きメイド。妻の実家の使用人で、結婚まで姉妹のように近しい関係だった。しかし、身の回りに人を増やしたくないという昊天の意向で、新居には着いていかなかった。



### 昊天視点


春節の華やいだ喧騒が過ぎ去った頃。

龍騰大厦ろんとんたいか、最上階。


朝の市況レポートは、いつも通り淡々と読み上げられるはずだった。

スクリーンに映る数字が、その前提を裏切る。


「——下げ止まりません」


誰かが言った。

それが誰だったか、昊天は覚えていない。


海外ファンドが動いた、という速報はすでに把握していた。

だが、市場の反応は想定よりもはるかに冷酷だった。


「……また【李家で内紛】か」


どこかのアナリストのコメントが、モニターの片隅に流れる。


それだけで十分だった。


海外ファンドが株を集めたからではない。

創業家が自分たちの会社を制御できていない

——その印象が、投資家を遠ざけた。


機関投資家がポジションを落とし、

個人が不安に駆られて投げる。


結果として、株価は滑るように落ちていった。


昊天は、誰にともなく呟いた。


「会社ではないな」


市場は、龍騰を見ていない。李家という物語を見ている。


それが、何より腹立たしかった。


---




### 妻視点/日常の歪み


いつものジム。

いつものピラティス。


身体を伸ばし、呼吸を整える。

それだけのはずなのに、今日は妙に落ち着かなかった。


——視線。


直接向けられることはない。

だが、鏡越しに、何度も感じる。


「……ねえ、あの人」


「ほら、龍騰の……」


言葉は聞こえない。

聞こえなくていい。


着替えを終え、ロッカールームを出た瞬間、

胸の奥に、理由のわからないざわめきが広がった。


昊天。

——なにか、あった?


外に出た瞬間、

答えは用意されていた。


実家の車。


見慣れた運転手が、静かにドアを開ける。


「……三娘。ご帰宅を」


嫌な予感は、的中するものだ。


---




### 昊天視点/銀行団


会議室は、空気が重かった。


数字の説明はできる。

リスクの構造も、今後の選択肢も。


それでも、最後に残るのは——

信用だった。


「総裁」


メインバンクの常務が、もったいぶるように口を開く。


「率直に申し上げますが……

 業容拡大を、少し急ぎすぎたのでは?」


続く言葉は、予想通りだ。


「それに……お家騒動が続いている印象も強い」

「市場は、安定を好みます」

「外部の風を入れ、コンプライアンス体制を——」


昊天は、黙って聞いた。


彼らが会社を心配しているふりをして、

自分たちの債権しか見ていないことも、理解している。


だからこそ、最後の一言だけ、抑えきれなかった。


「——融資を求めて、三顧の礼で来たのは、あなた方だ」


一瞬、空気が止まる。


「本日のところは、以上です」


昊天は立ち上がり、会議を終わらせた。


背中に突き刺さる視線を感じながら。


---




### 妻視点/実家


応接間の空気は、冷たかった。


総領娘として実権を握る長姉が、当然のように中央に座っている。


「……正直に言うわ」


姉は、ためらいもなく言った。


「あなたの結婚で、家格は下がった」

「あんな成り上がりと結婚するなんて」


父と母も頷く。


「——」


「しかも、もう終わりでしょう。龍騰は」


話は、すでに離婚を前提に進んでいる。


妻は、深く息を吸った。


「……私は」


初めて、声が震えた。


「私は、自分で選びました。夫を愛しています」


一瞬の沈黙。


次の瞬間、

頬に、衝撃。


「愛だのなんだの、寝言はやめなさい」


姉の声は、冷たい。


「ここでは、あなたは“娘”でしかない」


その日から、部屋を出ることは許されなくなった。


---




### 昊天視点/折れかける心


役員会は、続いた。


誰もが慎重な言葉を選びながら、

昊天の“統治能力”を測っている。


数字は出してきた。

会社も拡大させた。


それでも。


——結局、李家か。


深夜。

ようやく帰宅する。


照明の落ちたリビング。


「……?」


返事がない。


寝室も、書斎も、

妻の気配がない。



胸が、嫌な音を立てた。


---




### 昊天視点/妻がいない


「菲菲」


電話口で、菲菲――秘書の声が一瞬詰まる。


「……実は」


運転手からの報告。

実家の車。


「なぜ、言わなかった」


責める声にならない。

代わりに滲んだのは、焦りだった。


迎えに行く。

今すぐに。


——いや。


思いとどまる。


今、自分が動けば、

妻は“弱点”になる。


逆恨み。

襲撃。

人質。


守るために、動かないほうが賢明か。


「……菲菲。昊明を呼べ」


電話を切ったあと、昊天はしばらく、その場に立ち尽くした。


会社も。

家も。


同時に、崩れかけている。


だが。


——選ぶ。


その夜、

覇道総裁・李昊天の反撃が、静かに始まった。

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