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一歳の時に見たお兄ちゃんに恋をして三歳で家を出た、お兄ちゃんと結婚するために

作者: 篠宮すずや
掲載日:2026/03/16


皆さんの初恋は、いつですか?


私の初恋は……一歳の時でした。


そんな訳ない、と思うかもしれません。

でも、本当なんです。


相手は、私の兄。

いいえ、お兄ちゃんでした。


初めてお兄ちゃんを「意識して」見たのが、一歳の時。

姿を目にした瞬間、心臓の鼓動が耳元で鳴り響いたのを、今でもはっきり覚えています。


ええ、その通りです。

皆さんの想像通り、耳元に心臓があったんです。


それからのお兄ちゃんとの生活は、私の寿命を半分ほど縮めたと言っても過言ではありません。

とにかく、身体がおかしくなってしまったんです。


お兄ちゃんの顔を見るだけで心拍数は常に百八十オーバー。

言葉を交わせば熱が出る。

ベッドで寝込めば、看病に来てくれる優しいお兄ちゃん。


濡れたタオルを替えられるたびに心拍は跳ね上がり、

おでこに乗せられたタオルは、砂漠の砂みたいにすぐ干からびていました。


幸せ地獄。

矛盾した言葉だけど、私にはこれ以上ないほどしっくりきます。


お兄ちゃんと一緒にいられて幸せ。

でも、毎日高熱で頭はクラクラ。

一歳の私の身体には、あまりにも荷が重すぎました。


――そして、三歳になった私は考えます。


いっそ、お兄ちゃんと結婚してキスをすればいいんじゃないか、と。


それは人としての絶頂。

人生における最高潮の瞬間。

そこまで辿り着けば、この身体に起きている異常も止まるはずだし、お兄ちゃんとも結婚できる。


一石二鳥。

今になって思えば、実に合理的な発想でした。


私は勇気を振り絞り、お兄ちゃんの前に立ちます。


「朔お兄ちゃん!! 凛のこと、好き?」


本当はプロポーズして、結婚して、キスまでする予定でした。

でも恥ずかしくて、言葉が喉でつかえてしまったんです。


「ああ! もちろん、お兄ちゃんは凛のことが大好きだよ」


言葉は刃物だ、と誰かが言っていました。

全くその通りです。


お兄ちゃんの声。

表情。

手の温もり。


すべてが私の急所を正確に抉る、凶器でした。


その瞬間、私は頭から湯気と鼻血を噴き出し、三日間寝込みます。


「凛!!!」


心配するお兄ちゃんの声が、心地よく感じられるほど、私はすっかり侵されていました。


三日後、熱が下がり――

久しぶりにお兄ちゃんの顔を見た瞬間、胸が波打つように跳ねます。


髪を切って、前よりずっと格好いい。

元々さらさらだった髪が綺麗に揃えられ、耳元がはっきり見えて、顔全体が輝いているようでした。


言葉より先に、身体が動きました。

私はお兄ちゃんの手を握り、自分の部屋へ引っ張ります。


「どうしたの、凛。急に手を引っ張ったりして」


「あのね……朔お兄ちゃん……私と、結婚してください!!」


静まり返った部屋に、私の声だけが響きました。


お兄ちゃんの顔は、恥ずかしくて見られません。

目を閉じて、返事を待つことしかできなかった。


だって――

以前、お兄ちゃんは言ってくれたんです。

凛のことが大好きだって。


だから、返事はきっと「いいよ」だと信じていました。


「凛……ごめんね。僕たちは、結婚はできないんだよ。兄妹なんだから」


“兄妹なんだから”。


その言葉が、脳裏で何度も何度も再生されます。


そして私は、三歳にして――

人生のどん底へと、真っ逆さまに堕ちていきました。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

ふと思いついて描き始めた作品で、皆さんの意見や、考察等を書いて楽しんで頂けると幸いです。

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