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婚約破棄されて追放寸前だったのに、なぜか冷徹なはずの氷の公爵様から世界で一番甘く愛されています。  作者: 黒崎隼人


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エピローグ「アシュフォード公爵夫妻の穏やかな午後」

 結婚から3年の月日が流れた。

 アシュフォード公爵領は、リゼットが『聖女』として領民に慕われるようになり、かつてないほどの豊穣と平和に恵まれていた。

 彼女の力は、疫病の特効薬開発に貢献したことで公に知れ渡り、『慈愛の聖女』と呼ばれている。

 偽りの聖女に国を傾けかけた王家は、彼女の功績を称え、過去の非礼を丁重に詫びた。

 王太子位を継いだのはエドワードの弟で、彼の賢明な采配により、国は落ち着きを取り戻しつつある。エドワードは、一貴族として王宮の片隅で静かに暮らしていると聞く。


 春の陽気が心地よい、ある日の午後。

 私、リゼット・アシュフォードは、夫であるキリアンと共に、屋敷の庭園にあるガゼボでお茶を飲んでいた。


「まあ、アルフレッド。そちらはダメよ」


 私の足元では、私たちの間に生まれた、黒髪と菫色の瞳を持つ息子のアルフレッドが、よちよち歩きでバラの花壇に突進しようとしていた。

 慌てて彼を抱き上げると、キリアンがくすくすと笑う。


「君に似て、花が好きなようだ」

「あなたに似て、好奇心旺盛でもあるようですわ」


 夫婦で顔を見合わせ、穏やかに微笑み合う。

 こんな何気ない日常が、何よりも愛おしい。


 キリアンは、すっかり『氷の公爵』の仮面を脱ぎ捨て、領地では『愛妻家の公爵様』として有名になっていた。

 私にだけ見せる、とろけるように甘い笑顔。

 不器用だけれど、まっすぐな愛情表現。

 私は毎日、彼からの愛を一身に受けて、幸せを噛みしめている。


「リゼット」

「はい、あなた」

「愛している」


 3年経っても、彼は毎日、この言葉を欠かさない。

 私も、彼の頬にキスを返して答える。


「私も、愛していますわ、キリアン」


 腕の中では、アルフレッドがきゃっきゃと楽しそうに笑っている。

 かつて、悪役令嬢と呼ばれ、全てを失った私。

 あの絶望の日々が、嘘のように遠い。

 でも、あの日々があったからこそ、今の幸せがあるのだと、今なら思える。


 温かい日差し、花の香り、愛する夫の優しい眼差し、そして腕の中の小さな温もり。

 私の世界は、こんなにも幸せなもので満ちている。

 これは、不遇の令嬢が真実の愛を見つけ、ささやかながらもかけがえのない幸福を手に入れるまでの物語。

 そして、この幸せな物語は、これからもずっと、続いていく。

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