第一話
今年の年始の社交界は、始まる前から波乱含みです。
……はぁ。
――これで、何度目のため息でしょうか。
皇宮文官である私がため息をつくなど、貴族として失格です。
しかし、仕方がないことです。まさかこの様な時期に、派閥のトップが自ら瑕疵をつけるなど。
陛下への反逆罪も問われたとか……。
正気の沙汰ではないですね。……まったく。
年始の皇帝主催の社交界への入場順リストの再作成。
この時期ですから、新たな派閥トップを据えられませんしね。
陛下と文官貴族の他派閥トップとの会談が必要ですから。
年始の社交界が終わればそちらの調整もしなければなりません。
……体が幾つあっても足らない、とはこういうことなのですね。
私は、口を挟める立場ではないのですが。
まずは、皇妃宮の儀典長との打ち合わせから、です。
………………先日、終わったばかりですのに。
頭の痛い案件です。
「このような時期に皇帝陛下への反逆などと。まったく、中央貴族はあいかわらず傲慢ですな」
皇妃宮の儀典長であるウード卿は、皇妃陛下の生家からついてこられた方です。
そのためか、何かあれば中央貴族への不満を口にされます。
「ウード卿、まだ司法省の聞き取り段階です。反逆罪と決まったわけではないのですから、断定されるのは時期尚早ですぞ」
私の上司である皇帝宮の儀典長であるゲルルフ卿が、ウード卿をいさめました。
それでもウード卿は、中央貴族への愚痴混じりの発言をやめる気配はありません。
まあ、中央貴族と辺境貴族との溝の深さを考えれば、仕方がない事もあるでしょう。
しかし、今はそのような話に時間をとられるわけにはいかないのです。
儀典長としての優先順位を、思い出していただきたいものです。
「……しかし、いくら代理任命を受けたとしても、爵位は伯爵位です。派閥トップである侯爵としての挨拶はできません」
「そうですな。それを許してしまっては、貴族社会が成り立たない」
「それでは」と、私は声を上げました。
「両陛下の儀典長の総意として皇帝陛下に奏上いたします。こちらの案のご認可を賜らねばなりません」
……ええ、時間がございません。早速陛下付の執事長へ、お渡しせねばなりませんね。
本日中にご認可いただければいいのですが……。
しかし、陛下も今回の件で中央貴族の派閥の一角である――財務閥の勢力低下には憂慮されているご様子です。
頭が痛いと、先日の会議で漏らされておられました。
……ゴルティ侯爵は、以前は陛下のお気に入りの一人でしたからね。
……まあ、陛下のご寵愛を笠に着て、かなり傲慢になられましたから。
……四辺境伯様方も、憂慮されていらっしゃいました。
今回の事は、「身から出た錆」でしょうね。
……ああ、いけません。このような私情を交えるなど。
早速、執事長にお会いせねば……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
この第二章は、マチルダはあまり出てきません。
大人達の世界です。
どうぞよろしくお願いいたします。




