第六話
「ヴァルメイル閣下のサロンへお誘いいただけるとは、市井育ちの娘にとっては望外の幸運でございます」
本日この場に招待された中央の貴族の中には、この黒髪の男を知らない者が多かった。
それでも、――人々の視線は男を捉えて離さなかった。
落ち着きのない様子で二人を窺い、男の美貌に頬をほんのり赤く染め、名残惜しそうに立ち去っていく。
その様子を横目に見た女侯爵は、ローダンヌ子爵に目を細めて気安い声を出した。
「女性方の視線が痛いのは、相変わらずですのね」
学生の頃から変わらない、静かに口角を上げる笑顔が目の前にある。
「皇都で普段見ない顔なので、珍しいだけでしょう」
ローダンヌ子爵の声には、言葉ほどにへりくだる響きがなかった。
「ところで、今回皇都にはエーリヒ様やアデリナ嬢はご一緒ではないのかしら」
「いえ、エーリヒやアデリナも伴っております」
「そうなのね、では、お二人も私のサロンにお招きするわね」
「以前にも閣下にお招きいただいた事を、二人とも名誉に思っております」
女侯爵がチラリと、視線をローダンヌ子爵から流した。
そこには、ハンカチで口元を覆うミレーヌに寄り添うように立つ、マチルダがいた。
その姿に、女侯爵は目元を緩く和ませた。
「……では、ローダンヌ子爵。貴族議会で」
右手を胸に当て、ローダンヌ子爵は無音で礼をとった。
後日、ゴルティ侯爵は、皇帝の押印の公式文書を、謹慎中の自邸で使者から受けた。
議会の裁定は、たった5分ほどの通達だった。
そのたった5分に、侯爵は奥歯をかみしめた。
使者の声だけが響く静かな客間に、その音は無遠慮に広がった。
侯爵は、敗北した
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