最終章:双律の凱旋と光の即位
Ⅰ. 王子最後の告白と別れ
追放される直前、ユリウス王子は一目セレネアに会いたいと願い出た。玉座の間には、女王セレネアと、その半歩後ろに控える王配アルティス。そして、憔悴したユリウスが立っていた。
ユリウスは、二人の圧倒的な始祖の力を前に、もはや完全に敗北を悟っていた。
「セレネア……いいえ、セレネア女王陛下」
彼の声には、敗北と後悔が満ちていた。
「最後に、一言だけ。私の愛は、野心に塗られていたが、貴女に向けた独占したいという渇望は、偽りではありませんでした。わたくしは、心から貴女を愛しておりました」
セレネアは、女王としての威厳を保ちながらも、彼の真実の愛を受け止めた。
「ユリウス殿下。貴方の正直な愛は、確かに美しかった。ですが、わたくしは、影と調和することでしか輝けません。貴方はわたくしの光を愛した。しかし、わたくし自身と、わたくしの全てを愛したのは、彼だけでした」
ユリウスは、静かに頷き、アルティスを苦い笑みで見つめた。
「……そうですか。ならば、わたくしは敗北を受け入れます。ノクス公。貴様こそ、この責任を最後まで果たせ」
ユリウスは、二人に最後の敬意を示すように一礼し、二度と振り返らずに玉座の間を去っていった。彼の熱すぎる光の魔力は、双律の王国には居場所がなかった。
Ⅱ. 即位式:光と影の誓約
数日後、セレネア女王の即位式が、王都の広大な広場で行われた。集まった国民は、真の太陽の光の到来を待望していた。
セレネアは、純粋な太陽の魔力を放つ黄金の王冠を戴き、白金のドレスを纏って登場した。彼女の魔力は、王都全体の空を澄み渡らせ、人々の心から長年の不安を払拭した。
アルティスは、月の光を宿した銀色の装束を纏い、女王の半歩後ろ、右肩を支える位置に、「王配」として立った。彼の存在は、女王の光を優しく安定させ、国民に安寧を与えた。
セレネアが王剣を掲げた瞬間、アルティスは自らの月魔法をセレネアの剣に注ぎ込んだ。黄金と銀の魔力が融合し、天に向かって巨大な「双律の紋章」を形成した。二人は、愛によって王国を導くという、太古の誓約を成就させたのだ。
Ⅲ. 国民への宣言:愛の責任
即位の儀式を終えたセレネアは、国民を見据え、女王としての最初の宣言を行った。
「我が国民よ。わたくしは、かつて『お飾り』として、愛のない鎖に繋がれていました」
彼女は、王家の欺瞞を隠さず、真実を語った。
「しかし、わたくしは、一人の騎士の命懸けの愛によって、真の光を取り戻しました。その騎士は、かつて『不吉』と蔑まれ、わたくしの『お飾りの婚約者』でしかなかった者です」
セレネアは、アルティスの手に自ら触れ、その銀色の指輪を高く掲げた。
「わたくしの王配、アルティスは、わたくしに、そしてこの王国に、『愛の責任』を果たしました。彼こそが、わたくしの影であり、真の伴侶です」
アルティスは、最高の誇りを胸に、女王の隣で深々と頭を下げた。彼の顔には、満たされた愛と献身が溢れていた。
「わたくしたち、双律の王権は、力ではなく、真実の愛と献身によって、国民を守り導くことを誓います!」
国民は、光と影の王権の圧倒的な正統性と真実の愛に、歓喜の渦を巻き起こした。
Ⅳ. エピローグ:永遠の誓約
即位式後、玉座の間。二人が公的な仮面を外した瞬間。
セレネアは、玉座から立ち上がり、アルティスへ駆け寄った。
「アルティス、我が愛しき太陽。いつも以上に貴女が輝いていますね。やはり貴女はすべてを照らす太陽のなのですね」
「アルティス、あなたこそ、とても素晴らしいわ。貴方とともに歩めることを誇りに思います」
何処か寂しさをにじませるアルティスの頬をそっと撫でる。
「私は皆を照らす太陽です。でも、地平線に姿を隠した後の時間は、月である貴方一人に光を与えるのだわ」
「セレネア、貴女という人は私を喜ばせる天才なのですね」
「アルティス、私だけの美しく雄々しい月よ。永遠に貴方を愛しているわ」
「ええ、ええ。わかっています。我が輝かしき太陽に永遠の忠誠と愛を誓いましょう」
アルティスはセレネアの腰を抱き寄せ、愛の成就を象徴するように、深く口付けるのだった。
夜。二人の私室で。
アルティスは、女王の寝室の影の中で、優しくセレネアを抱きしめた。
「私の女王。君が私を求めたのだから、二度と君を離しません。この責任は、私が全て取ると誓った。君の光が届く限り、私は永遠に君の傍を離れません」
愛と使命を成就させた双律の王権は、永遠の安寧を王国にもたらすのだった。
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