第十八章:双律の凱旋と愛の成就
Ⅰ. 聖地の光と影
アルティスとセレネアが飛び込んだ先は、時の流れが止まったかのような、静謐な空間だった。黄金色の光を放つ「太陽の祭壇」と、銀色の光を湛える「月の泉」が、向かい合うように配置されていた。
二人が中央に立つと、「双律の誓約」の力が最高潮に達し、アルティスとセレネアの体が、それぞれの始祖の力を呼び覚ました。
セレネアの白金の髪は、純粋な太陽の光を放ち、アルティスの銀色の髪は、夜空の星々のように輝き始めた。二人の魔力が、光の奔流と影の渦となって、完璧な螺旋を描きながら、互いの体へと流れ込まれていった。
王家が仕掛けたセレネアの力の封印が、「真の愛の誓約」の力によって完全に解除された。彼女の太陽の力は、王国を創った始祖のものと同等の、圧倒的な強さを持っていた。
二人の意識は、太古の始祖の記憶と結びついた。彼らは、「双律の誓約」が、「王家の支配」ではなく、「愛によって王国を導くための、真の王権」を意味していたことを知ったのだった。
セレネアは、完全な「太陽の始祖」の力を宿した「女王」として覚醒し、アルティスは、その光を支え、導く「月の始祖」の力を宿した「王配」として覚醒した。
「アルティス……この力が、私たちに与えられた真の責任なのね」セレネアは、覚悟と愛に満ちた瞳で、アルティスを見つめました。
「ええ、私の女王」アルティスは、傲慢さではなく、絶対的な献身と愛を込めて、彼女の手に口付けました。「貴女の光が、この国の真実を照らします。私は、貴女の影として、この身命を賭して、貴女と王国を支えます」
Ⅱ. 王国への帰還とユリウスの敗北
始祖の力を完全に宿した二人は、聖地から、直接、王都の王宮へと瞬間移動した。
王宮の謁見の間。ユリウス王子は、二人の逃亡によって崩壊した王家の権威を立て直すべく、焦燥感に駆られていた。
その時、謁見の間の大扉が、強大な魔力によって吹き飛ばされる。
そこに立っていたのは、黄金の光を全身から放つセレネアと、その光を完璧な調和で包み込む、銀色の輝きを纏ったアルティスだった。
ユリウス王子は、その圧倒的な始祖の力を前に、顔面蒼白となった。
「ノクス……公女……!なぜ、そのような力を……」
セレネアは、「聖女のお飾り」の微笑みではなく、「女王の威厳」を込めた視線で、ユリウスを見据えた。
「ユリウス殿下。わたくしは、もう『公女』ではありません。双律の誓約を成就させた、この国の真の女王です」
アルティスは、セレネアの半歩後ろに立ち、優雅でありながら、絶対的な守護の姿勢をとっていた。
「殿下。私は、以前も申し上げましたね」アルティスの声には、冷徹さではなく、勝ち誇ったような自信が満ちていた。「私が、この責任を取りますと。貴殿の正直な憧憬のおかげで、私たちの真実の愛は成就し、王家の偽りは暴かれました」
ユリウス王子は、自身の愛と野心が、最大の裏目に出たことを悟り、その場で完全に崩れ落ちた。
Ⅲ. 愛の成就と双律の王国
その後、二人は、始祖の力によって、王家が長年隠蔽してきた「双律の誓約」の真実を王国全土に示した。
ユリウス王子は、セレネアへの不当な執着と王家の秘密の隠蔽への加担を問われ、王位継承権を剥奪され、国外追放となったが、正直な愛は認められ、命は救われた。
ルーメン家とノクス家は、長年の対立を解消し、双律の新王権を全面的に支持した。
そして、セレネアは女王として、アルティスは王配として、真の愛によって結ばれたのだった。
彼らの統治する王国は、太陽(光)の公明正大な正義と、月(影)の深い献身的な庇護によって導かれ、真の安寧を得た。




