表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混頓中毒者異世界無残 ボール・ルーム・ブリッツ  作者: 黒い犬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/30

ニヂュウサン、もしくは、とある日常とその終わりを向かえる時

 その日の朝、私とキーンはギルドの依頼へ向かう前にダイナーで朝食を取っていた、その際に読んでいた朝刊に勇者一行について書かれていた、私はその見出しをハンバーガーを頬張るキーンに聞こえるように読み上げた。


「「勇者一行の戦士・ジェシー・カットロウ死す、後任はシオネス・シティ出身の女戦士ローズ・“ママ”・リベレイターに」だってさ」


 キーンは頷きながらハンバーガーを食べつつ「あのジェシー・カットロウが死ぬとはね、トップクラスの戦士で律厳社(リゲンシャ)の広告塔だったよ」と言った。


 律厳社(リゲンシャ)はこの世界でも珍しい魔法ではなく肉体の鍛練に信仰を見出だした宗教だ、その独特な戒律や宗教性は一見すると異端だが実はかなり古くからある宗教で優れたスポーツアスリートや格闘家や戦士職を数多く輩出している宗教だ、また、彼らは脳も肉体の一部であるという事から文武両道を掲げてたエリート育成にも力を入れており、優れた科学者や政治家も多数輩出している。


 そんな律厳社(リゲンシャ)が広告塔にまで祭り上げていたのが戦士のジェシー・カットロウだ、剣術はおろか、有りとあらゆる武器に精通しておりスナイパー職としても一級の腕を持つ彼は勇者のパーティーでも重要な位置にいた男だった、しかし、新聞の記事によると魔王の三大配下の一人である黒騎士のジーンの暗黒剣に敗れたと書いてある、私はその記事をやはりキーンに聞こえるように読み上げると「随分とファンタジックだな」と引っ掛かる場所の無い皮肉のようなものを言った、キーンは食後のコーヒーを飲みながら「“世の中”そんなもんさ、僕の父方の祖母は幼少期に妖精と契約して飛行魔法を覚えたって言うしな、まぁ、その妖精なんてのももDDTのせいで絶滅危惧種だけどね」返した、相変わらず驚くのがこの世界の出鱈目なまでの均一性だ、勇者や魔王、ドラゴンがいて魔法まである1940年代の先進国並みの文明がある場所に妖精がいて尚且つDDTのせいで絶滅危惧種なのだから、私は最早何があっても驚く気にならないでいる。


 それでも、いや、だからこそ沸き起こる疑問がある、この世界には“蘇生魔法”なるものは存在しないのか、私はその疑問をキーンに尋ねた、キーンは飲みかけのコーヒーカップを置いて答えた、「それは生命への、人間への冒涜じゃないか、役割を終えた人間を蘇生させてどうするつもりだ、蘇生魔法なんて不道徳極まりない禁術の一つだよ、もし使える人間がいたとしても限られた人間だよ、天法典録団(ハイソロジアンズ)の高僧ぐらいじゃないのか」


 と、思った以上に道徳的なものに基づいた答えが返ってきた、それはキーンの宗教感や道徳感ではなく、この世界での共通の認識のようなものでもあった、そして、キーンは続けてこう言った。


「それにしても後任が“ママ”とはね、益々女性の力が社会的なものになるね」


 この世界ではたくさんの男の兵士が魔王率いる軍勢との戦いに敗れ戦死した、これを受けて国内で今まで男性が担ってきた役割を女性が担うようになってきた、それは産業界だけではなく戦士職等にまで及んだ。


 ローズ・“ママ”・リベレイターは正しくその代表格と象徴のような女で元々はハウドッグ地方の工業都市のシオネス・シティにある工場でB-24の生産をしていた女性工員だったが、しかし、その腕っ節の強さを買われて地元の自警団長に任命されると、次々とハウドッグ地方の魔物(モンスター)を討伐しその頭角を表してくる、戦士職にしか扱えないような重量級の武器を軽々と扱うその巨体から繰り出される攻撃もさることながら、更に元々から厳格な発神会(ラッシ・ジャー・メン)の信者であったローズ・“ママ”・リベレイターは回復魔法や戦闘補助の魔法をマスターしており今“ルーキー”の中でも最も注目されている存在の一人である。


 この世界がいくら出鱈目なまでの均一性の上で成り立っているのだとしてもやはり人間が動かしていることに変わりはないのだ、新聞に載ってあるローズ・“ママ”・リベレイターの叩き上げの経歴を読むとそんな気持ちになった、それでも超人集団の勇者一行に加わるのだからローズ・“ママ”・リベレイターもまた超人的な能力を持った人間なのだろうと考えた。


「お喋りの時間は終わりだよ、“レディ”・ジョニサン」と私を悪戯にからかうとキーンは席を立った、ギルドの仕事の依頼の時間である、今日も朝から忙しくなりそうだ、いつものスティール・ウルフの討伐案件を含めても4件の依頼がある日だった、普段あまり働かない私たちだが、仕事があれば目一杯働いてみせた、こんな日々ももう少しで終わってしまうのだなと思うとやはり幾分と寂しくなる、キーンにはまだ関係を解消する話をしてはいないが、彼自身どこかで気付いているのかもしれない、それを考えると更に辛くなるものがある、それでも何れ彼に伝えなくてはならないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ