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混頓中毒者異世界無残 ボール・ルーム・ブリッツ  作者: 黒い犬


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12/14

ヂュウニ、もしくは、酔い散らかす英雄と苦悩と

 その日の昼まで祝杯やら何やらと私は村を連れ回された、それほどまでにスナジ村におけるクラッカーの被害は悲惨なものだったのだろう、私は行く先々で歓迎され、英雄の扱いを受けた。


 ある老婆は娘と孫をクラッカーに襲われ亡くしており、私に会うなり涙を流しながら手を強く握ってくれたりもした。それでも私は人助けに酔いしれることはなかった、私にとってそれは正しい心の在り方の流れにある陶酔の一種にしか過ぎなかった、禁断かつ背徳とも言える混頓(ボール)の快感と興奮を知った私にはそれらはあまりにも平凡で退屈な一時の感情でしかなかった、随時私の隣で村人らに機嫌を振り撒いていたシーンズは私のそんな冷たさを知っていたし、私がふと本心の写る表情を見せるなり耳元で「まぁ、半日ばかりのことだから耐えてくれよ」と言ってみせた、その度に私は笑顔を作り村を救ってみせた英雄の素振りに徹した。


 昼を過ぎて私はシーンズの屋敷に戻ることができた、行く先々でりんご酒を振る舞われて流石の私も酔ってしまった、私はシーンズが用意してくれた一室のベッドに倒れ込みそのまま眠りに付いた、やがて空が夕焼けに染まる頃になって私は目が覚めた、少しばかり酔いが残ってはいたが、それでもすっきりとした感覚で私は起きることができた。


 そうなると私の頭の中には今後の自身の生活の積み重ね方、つまりは人生の計画なんぞを考えてみたりするようになる、混頓(ボール)の体得の為に半年間は魔法とこの世界の薬学について学ばなくてはならないし、そのためには先ずは聖竜信仰教(ドラゴレイダ)の洗礼を受けなくてはいけない、その間の生活費の工面についても考えなくてはいけない、今回のクラッカー討伐は運良く成功したが、ギルド稼業というのはそのリスクに対してあまり割の良い仕事だとは思えない、底辺であっても堅実な仕事を見つけなくてはならないのではなかろうか、とにかく私にはやるべきことが山積みのようにしてある、一年から半年の時間を費やしこの世界における生活基盤を作るのだ。


 私がベッドに横たわりながら考え暮れているとドアをノックする音が聞こえた、ノックの主はメイドだった、夕食の準備ができたらしい、私は屋敷の中央に位置するリビングに向かった、食卓には既にシーンズがいた、「流石に疲れただろう?夕食を済ませたら今夜はゆっくりと休むといい」シーンズはそう言うとコップの水を飲み干した、どうやらシーンズも私と同じ様に眠っていたらしい、私も冷たい水が恋しく思っていたのだ。


 他愛の無い会話をしながら食事は楽しく過ぎていった、シーンズの冗談に時折メイド二人もクスクスと笑ったりもした、昨夜のシーンズとの時間といい実に心地好い時間が流れた。食事を終え、メイドが焼いてくれたアップルパイとりんごのシュラブを食して私は実に満足していた、私は実に素直な気持ちでこの時間の心地好さを言い表し、明日スナジ村を発つことを告げた、シーンズにせよメイドたちにせよとても残念がってはくれたし、私も幾分は寂しい気持ちにもされたが、「サヴァロでやるべきことがある」と言うとシーンズは納得してくれた、そして、私は何より生活の基盤作りをしなくてはならないという旨を伝えるとシーンズは「だったら」と言って職の世話までしてくれた、「その職についての詳細は後から君の寝室で話すとするよ」シーンズはそう言うと「今年もレッズが優勝するだろうね」とベースボールの話題に話を変えた、私はその素振りから職は聖竜信仰教(ドラゴレイダ)の繋がりによるものだろうと考えた、今の私にとってはその方が都合の良い流れであることも確かだった。


 私は寝室に戻るなりまた考え事をしていた、私は一人になると考え事をする癖があった、それは実に建設的なことから何ら意味の無いものまで各々を一人で考えるのだった、しかし、今の考え事はそれはそれまで考えないようにしていたことだった、勇者と魔王についてだった、どうもこの世界に不釣り合いな存在だと思っていた、魔法や魔物(モンスター)の存在だけでも不釣り合いではあるが、魔王は何故この世界に戦いを挑むのか、それに対抗する勇者とは何者なのかあまりにも漠然としたこれらの存在に対する疑問が尽きなかった、今の私にとってはどうでも良いことではあったが、もしも勇者が私と同じ様に異世界からの参入者だとしたら、彼はどのように今を過ごしているのか、自分の置かれた立場に疑問を感じ苦悩はしていないのか、考えれば考えほどにでは私は一体何のためにこの世界に飛ばされてきたのか、もしかすれば何かしらの役割りを持っているのではないか等の疑問に苛まれた、それは自意識の過剰さから出たものではないはずだ、他にも異世界からの転生者がいるのだとすればこの疑問に辿り着く筈である、私は、私は何者なのか、考えの渦に身を囚われていたその時、ドアをノックする者が現れた、シーンズだ、職についての詳細を知らせに来たのだ。

 

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