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混頓中毒者異世界無残 ボール・ルーム・ブリッツ  作者: 黒い犬


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11/11

ヂュウイチ、もしくは、夜明けの法螺吹き二人の挽歌

 聖竜信仰教(ドラゴレイダ)は古の宗教だ、故にその洗礼の儀式も実に厳格な段階を踏んでいる、正式な洗礼の儀式はサヴァロの街にある寺院で受けなくてはいけない、その為のにはシーンズに紹介状を書いてもらい、それを提示しなくてはいけないし私の場合、改宗等ではなく、新たに信仰の道に入るというものだからその経緯を洗礼を授ける僧侶に言わなくてはならない、そこは何かしらのでっち上げによって言うにしても混頓(ボール)の為の洗礼を欲していることを覚られるのは流石に上手くないと言える、私は「少々難儀だが大丈夫なのか?」とシーンズに尋ねた、シーンズは短くなった煙草を尚も吹かしながら言ってみせた。


「なに、今日日、聖竜信仰教(ドラゴレイダ)の信者になる奴なんて珍しいだけだ、僕が言うのも難だが滅び行く信仰だよ、若い信者層も少ないんだ、サヴァロの寺院の僧侶にしてもかなりの高齢者だ、君を喜んで迎え入れてくれるだろう」


 シーンズが言うのだから大丈夫なのだろう、もしサヴァロの寺院で洗礼の儀を拒絶されたとしてもその時はその時でより規律の緩い発神会(ラッシ・ジャー・メン)にでも乗り換えてやればいいし、それがダメでも信者の数や宗派の数も多いい光教(オルラレイダ)の何処かにでも私を救って下さる神様なんてものはいるだろう、既にこの世界の理の外の世界からやって来たような私にしてみればこの世界の神々や信仰に縛られること自体が実に馬鹿馬鹿しいものだと言えるのだ。


 それに洗礼を受けたとてその宗教全ての魔法が直ぐ様に使えるようになるわけではない、魔法の習得にはやはり鍛練が必要なのである、洗礼によって覚醒させられた初期魔力と自己の中にある生まれ持った気の波長を合わせつつ、外気に流れる属性(エレメント)のエネルギーを手繰り寄せる一連の作業は鍛練なくしてはできないものであって、それらを総合して出力される魔法の習得にも個人差は存在するのだ、私はシーンズのような魔道士の家系に生まれたわけでも、況してや魔道士を志願しているわけでもない、ただ単に混頓(ボール)の快感や興奮を欲しているだけの背徳者にしか過ぎない、だから基本的な魔法の習得のみを目的としている要素に比重がある、それでも最低半年間の鍛練が必要とされていた。


 実はシーンズが混頓(ボール)について私にできることは紹介状を書くことと、自身が使いこなす混頓(ボール)のレシピを明かすことぐらいで大したことはできなかった、それでもシーンズからは薫陶を受けたと呼べる濃厚な時間を過ごさせて貰った、それもたった一夜の間でだ、また、シーンズは私を単なる混頓(ボール)の消費者にしようとはしなかった、寧ろシーンズ自身と同じ伝承者(メスマー)としての道を引いたと言えるだろう、故に彼は私に聖竜信仰教(ドラゴレイダ)の入信を薦め、基本的でも魔法の体得をするようにも薦めた。私はシーンズが私に引いた伝承者(メスマー)としての道を進もうと考えていた、それはスナジ村の村長という表向きの社会的地位という足枷のあるシーンズにはできない、叶わない道筋でもあった、私にはその意思を継ぐ思いがあった、それは私にとって一つの信頼や友情の示し方でもあった、しかし、シーンズは私に尽力してくれた男だった、薬学、この世界における“アイテム”について全く無知な私の為に数冊の書物までくれた、この世界の常識とまで言えるアイテムについてまでもこと細かく、決して私を卑下することなく説明してくれた、私にはこの夜が永遠と続く幸福な時のようにも思えた、クラッカー討伐の疲れなど微塵も感じなかった、シーンズの秘密の部屋はりんごのシュラブの甘い香りで満ちていた、時が過ぎるのを忘れる一夜を過ごした。


 やがて、空が白んだ、数時間後にはクラッカー討伐成功を祝した会が村人を集めて開かれる、だと言うのにその会の主役二人がこの様である、シーンズは部屋の棚にある瓶を二つ取り出しりんごのシュラブにそれを混ぜた。


「これは混頓(ボール)じゃないよ、眠気を吹っ飛ばす立眠剤(りつみんざい)と体力を瞬間的かつ爆発的にアップさせる倍体草(ばいたいそう)を混ぜた特性ドリンクだ、お互いこんな顔で人前にはでれないだろう?」


 私とシーンズはその特性ドリンクを飲み干し、不眠のままその朝に開かれるクラッカー討伐成功を祝した会に出席することとなった。


 メイドたちは目覚めるなり早々と朝食の支度をしてみせた、私は体力をうんとつけてやろうと朝食をたくさん食べ、身支度を整えるなり、私とシーンズは村の中心部にある広場へと足を運んだ、100人前後の村人のほとんどがそこに集まり私とシーンズを歓迎してくれた、私はその場にある足場台の上に登壇し、短めのスピーチを行った、小さい規模ではあるが私自身ちょっとした勇者にでもなった心地がした、花束までもらい、前列の村人らからは握手すら求められた、私は心底夢心地であった。


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