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プロローグ

 福山光里、29歳。彼女いない歴=年齢。彼女ができたことのない俺は、当然童貞だ。朝起きて会社に行き、終電で自宅へ帰る。途中にあるコンビニに立ち寄り、タバコ2個とその日の晩飯のからあげ弁当と翌日に食べるパンとブラックコーヒーを、レジにいたダルそうなアルバイト君から購入し、「あざしたー」とこれまたやる気のないバイト君の声を背に、重い足を引き摺るようにして自宅へと向かう。――これが社畜歴7年の俺のルーティーンである。


 帰宅後、ベッドに倒れこみたい衝動に駆られつつ、白いミニテーブルへ放り投げるように買い物袋を置くと、自分でも驚くほど若者とは思えない疲れきった声が漏れた。飯を食うか風呂に入るかで少し悩みはしたが、先に風呂に入ってしまおうと浴室に向かう。脱衣所は凍えるんじゃねぇかってほど寒かった。「さむ…」と声を漏らしつつ、いつものように浴室暖房機に30分のタイマーをかけ、リビングに戻った。


 浴室が温まるまでの間、適当にテレビをつけて待とうと、テレビを点けてみる。土曜日24時から始まるアニメのオープニングが流れている。あ、後輩が好きだと言っていたアニメだ、あれ、これが始まってるってことは明日仕事休みじゃね?とぼーっと思い出す。

 俺が高校生の時はアニメの話をするだけで、女子にオタクだと気持ち悪がられていたものだが、今はその辺寛容になったのか、堂々とアニメオタクやゲームオタクだと公言しても、それに食いつく女子すらいるような時代になっている。まぁ、俺はアニメやゲームにはあまり詳しくないのだが。


 内容は頭に入っていないものの、なんとなくそのアニメを眺めていると、気が付けばエンディングに差し掛かり、そして視界がぐらりと大きく揺れた。――眩暈だ。最近よく眩暈を起こしているのだが、まぁ、ここ最近仕事が忙しくて寝不足続きだからな、と大して気にも留めず、俺は目を閉じて眩暈が治まるのを待った。

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