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図書館にて



 たっぷりと休息を取り、すっかり身体の調子が戻った私は、相変わらず図書館で呪いを解くための調べ物を続けていた。



 やっと手続きが完了して神殿にも通うようになり、昼間は神殿で治癒の奉仕を、夕食をとった後は図書館で調べ物をするのが日課となっている。



 いつものように図書館にいると、ザフリーが紅茶とケーキを持ってやってきた。



 あの火事以降、ザフリーは私を警戒することも、胡散臭そうな目で見ることもなくなっていた。


 こうして調べ物をしている私にちょくちょく差し入れをしてくれる。


「ありがとう、ザフリー!」


「本を戻すついでだ」


 ザフリーはぶっきらぼうに言って、本棚に本を戻してからすぐに行ってしまった。



 私はザフリーが持って来てくれた紅茶とケーキをありがたく頂く。


 ああ、美味しい!考えるのに疲れたところだったからちょうどよかった。



 おかげでやる気が湧いて来た。

 よしっ、今日はもうちょっと頑張っちゃおう!



 私は気合を入れて、追加の資料を見るため魔法書の本棚を探した。



 私の欲しい資料は――――あ、あった!


 なんとか手を伸ばせば届きそう、と思ったけど意外に高い位置で微妙に届かない。



「ほっ」

 と、声を出して気合を入れて背伸びしてみると、あともうちょっとで届きそう……!



 背伸びをしながら指先でちょっとずつ本を引き出し、なんとか取り出せた!


 そう思いホッとした途端、足が滑ってバランスを崩してしまった。



 わ!転ぶ!



 そう思った瞬間、背中に硬いものがぶつかって私は転倒せずに済んだ。


 よかった……。



 ホッと息をついて顔だけ振り返って見ると、カイルが後ろに立って私を支えてくれている。


 後ろからカイルの胸に抱かれるような格好になっていて、私は少し恥ずかしくなり慌てて向き直った。


「あ、ごめんなさい!」


「いえ、お怪我はないですか?」


 カイルは気遣うような表情で言う。


「うん、大丈夫」


 顔を上げて言うと、カイルの顔を近距離で仰ぎ見る形になり、その美しい顔に思わず見入ってしまった。


 クリフ様もすごく美しいけど、カイルも負けず劣らず綺麗な顔してるんだなあ。


 そんなことを思いながらぼーっと見ていると、心なしかカイルの顔が赤くなっていく気がする。



 その瞬間、物音がしたので振り向くと、クリフ様が本を持って立っていた。


 カイルが瞬時に私から距離を取る。



「…………本を戻すついでに寄ったんだが、ちょっといいか?」


「あ、はい!」


 私は慌てて返事をする。



 へ、変に思われてないよね?



 そんな私の動揺を尻目に、クリフ様は近くの椅子に座るよう促した。


 私はクリフ様の向かいの席に着く。


「今度、公城で定期的に行なっている夜会があるんだが、お前も参加してくれるか?」


「あ、夜会ですね。はい!」


 小説でもよく読んでいた、貴族達がこぞって参加する華やかなパーティーよね。


「聖女のお披露目も兼ねているので、俺がエスコートする」


「あ、ありがとうございます」


「何も難しいことはないから心配するな。ただ参加するだけでいい」


 あ、よかった。聖女として何かしなくちゃいけないのかと思った。


「はい」

 私はホッとして言った。


 必要な準備もこちらで手配しておく、という旨を私に伝えてクリフ様はすぐに行ってしまった。



 去り際にクリフ様は何かを言いかけたが、カイルをちらっと見てから何も言わずに行ってしまった。


 ふとカイルを見ると、なにやら気まずそうな顔をしている。



 ?



 どうしたんだろう?


 

 まあとにかく、ちょっと緊張するけれど、小説で見ていた夜会に参加できるなんて楽しみだなあ!


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