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不穏

 

 止まりなさい、って止まってんの見てんのに、それはないじゃん、とか。

 手紙の確認もしなくて悪かったな、と思った感情をシュレッダーにかけたり、モヤモヤした。



 なんか、ただ単に印象が悪くなったっていうだけだけど、やっぱり海賊と無関係じゃないんじゃないの?


 こいつ等さあ、役割分担なんじゃない?

 海賊の襲撃だけで済めばそれでいいし、そうじゃなかったら同じ仲間なのに海賊から助ける演技して信用させて、なんかこうお宝を頂く、みたいな。

 お宝あるのか知らないけど。

 貝王様のお宝はすごかったけど。


 それとも島自体が必要か。

 船乗りにとっての島の価値がよくわからんので全然予測つかない。


 なんか切実さと利益が絡むと、根が深そうな感じだね。



 ……本当はちょっとさ。


 船の中継地とか多分、大変なんだろうからさ。

 それで病気になれとか死ねとか言うんじゃないからさ。

 協力しなきゃいけないのかなー(ため息)とか、いうようなつもりでいたんだよね。


 どうにもならないと思ってたんだよ……。


 でもさ、考えてみたら、あっちにも魔力持ちいるんだしさ。

 資金源あるんだしさ。

 その分の多分リターンはあるんだろうしさ。


 ……なんかやっぱり、協力したくねえな。

 私の島じゃないけどね。

 私が水を生み出したりしてんじゃないけどね。




 貝王様とイカさん先生は、あんまり人間と遭遇したことがないようだけれども、油断している様子もなかった。

 さすがだね。

 冷静だね。


 奇海子(きみこ)さんは……なんだかわかんないけれど、興味本位で行ったのかな?

 忌見子(きみこ)さんが、興味?それはない、か?

 それとも襲いに来たと思って先手必勝!してんのかな?先手じゃないけど。

 この間も助けに来てくれたしね。


 海の生き物は、食ったり食われたりだから、襲われてるっていうのはわかるのかもしれない。 今、襲いに来てんだかは謎だけどね。

 ()()()()で来られると、私だってわかんないけどね。

 騙されそう。

 陸ですぐ騙されたな。

 でも助けられたけど。



 その時、


「私に話をさせてください」


 と主さんが立ち上がった。


 他に、立ち上がって手紙を拾っていた人が近寄ろうとしたのを手で制している。

 魔力持ちだから、白服がこの多方面からの遠目に気づいている可能性はある。

 けれども、少なくとも今は声を出して報告はしているように見受けられない。


 それとも何かあるのかな。

 声に出さなくても内密で状況を伝える物、とか。

 どうやってそれ、理解するんだろう?

 魔力持ちなら、魔力を送り合って解決もできるかもしれないけど。

 魔法具とか金持ちだからあんのかもしれないけど。


 何も隠し持っていない、という風に、主さんはマントを脱ぎ捨てて両手を広めている。

 まるで丸腰です、というアピールのようだ。

 手で制された人は、手紙を持ったまま正座の列に戻って座った。



「襲いに来たのではありません。

 船を失えばひとたまりもありませんので、そもそも戦いにはなり得ないのです。

 話をさせてください。

 この間お預かりした物は全てこちらにご用意してあります。

 全て、お返しいたします。」


 あら、風向きが変わった。


 そうなの?

 全部持ってきてんの?

 それって、何しにもらったの?

 船で行き来するだけでも大変じゃない?と思ったら、どうも前回もらった経緯のようなものが頭にふっと浮かんだ。



 私が部屋の中に入った後、つまりイカ先生に部屋に入れてもらった後、小船の方は他言無用、と貝王様に言われ、自分の母船に送り届けられていた。

 気がついたら、母船の前に浮いていた、とも言える。小舟がね。生身じゃないよ。

 それとほとんど同時に、乗組員の言うことには たくさんの財宝船の中に突然現れたのだそうだ。


 ほうほう。

 主さんか隅の人か白服か。

 誰かは知らないけど、その視点の出来事のようだ。

 魔法って感じ。



 よくわからないけれど、頂き物だろうけれども決して手をつけないように主さんは厳命し、物を確認し、それをそっくりそのまま今持ってきている、という状況のようだ。


 あれ?もしかして戻ってきたのって、この数々の財宝のせい?

 もらうわけにはいかない、大きなことになっちゃうから、貸しを作るから、そういう感じ?



 うちの田舎の、もっと田舎の方だと、もう年寄り限定なんだろうけど、あげたものを返すっていうのはものすごく失礼なことだった。

 場合によってはお返しをしただけでも、縁を切るっていう風に受け取られるような面もあったんだけど。


 カコドでは違うのかな?

 それとも人間同士じゃないからってこと?

 よくわからないけれども映像の中の主さんの顔の厳しさから考えれば、そして慎重に確認して、絶対に誰かポケットにヒョイって入れないように、厳戒態勢を見れば重要視しているのはわかるんだけど。

 なんて言うか、明文化されてない暗黙のルールみたいなものって、人の頭の中を覗けたって、本人は真剣なんだろうけどよくわかんないんだよね。

 マナーというのかルールというのか、常識なのかモラルなのか。

 ハッキリしろよ!っていう年寄りが言い張れば正義みたいのが嫌い過ぎて、今、どういう空気感なのか全然掴めない。


 海の中には、どーゆー贈り物ルールがあるんだろう?


 主さんが丁寧に、ただし何も知らない人にわかりやすく噛み砕いて説明するように話す。


 それによると、どうも話の始まりはカコドに魔力持ちの私が現れて、魔力を持っている、というのが確認されてしまったようだ。

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