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正直

 


 忌深子(きみこ)さんは、バンバンぶつかっては跳ね返されて海で漂うのは楽しいらしく、何度も何度も繰り返した。

 でも壊れるからやめて。


 楽しいという感情が伝わってくるのでわかるのだが、他の遊び方にしてもらいたい。

 まあ自分でやってるんじゃなくて、半分他人の力だからね。


 でもジェットコースターじゃないから、これ。


 漂ってるだけでも楽しかったんでしょう?アナタ。


 私もやめて欲しかったし、貝王様もそのうち、めんどくさくなったのか何なのか、そのまま明るく見えるだけの魔法を起動したようで、その後しばらくしてからはずっと窓が明るいままになった。


 今つけたのか、元々あったものを作動させたのかはわからないけれども、防音機能もあるみたいで、それからは音もしなくなった。


 季視子(きみこ)さんがその後何度繰り返していたからわからない。



 ところで



 と、貝王様を話し始めた。

 どうも先ほど言いかけた内容のようだ。




 あれが気になります


 と。


 早い話がテレビのことみたい。


 あれは何ですか?


 と静かーに楽しそうにゆーっくりと質問タイム。

 引く気配がないよ。


 ってか壁を隔てて透視できるんですか?

 360度見えるの?

 いつから見てたの?

 いつも見えるの?ずっと見てるの?



 説明しずらい。

 わかる限り一生懸命話していく。


 スマホのことも気になっていたみたいだ。

 それも一生懸命説明する。

 ついでに家電のこととかも色々と一生懸命。



 台所まで見えてるらしい。




 あんまり必死に説明して、もうあってんのか違ってんだか、よくわかんない。

 電気の説明からしてうまくできないのにね。

 家電って電気で動いてんだよね?

 うん、そのはず。


 よくわからん。 どうしよう。

 本当にね、必死に説明しているので一生懸命になって周りが見えていなかった。


 が、そのうち変な声がした。


「あんまりです。今までの私の献身を台無しにして!」


 まさかと思ったら、一応充電器にささっているスマホが、見たらなぜか勝手に光っていた。


 何した?一体どうしたと近寄って見たら、スマ子だった。


 ……お前生きてたのかよ。

 ゲンナリ。


「実家に帰らせていただきます。」


 どうやって?

 お前世界は渡れるの?

 何喋ってんの?


 ってかお前の実家ってどこ?

 工場?


「そういう問題じゃありません!」





 これも生き物ですか?





 と、貝王様。


 いえ、なんというか、魔力珊瑚みたいな。


 しどろもどろ。

 なんか勝手に不完全変態して。



 色々説明してる最中に貝王様が黙ってしまって、あれ?と思った。


 見回したらイカさん先生が窓のところに戻ってきていた。


 貝王様に断って窓を開けに行く。


 あれ、毅視子(きみこ)さんは?

 と、思ったら案の定、先生の足で踏まれていた。


 でも楽しいらしい。

 ちょっと怒ってもいるけど、髪の毛はピシピシしているが、全力でもがいて出ようとしている気配を感じない。


 楽しいのね。



 っていうか向こうはどうなったんだ?

 と思ってイカさん先生を見たら、先生は察したらしい。

 私の頭の中が垂れ流しともいう。




 なんかいい子にしているよ?



 ということだった。


 えっと……そうですか。




 お手紙、持ってきたよ~。




 ほうほう。

 私、読めない。


「スマ子、文字の翻訳出来る?」


「知りません」


 オイ!


「じゃ、お前存在価値ないな」


「私はこの世界でただ1つの存在、万能のスマホです!

 蚊ゴトキ以下なんてありえません!」


「蚊はただの生き物なんだよ!お前はただの道具なんだよ、役にたたなきゃただのゴミなの!」


「あんまりです!実家に帰らせていただきます!」


「だからどうやって?!」



 やいのやいの、やっているうちに、イカさん先生がいなくなっていた。


 あれ、どこに?


 すると黙って笑いながら見ていたらしい貝王様。

 魔力珊瑚の前に、こちらのようですよ、とポッと映像を出してくれた。


 イカさん先生、なんと船に戻っている。

 早い。



 イカさん先生がいない間に、足を戻していたのにまた再び正座したのか、ずっと正座していたのか、わからないが船の上の人達はまた正座。


 何かを聞かされているっぽい。


 イカさん先生が、足をわちゃわちゃさせて説明しているようだ。


 何してるの?



「これ、何を言ってるんでしょうね?」


 そうすると、どうやらこう言ってるようですよ、と貝王様。


 頭の中に、向こうの映像と、イカさん先生が人間に向けて、状況を説明する魔力を流しているものが、私にも届いた。


 魔力持ち同士でも、大きい魔力を当てたら体が危険だから、普通の人間でもわかるように、弱く意味を流している。


 正座している人達は、さざ波のように『言葉』『困る』等と意味のある何かが体に入ってきて、困惑しているようだ。


 貝王様が解説してくれる。

 魔力持ち同士なら、わりとすぐに伝わるが、魔力がないと、完全スルーされたりするので、伝わるのは難しいらしい。


 極珍しい星に、魔力は一切ないのに、魔力持ちの会話を拾える、というのが過去あったとか。

 へぇ~。


 そして、そんな高等技術を使って、イカさん先生が何を話してるかというと。



 文字がこちらの世界の文字だからわからない。


 翻訳してくれる子と今喧嘩中みたいよ。


 と。


 ……そんな正直に喋んなくてもいいんだけどさ。


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