のぞき
船から人がおりる作業をしているんだか、拠点を作る作業してるんだか、よくわからないのを見ている間に、船の中に白い服を見た。
白服、と思ったけど、顔まではよく見えない。
しかし、そう考えると、あっさり画面(?)が寄った。
何人かいたが、どうも、主さんたちもいるみたい。
そりゃそうか。
島があるかどうかは、あの人たちからしか多分、漏れないよね。
壁を作ったっていうのは、そういえばそっちから(島の外)見えるか見えないか、そこは謎だったね。
それは後で聞かないとな。
まあそう言って、聞くの忘れてんだけどね。
言ってはいないか。
でもどのみち、忘れるという……。
何人か白いのが、時々振り返って指示を確認している。
白服もいる。
あいつは白いなりしてるから、違和感ない。
いつも通り白い。
街中を歩いていた時と違って、主さんも他の数人も白い上着を上から羽織っている。
なんかあのマントみたいなやつだ。
ちょっと珍しいつもりで見ていた。
なんだ。
海賊じゃなかったのか。
良かった。
いや、良かったの?
あの人達が海賊になるの?
どうなの?と思ったら、ググっとカメラがピントを合わせるように映像が近寄った。
すると白服が振り返った。
なんかすごくはっきり目があった気がする。
パチン、と映像が切れた。
今は目の前に、イカさん先生と海しか見えない。
あれっ?と思った。
だって、海とイカさん先生も見ながら、この船の映像を追ってるつもりだったのに。
完全にあっちしか見えなくなってたな。
これが魔力に没頭する、っていうことか。
不思議に思っていると、イカさん先生が言った。
気づかれちゃったね。
え、そうなの?
向こうで魔力を感知して、こっちが覗いていることがバレてしまった、ということらしい。
そういうものなんだ、あれ。
私また、魔力が垂れ流しだったんですか?
そう聞いてみる。
だからバレたのかな?
しかし、魔力を行使して向こうの様子を見ながら、向こうには気づかれない、っていうのはとてつもなく難しいこと。
スッゴい高等技術らしい。
イカさん先生も成功率低いって。
相手にコンタクトを取ろうとしていなくてもね、すぐにバレちゃったりね。
逆にこちらから向こうに対して話しかけないと、気づかれないこともあるんだけれど。
そう説明する先生。
多分、白い服(複数)に集中したから。
白服が……あの、なんかちょっとソリが合わないやつ、あの人間の方。
あいつに気づかれたみたい。
あいつも魔力持ちみたいだからね。
魔力持ちはあの人間だけみたいだね。
他にも人間いっぱいいたでしょ。
直接に見ればわかるんだけれどね。
なんとなく、ごちゃごちゃしてる感じはするんだけれども。
魔力持ちじゃないと、あんまりはっきりわからないんだよね。
イカさん先生はそう言った。
海の中には生き物が溢れているから、生き物がたくさんいるっていう感覚はあるみたいなんだけれども。
直接、自分の周りじゃないと、魔力持ち以外は、はっきりわからないみたい。
ふーん、そういうものか。
私はまだ、魔力持ちもわかんないけど。
ところで先生、私は今、魔力に没頭してたんですか?
なんか海賊じゃなかったので、結構安心してしまって、先生の質問タイムが始まる。
ホントに結構安心したな。
うん、そうだよ。
と、イカさん先生は答える。
これは結構、危険なことらしくて、慣れちゃいけない。
昔、イカさん先生に、あんまり強くはないけど魔力を使うのが巧みな仲間がいた。
しかしその感覚に集中するあまり、そもそも自分に近寄ってきて食べられるまで、本当に噛みつかれるまで気づかなかった、ということらしい。
危険だからね。
ほどほどにしないといけないよ。
ほどほどって言ってもね、危ないなと思うのを忘れちゃったらいけないんだよ。
意識し続けないといけない、っていうことか。
そっちの方がめんどくさいな。
どうすっかなー。
私に出来るのかな。
魔力に頼んない方が早い気がするんだけど。
いや。便利だね。これがなかったら無理だね。
そもそも今、スマ子いないけど、これ自動翻訳してんのかな。
それともスマ子じゃなく、私の魔力が自動翻訳してんのかな。
人間と会っても会話できないんじゃない?
イカさん先生に、口で聞いているのもどういう状況なんだろう?
意味が繋がってるから。
頭の中が垂れ流しだから、言葉は何話してるかわからなくてもオッケー!みたいな感じ?
うーん、でもこれって、人間の言葉のことだから、貝王様に聞いてもわかんないよね。
海の生き物陣との会話、基本頭の中だもの。
音声じゃないもの。
うん、まあ……考えてもしょうがないか。
とりあえず、通じてもそういうものだと思っておこう。
魔力がなくなると、どうなのかわかんないけどね。
もう1回見てみる?
とイカさん先生は言った。
さっきパチンと映像が切れたのは、イカさん先生がやったらしい。
私が映像を引き寄せていたが、魔力の供給を無理やり断ち切ったみたい。
私が魔力に没頭していたこともあるし、人間の脅威というものが、いまいちよくわからなかったから、ということだった。
海賊を見ていると、そうなのかもしれないけれども、人間も仲間もいるみたいだし。
あの人間は私と知り合い風だったし。
一体どうなんだろう?ということみたい。
オジイから、基本的にこの大海には来ないだろうけれども、人間と海の生き物とはだいたいは相容れないのだ、という風に聞いている、ということだった。




