スーパー
中が見えるかと思ってスーパーの近くに寄る。 すると自動ドアが開いてしまった。
開くんかい!
何これ、電力で開いてんの?
魔力で開いてんの?
魔力っていうことは、この島から貝王様とかが作り上げたこの魔力が消え去って、本当にただの島になった時に動かなくなるの?
っていうかこれ、ちゃんと中から出て来れる?
今でさえ不安なんだけど。
スマ子の変な進化の仕方とか考えるとね。
でも何かあったら助けてもらえるか。
……いや、魔力珊瑚持ってくればよかったか。
あれを持ちながら探検は結構きついな。
折れたら大変だよね。
海側に向けて、魔力も乗せて「助けてー!」って叫べば助けてくれるかな。
……海、どっち?
毅実子さんはどうなんだろう。
助けての言葉の意味ぐらいわかるよね。
ヘルプミー!って魔力を必死に送ればいいんだよね。
イカさん先生は助けてくれそうだけど、完全に大海の生き物。
うん。
……うん。
陸、見たことなさそう。
上がれるのかな?
大丈夫なのかな?
ケガしたらどうしよう。
海の生き物には傷つけられないけど、陸では簡単に草で傷がついちゃいました、もう病気です、とかなっちゃったらどうしよう。
難しいかな?
入んない方がいい?
迷いに迷って開いた自動ドアの真ん中に、蚊取り線香の缶を置いた。
円柱状になっているので、もしかしたら自動ドアで弾かれるかもしれない。
一旦置いて、すぐに目についた買い物カゴを持ってきて横に置いた。
自動ドアがウィーンと閉まりかけて、カゴで止まる。
それを見て大丈夫そうだと思い、蚊取り線香の方は持っていく。
もしかしたらね、何があるかわかんないからね。
蚊が化けて出たみたいなのが現れて、俺たちの眷属を殺すやつだ、とかって隠されたら困るからね。
目を離しちゃいけない。
外から見た時は中は全然明るく見えなかったのだが、むしろだから入ったというのもあったが、入ってみるとそこは普通に電気が煌々と光っているスーパーだった。
何故?
人が来ると電気がつくやつ?スーパーもそういうのあるの?このスーパーだけ?
それとも電力を節約しようとして?なんか監視カメラでもついてて見られてんの?
これも私が、ズボラに過ごしたい、快適に過ごしたい、そう考えたせい?
緑の中を歩きたいとあんなに思ってたはずだけれども、ついつい安楽の方向に流されたせいでできたものなのかしら。
だって、白服だって貝王様だって危深子さんだってスーパーの存在、多分知らないでしょう?
多分っていうか絶対知らないよね。
一番近くて白服だけど、街の中、全然スーパーありそうじゃなかったもんね。
なんかこう、建物の感じが……。
カコドは街が壁に囲まれているせいか、もうちょっとこう、高層の建物ばかりみたいな。
別に1階建ての建物も……あったっけ?
あったような気がする。する。 うろ覚え。
見た目は小さく見えたんだけれども歩いてみるとなかなか広いスーパーだった。
広いね。
どういうことだ?
しかも緑緑言っていたが、入り口に生花や小さな鉢植えを置いてある。
スーパーだね。
とりあえずさらに奥に進んでみる。
サッカー台っていうの?
あの荷物つめる台とかレジとかがある。
何台もあってもここに人類いないけど。
いや人類、私1人だけはいるけど。
へー、って思った。
何がへー、なんだかわかんないが、こちらの世界にも馴染んできて、どっちを普通だと思うのか、ごちゃごちゃなのだ。
スーパーって、馴染み過ぎて、懐かしいとかの感覚もないし。
ある程度の大きさのスーパーは、多分地方行っても品揃えが代わり映えしないんだよな。
特色はあるけども、パッと見はわからない。
ついつい肉はい次魚、野菜、調味料ね、みたいな。
そんなに感動とかないな。
やっぱり緑の中を歩きたいんだな、私。
さっき、勘違いかもしれないけど、あの自動ドアが開いて入った時にふぁんふぁんふぁんっていう、なんて言うの?お客さんが入ってきた時の音みたいな、あれ。
あれが鳴ったんだ。
ピンポーンて鳴るところもあるけどね。
電力どうなってんの?
考えちゃダメだ。
ベースが向こうの世界すぎて、貝王様に聞いてもきっと謎が解けない。
おかしいなあ、意外とテンション上がらないぞ。
ちゃんと新鮮そうな食べ物がいっぱい並んでいるのに。
食品であって、完品が並んでないからかな?
弁当コーナーとかないのか?
もしかして入り口を開けちゃったから、動物とか鳥とか入ってきて荒らされるかな?
森があるっていうことは、だってネズミとか多分いるでしょう。
虫の声聞こえてるし。
ん?そういえばセミの声って聞こえたっけ?
あれ?……今は夏だよね?
うん、もういいか。
外に出て確認しよう。
今日はセミは聞いてない気がするが。
まあ歩いてて気持ちがいいぐらいだからね。
セミがなかなくてもおかしくはない。
とりあえず店内を一周しようとすると、ピンポンパーンとアナウンスが入った。
何だ?と思ったら、自動音声なのか人の声なのかよく分からない声でこう言われた。
「お客様、本日はご来店いただき、誠にありがとうございます。
ただいまのお時間、ステーキが焼きたてでございます。 是非ご賞味くださいませ。」




