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一人探検隊サチコ

 

 私が聞いたんだけど、なんかイカさん先生が思い出迷子になってるみたいだから、小さく「いってきまーす」と声をかけ、そろそろと窓を閉め、家を出た。


 鬼海子(きみこ)さんの気も逸れているという、絶好の機会だ。

 きっと神様の「今のうちに出かけなさい」というオボシメシだろう。

 どこの神様だろう?


 外は風があるからか、結構涼しい。

 いや、涼しいという感覚はなく、晴れて風が気持ちいい。




 絶海の孤島は初めてだが、結構湿気は感じない。

 沖縄に行った時は、わりと湿度高いな、と感じたんだが。



 腕を伸ばして進行方向に蚊取り線香を持ち、煙を燻らせて歩く。


 前方から蚊が突進してくると思ってるわけじゃないが、なんとなく。


 魔法で蚊が来ないバリアとか出来ないかな?


 昨日さしてきた奴はやっぱり、向こうの世界から来てるよね。


 この世界になったこの島で、世代交代していくんだろうな。

 パワーアップしないといいな。


 食べ物じゃないけど、この蚊取り線香を使ったんだから、使った分が星で増えてくれないかな?


 海に来てからの、台所に残ってる食品見るかぎりは、思ったよりは減ってない、くらいで、完全に消費した分の補完をしてくれるわけじゃないんだよな。


 ファーストカーサフクダも行ったことがないけれど、そもそも自分が住んでるカーサフクダも、向こうの階段とか上がったことない。


 けれど島ができて、全貌がわからないからこっちは後回しにしよう。


 すぐに蚊にさされるような時間帯になるからね。

 行って戻ってこないと。

 深追いしないようにしながらね。


 単純に考えれば道路とかないだろうしね。

 あるんだったらいいけど。

 どうなってるかもわかんないから、とりあえず見に行かないと。



 昨日うろうろしたのは本当にこの建物の周辺なのだ。


 ふんふん、ここ街道になっていた、すぐ前の通りね、とか見ていた。


 思ったより草が生えてないんだな。

 刈り取ったか、元は踏み固められてたみたいにちょっと草丈が低いなあ、みたいな感じ。


 このまま行ったら虫に刺されるかしら?と思って見てたら、そもそもその段階で、蚊に刺されてたっていうね。


 だから、森みたいにあるな~と思ってるけど、ちゃんと見なかったんだ。


 今日は頑張って歩きましょう。

 本当は、海沿いの方を行った方がいいかなと思ったんだけどね。

 そんなに砂浜とかあるかとか、見てなかったからさ。

 単に、本当に森がある島だな~みたいな感じで眺めてた。

 もっとちゃんと見とけばよかったな。

 疲れたんだよね。

 記憶がちょっと曖昧なんだ。


 まーいいか、とりあえず行きましょう。


 そんなに危なくないとは思うけどね。

 行けそうなところをね。


 ちゃんと靴下ばっちり履いて、ズボンと靴下の間空いたりしてないようにしてね。


 ただのスニーカーだけどね。

 本当はアスリートみたいな、ごっつい靴とかがあったら良かったけど。

 そんな登山靴みたいなやつないんだよね。


 冒険用の靴って何て言って言ってんだろう?

 トレッキングとはちょっと話別だよね。


 まあいいや。

 冒険っていう言葉自体ですごくなんか、中二病 よりずっと前の小学生、みたいな感じ。

 こんな言葉が出るくらい、童心がうずいているのだろうか。

 はっきり意識が確認できるアラフォーサチコは、虫に刺されたくないのだが。


 街の中に大木もある公園があれば目立つ。


 だが正直、緑しかないと、どこが公園なんだか何だかもわからない。

 荒れ果ててないな、っていうぐらいかな。


 歩きやすそうな、というか歩けそうな、草丈の低いところを行く。


 落ち葉みたいなのが積もってるように見える。

 落とし穴とかあったらどうしよう。

 こういうのって、その辺の気の棒を拾って、前方を叩きながら行くんだよね。


 私もう、蚊取り線香を持ってて手が空いてないな。


 いや、片手は空いてるんだけども。

 これ完全に両手でやってたら危ないよね。

 蚊取り線香、どのみち体の位置まで下げなきゃいけないしね。

 そうじゃないと前方を叩けないから。

 落とし穴とか沼とか崖とかないよね?


 こういうの、歩きやすい平坦な道と違ってすっごく疲れるんだよね!

 私はきっと、何十メートルも進まないうちに疲れて帰るんだろうな、とかなんかちょっと楽しくなってくる。


 すると。

 すごくあっさりと開けた場所に着いた。


 どういうことやねん。


 木と木の間みたいな、雑木林みたいなところに入ったつもりだったんだ。


 私がまだ散歩したことがない、近所の公園。


 保護樹とか、保護緑地みたいな、そういう感じなんじゃないのかな。

 多分。

 人が歩ける程度には手が入ってるけど、なんか八幡様とか、そういうのの敷地なんだと思うんだけどね。

 お社は道路からは見えなかったから、詳しくは知らないんだけど。


 私は、家の近くの緑って想像したから、多分それだと思ったんだ。

 自分は入ったことがないけど。


 でも、特に放置もされてないけど整備されていない、花壇とかじゃなく雑木林みたいなとこって、見分けつかないよね。

 そういうわけで自分が願ったにも関わらず、ここなんだろう?って思いながら歩いてたら、結構あっさり開けた。


 開けたっていうか、海の上から島を眺めてる時には、ただの森に見えたんだけど、明らかに人工物があった。


 お社じゃない。

 どっからどう見てもスーパーみたいな建物だ。


 ていうかスーパーだ。


 四角くって窓があって、ポスターみたいなのが貼ってあって。

 そんで車止めみたいな、四角いコンクリが見えてる。

 でもアスファルトは敷かれていない。

 ちゃんと自動ドアみたいなのも見えている。



 おかしいでしょ。


 おかしいでしょ、どうなってんのこれ。

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