表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/235

皆のおじいちゃん

 


 クジラさんたちは大きいので、そこまでの数は集まれないが、イカさん先生を逃がさないよう囲み、威圧するには十分だ。



 取り込む永流巣久白(ナガナガスクジラ)さんたちは、おそらく世界最大の生き物。


 寿命も長く魔力持ちは生まれないそうだが、知能が高く、海の生き物から尊敬される存在だ。


 後年生き延びてレベルが高くなる魔力持ちだろうと、弱く幼い時期には教えを受けたり世話になる。


 彼らはその長い長い寿命の中で、世界の海を一周するという。

  知能が高い上に、たくさんの知恵と経験を積み重ね、老成すると体が全て白くなる。

 久白(クジラ)の名の由来だ。


  生まれたての魔王に物を教えたり、世界一周する中でたくさんの生き物たちの世話をする。


 食物連鎖の輪から外れた魔王だったらともかく、 魔力持ちでもなく生きてる生き物がそんな役割をするなんて、私には想像もできない。


 少しずつその海域にとどまり、たくさんの生き物の成長を見続け、彼らは魔王より寿命の長い場合もあるんだそうだ。


 海の教師役のような、長老のような役割を担う動物は他にもいるけれども、ナガナガスクジラはその代表。

 大きくて目立ちやすいのもあるのだろう。


 はっきりとはわからないけれども、ナガナガスクジラさんたちは、群れで移動しているのか若い個体もいれば、真っ白な長老もいる。


 イカさん先生も貝王様も、幼い頃からそうしてその長老に教えを受けたようだ。

 来るとはわかっていた若者の暴走を、ある程度はクジラさんたちは黙って見ていた。 

 けれどもイカさん先生がやりすぎたので、叱りに来たというわけだ。


 取り囲まれて説教を受ける、若き日のイカさん先生。

 こんなに穏やかに、教え上手になるまでの間にはやっぱり、やんちゃをしてたのね。

 色々やりきったから、積み重ねてきたものがあるのね。


 穏やかで教え上手な人って、元々そういう人もいるけど、だいたい若い頃にやり切って満足してるからっていう感じの人も多いよね。


 あんまり突っ込まないけどさ。


 まあ世代によって、やんちゃが色々レベル違うけどね。



 イカさん先生、貝王様の先生、師匠?は真っ白の長老。


 イカさん先生は元々生まれた種族の、貝王様も生まれた時の姿はほぼ白で、そのままでもそう変わらなかったのだろうけど、輝くような純白なのは、オジイへの敬愛の現れかもしれない。


 魔力で変身出来るかわりに、というのは変だが、生き物という枠の中にいるので、本体はなかなか望んでも変化しないようだ。


 魔王は成長が早いが、例えば珊瑚の姿で生まれた魔王が魚になりたい、と思ってもなれないようだ。

 変化する事もあるようだが、それはナガナガスクジラ曰く「そうはじめから決まっていた」だけらしい。


 そう言われて納得しない場合もあるだろうが、ナガナガスクジラの中でもそう考える者はいて、実際に自分が経験していくと、先人の教えと一致するそう。


 稀有な現象でも、ナガナガスクジラの場合は年長者が聞いていたり経験していたり。

 結局、疑っても彼らが知恵袋なわけだ。


 イカさん先生と貝王様は、普段の意識に強くオジイの言葉や教えが息づいているのだろう。

 体に現れるほどの長い長い時間、ずっと。


 昔に教えられた内容によると、そうでなければ変化しないだろう、ということだから。


 貝王様の城化は、ずっと構想を練り、準備をして実行に移したのだ。

 まさかの異世界に影響が出たけどね。



 私が過去を読み取っている間に、認めたくない、認めたくない!と、どっかの仮面の男かまん丸いロボのようなことをわめいていたイカさん先生。


 徐々に、一緒に記憶をたどっていて落ち着いてきたようだ。

 若い頃、というよりももっと古い、オジイと幼い頃の自分との記憶に行き着いているから。


 先生の記憶は覚えている限り昔まで遡り、最後にふと、静かに向き合う映像が浮いてきた。




 生まれたところに帰るだけなんだよ。




 そうか、これが……お別れの言葉か。


 ナガナガスクジラは一生かけて世界中の海を回遊し、最後に生まれた海に戻る。

 一度旅立った海に戻る事はないから、二度と会えない。

 追いかけて自分が移動したら別だけれど。


 でも、生まれた海に戻る為に旅立つ、と言われたら、もうどうしたって二度と会えない。


 イカさん先生は目を逸らさないけど、この過去の記憶の中で、隣に貝王様がいるようだった。



 イカさん先生と貝王様の間には、魔力があって兄弟弟子で、みたいな特別な仲間意識があるのかな?


 兄弟みたい、というのとは別みたいだし。


 先生の大きさを疑問に思ってた時、実の兄弟?同時期に孵化した仲間は皆、とっくの昔に海のマナに還りました、というアッサリした感じだったから。



 別ればっかり経験する側になるんだね。



 現実の、現在のイカさん先生は、教えを忘れる事はずっとないけど、自分の感情含め記憶がよみがえって、少しボーッとしている。




 鬼見子(きみこ)さんは、ちょっと身を起こしたようで、目玉半分が浸かりながら、こっちを見ている。


 彼女が会った事のないナガナガスクジラの記憶が珍しいのかも。


 ナガナガスクジラは数が少ないのか、群れの場合が多いからか、同じ海域に頻繁には来ないようだ。


 そして何故か、魔王の生まれた頃や、魔王の教育役が出来るような高い知能の生物の成長に必要な時期に回って来るらしい。


 生まれた海から出発するのに、そのタイミングがちょうど合うのだとか。


 貝王様やイカさん先生がいるから多分、来なそうだが、忌深子(きみこ)さんの教育もして欲しかったな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ