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若者

 

 ついでに、魔力持ちイコールの魔法使いではないと思うけど、どこからが、魔法使いなのか聞いてみた。


 すると先生の答えはきっぱりさっぱり。


 わかんない。


 何てったって魔力持ちで魔法が巧みなのはイカさん先生が知る限り、この海域でわかりやすくいるのは貝王様ぐらい。


 わかりにくく、隠してる生き物もいるにはいるが、難しく細かい魔法を使う生き物は少ないみたい。


 自分たちに必要な魔法はそれぞれ違ったりもするので、魔力持ちが全員、魔法を使えるわけではない。


 それに大体はレベル、明確にレベルの数値がわかったりするわけではなくても、なんとなく自分より強いだとか、魔力の大きさの存在感などで、なんとなーくで判断されてしまうらしい。


 そして魔法だけがやたら巧みで、魔力量は自分よりレベルの高いものよりも低め、ということあんまりないみたい。


 よくも悪くもいっぱいだから使う、っていう方がやっぱり多いみたいだね。

 それで魔法に発展すると。



 人間だったら一生懸命勉強したり、古文書調べたりするみたいだけどね。



 じゃあどのレベルからが高レベルなのかというと、イカさん先生にとっては比較対象が貝王様ぐらいしかいないから。

 さらっと忌深子(きみこ)さん外されたな。


 まあそれはしょうがないか。


 年齢的に二人でいた時間が長いのは、圧倒的に貝王様とイカさん先生だもんね。


 そういうわけで比較対象は魔王しかいないから、わからない。


 そうね、魔王だからって全員高レベルなわけじゃないもんね。

 生まれつき高レベルだけどそれ以上は成長しない魔王がそこで今たゆたってるもんね。


 てか魔法使い、と言っているのは人間の言葉であって、他の生き物にとってあんまり意味がない。



 魔力持ちか、持ってない生物か。


 それだけだ。


 他に、別けようとするんだったら魔王かそうでないか、ぐらいだそうだ。

 確かにね。


 俺か、そうでないか、みたいなやつか。


 己見子(きみこ)さんは、完全にそれだね。


 自分か、その他大勢か。


 貝王様もイカさん先生も大勢に分類する、凄い。



 正に生まれた時から天上天下唯我独尊。


「キミコに非ずはこの海の生き物に非ず」とか変な事言い出したらどうしようか。


 成長したと思ったら、してなかった鬼海子(きみこ)さんだが、これ以上成長されるのも怖い。

 方向性的に。



 まぁ、彼女は予想の斜め上をいつもいくので、心配してもしょうがない。




「イカさん先生、人間は魔力があるほうが偉いみたいです。海もそうですか?」


 貝王様、イカさん先生からは、そういう意識を感じないが、どうなんだろう?


 弱肉強食の世界で階級意識どころじゃないとは思うが。



 うーん、と先生はちょっと考え中。


 キョロッとするお目めがかわいい。


 同じく巨大でも、危視子(きみこ)さんとの違いは、目だけかそうでないか、その他にこの親しみやすさが大きいと思う。




 うーん、と先生が悩み悩み教えてくれた内容によると、海では別にそう言った上下の差別はない。

 ないにはないがどのみち戦ったら、魔力持ちの方が強いから、魔力持ちの方がなんとなくでかいツラをしていると。


 へー!



「先生もでかいツラしたことがあるんですか?」


 そう何気なく問いかける。

 するとイカさん先生は、ぎょっ!としたように 目を見開いた。

 というか体がちょっと動いた。

 飛び上がった、という程でもなく、揺れた、かもしれないが、どのみち海面はざぶーん、と音をたてた。



 流れ出る、流れ込んでくるイカさん先生の過去。


 魚には魚の道というものがあるらしい。

 獣道みたいに、同じところをどうも通るという習性のようなもの。

 散歩するコースなのか、エサを探せるシマなのか何かが、決まっているみたい。


 それはその魚たち同士しかわからなくって、他の種族には観察したり調べないとわからない。

 水の流れの関係でそこしか通れないのか、どうなのかはよくわからないのだ。



 先生の意識の中だと、魔力持ちは、どうもある程度の魔力量のレベルが上がってくると、食事の必要が極端に減ってくるらしい。


 そうしてくると遊んだり、自由に泳いだり、競争したりという時間が増える。


 そういう魔力持ちの若者たちが、一定数のレベルに達すると訪れる、解放期というものがあるらしい。


 成人したらはっちゃけちゃう、みたいな感じかな?



 オジイに聞いてはいたけどまさか自分もやるなんて、と恥ずかしがって何やらもじもじしているイカさん先生。

 足がふよふよと、よくわからない方向に色々持ち上がっている。

 とっても恥じているらしい。


 しかし 頭の中に流れ続ける イカさん先生の若い頃の暴走は止まらない。


 なんで魚道?と思っていたら、若い、今より若い今より少し小さいイカさん先生、なんとその魚が通れなくなるとわかっていてわざわざ一番狭くなっている魚道に石を積み始めた。

 

 ちょっと可愛いかもしれないけど、どうなんだろう。


 元東北民なので、小さい頃恐山で真剣に石を積んでる人を見てたので、なんかちょっと。

 あれは親しい故人の供養の為に積むものだから。

 真剣に積んでる人の横でうまく避けて歩けなくて、ガラガラ崩したトラウマが。


 それに賽の河原みたいだし。


 ネイチャー遊びをしているように見えなくもない。

 いや違うよね。

 これは悪さを分かっててやってるんだもんね。


 ちょっと可愛いんだけどさ。



 案の定、通れなかった魚の列が乱れて、一匹特に離れたお魚さんがウツボみたいな生き物に食べられてしまった。


 ……ちょっと。

 先生?

 これホントにワルじゃないですか?

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