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高齢者

 


 ……ずっと、掴んでいたの?

 いや、先生ずーっといたの?


 この光景、なんだろう?


 ぞんざいに扱われているように見えてたけど、もしかして「高い高ーい」とかやってるような感じなのかな?


 貝王様やイカさん先生にとったら、魔王だけども赤ちゃんつうか幼児、みたいな扱いだもんね。

 なんかこう。


 危視子(きみこ)さんはこれ、遊んでもらってるのか?


 うーん、お邪魔?


 先生は私が食べ終わるのを見届けるためにいたとかじゃないよね?


「えーと、お邪魔ですか?大丈夫ですか?」


 とりあえず 聞いてみる。

 本人に聞くのが一番だね。


 イカさん先生は、くるっと振り返ると、べしゃんと毅視子(きみこ)さんを落とした。


  えーー!!いいの、あれ?


 遊んであげてたわけじゃないんだ。

 鬼見子(きみこ)さんはいいのか。

 それで怪我はないのか?そう思った。


  黒い汚髪姿の毅満小(きみこ)さんは、ちょっと楽しいという空気を感じた。

 アトラクション感覚?

 落ちるのが楽しいの?

 それとも波間に揺れるのが?


 そういえば、あなた海面に目ん玉だけ出して漂ってたもんね。


 髪しか見えないと殺されて浮いてるみたい。

 そりゃ窒息しないだろうから、気にした事ないんだろうけど、その姿は止めてほしい。



 とりあえずマジで無駄な心配だった。



「えー、先生。今ちょっと大丈夫だったら、聞きたいことがあるんですけどもー」


 ウンウンとうなずくイカさん先生。 優しい。


 両端足で丸~、とか作られたらどうしようかと思った。

 意外と出来そうだな。


 意外、ではないな。やりそう。



「えーと、この白い箱はですね、人間の住処でして。

 私以外にも結構人が住んでいたはずだったんですが、こっちの世界に来たら私1人だけでした。


 同じような箱がまた出来たんですけれども、これって人間は元々いたはずで、今はいないんでしょうか?


 それとも衝撃で死んじゃってるんでしょうか?


 たくさん貝王様たちも含めて、マナや魔力をいっぱい流し込んだから、もしまだ人がいて、さらに死んでても、1回死んだ後でも起き上がって動き出しちゃったりとかするんでしょうか?」


 何これ、正しい?

 私の心配を具現化する言葉として正しい?


 わからん。

 どうしたらいいの?


 心配事を頭の中で必死に思い浮かべながら言う。

 勝手に垂れ流しになるから、頭の中のこの映像が……イカさん先生の脳裏に行かないかな?


 言葉がね、うまく使えてる自信ないからね。



 ちゃんと伝わったのかどうなのか、ただでさえ巨大なイカ先生の、まん丸お目めはクリクリクリー、と大きく見開かれた。


 驚いたイカさん先生の、感情が流れ込んでくる。




 人間って死んでも動き続けるの!?





「違います。」


 常識通りで良かった。


 こんなの聞いた私が悪い。


「すいません、人間も命は一つです。死んだら終わりです。もう動きません。」


 しどろもどろで、今まで魔法は物語でしか知らなかったから、向こうの常識とは違うのかと思った。

 向こうは星もなかった。

 向こうの世界で、星は夜空の星でしか存在しなかった。

 向こうにないものが色々あったから、何でもアリかと思っただけだ。


 と、説明する。



 ついでに誤解を与えたゾンビーについても。

 単なる物語ですよ、と。


 人間は、多種多様な娯楽を作るんです。



 へー、となかなか興味深そうに聞いているイカさん先生。


 端の足を顔のあたり?目より下に当てている。

 人間でいえば口元あたりに足先をチョンと乗せて。

 ……イカの口ってどこだっけ?

 実家で捌いてんの何度も見たはずなのに、覚えちゃいねぇ(泣)



 私にとってはこの姿こそ、異世界そのものだが。


 ドラマ見すぎて演技系オネエサン仕草が()()()()しまったオバチャンみたいな、高齢者魔法使い巨大イカ。


 高レベルの魔法使いに高齢者がいるのか謎だけど。

 主さんが魔力いっぱいだと体元気みたいな事言ってたな。


 年齢という概念が(多分人間は別だと思うが)ないなら、老化そのものがないのかな?


 数百才、千才だとまだまだピッチピチの若者!とか屋久杉みたいな事だったらどーしよー。


 脳内だけど、高齢者言ってたよ。


 ディスってるつもりはなかったんだけど。


 人間には想像外過ぎるだけで。



 イカさん先生は、どうも話しかけているようで、頭にふうっと浮かんできた。


 水中から、波打ち際?違うな、海面を見ている。

 この映像と、それから否定。

 どいう意味?


 イカさん先生を見ると、うーんそんなに浅くないんだよね、っていう。


 言い方に困る感じで。


 イカさん先生が、私の頭の近くまで足だけを持ってきてかざす。

 そうすると、スーっと頭の中に何か入ってきた。



 海の魔力のある生き物たちの、なんとなーくの認識として、


 若いと青は浅い、

 年寄りだと青は深い、要は黒に近くなる、


 そういう色のイメージがあるみたい。



 へー!


 人間だと青春とか白秋とか、季節になっちゃうけど、海の深さ!

 の、色か。


 色が重要なのか?それとも深さか?


 海の中にしかいないから、深さイコール色、なのかな?それもそうか。


 なんか面白いな。


 あなたはなかなかの深海ですね~、みたいな?


 いや、どんな局面でそんな会話になるのさ。


 でもそもそも海の生き物たち、みんなが魔力持ちってわけじゃない。

 魔力持ちの、年齢という概念がないレベル(とりあえず、そう呼ぶ)は、全員に当てはまるわけじゃないもんね。

 それはそうだよね。


 海の生き物たちの世代交代を見てたら、自分が 生きたら年数として、若い方ではないっていう感覚ぐらいはあるのか。

 なるほどなるほど。


 それを加味して、()()()()()()()と。


 ウンウン。


 ニコニコ顔のイカさん先生に、丸を貰いました。

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