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海の幸

 


 イカさん先生は会話が始まると、ウンウンと(うなず)き喜んでいた。


 そして忌深子(きみこ)さんを押さえつけてるのとは別の足に、いっぱいの物をジャラジャラと私に差し出してくれた。


 どうも海藻とか貝とか?みたいだ。

 イカさん先生の足にあると、めっちゃ極小に見えるけど私が、人間が食べるには十分な大きさのアワビとか多分ホタテっぽい二枚貝とか、その他もたくさんだ。


 お魚とかカニもピチピチ動いている。


 イカさん先生の足の汎用性が高すぎる。




 まさに海の幸!って感じ。


 すっごい豪華だね。



 んで、これは?


 うん?と思ったら「さ、食え食え」と言わんばかりに田舎のおじいちゃんおばあちゃんみたいになんかこう、差し出してきた。


 良い笑顔。 



 日本人、海鮮を生で食べますけどね。

 私は(さば)けないです。


 けどいいの?

 海の生き物が海の生き物をいっぱい差し出していいの?



 大変ゴージャスな感じではあるが。


 実はそこまで貝類好きじゃない。

 ホタテぐらいだったら、醤油かけて焼いて食べるの好きだけど。


 や、別に刺身だって食べるんだけどさ。

 赤身は好きなんだけど、トロとか白っぽいのとかは割と苦手なんだよね。

 しかも捌けないし。(重要)



 どうしたらいいの、私?


 このでっかい伊勢海老みたいな子にめっちゃ負けそうだけど。

 ハサミをカチャカチャ鳴らされてます。

 指、本当にちょん切れられないの?これ。



 どうしたらいい?


 一応、日本人だからね。


 こういうの見るとなるんだよ。

 おいしそう!

 すごいね!って。


 マジで絶対に、あのまま自分で働いてたら食べれないよね、こんなの。


 そう思ったらお腹が空いてきた。




 私もしかしたら昨日何も食べてなくない?


 どうだっけ?


 水一滴も飲んでなくない?


 顔洗った時には飲み込んだのか?



 ……顔、洗った?


 どうなの?


 でも。


 でもまさか!


 私が、


 私が飯を食わなかったなんて!


 私、下手したら1日に2回ビュッフェ行けるよ?

 その、私が!?



 混乱してると、背後の魔力珊瑚からも「たーんとおあがり~」という空気(魔力)


 何故、私を、肥育?


 ってゆーか、いいのか?海の生き物!


 私この海で食物連鎖に入らないよ、多分。


 元の世界では人類は(多分)最終捕食者だから。


 イカさん先生を前になんたる説得力のなさ。



 まごついていると、イカさん先生が、使ってない足を伸ばしてきて、私の左手の甲にそっと先を乗せた。


 大丈夫、美味しいよ。


 貝ごと食べるのがゴリゴリしておすすめだそうだ。

 はい。

 無理めです、先生。


 でも、好意で持ってきてくれたのだから、頂こう。

 出来るだけ美味しく。



 何とかこんとか説明する。


 えー、えー人間はーこちらのー人間の場合はわからないけれどー向こうの人間のうちの国ではー加熱をしたりだとかーなんだりかんだりしないとー結局消化できなくってー。


 とっても大変な大変なことになりますのでーそういうわけでこんなに食べきれないしー。


 悪くしてしまうしー。

 少量だけお預かりしてー(いえ)にあるものと合わせてーなんとかなんとかおいしくいただきますので。

 一部はというか、ほとんどはお逃がしになって結構でございます。


 必死。


 好意だからね。


 100%好意だからね。


 めっちゃ美味しそうだけどね。



 何とか失礼にならないようにしたいのだが、イカさん先生は、私が必死に伝えた結果、

「美味しいよ?いっぱい食べなきゃいけないよ」

 という疑問顔。

 傾ける顔のお目めがまん丸で可愛いよ。


 でもこんなに食えないよ。

 1つだけをいっぱいは食べれないんだよね。

 色んなのを食べたいんだ。


 困ったなあ。



 うーん、うーん、と2人で悩む風になっていたら、見かねたのか貝王様が再び声をかけてきた。





 お客様。

 魔力を使うのは体の土台が必要です。

 体の中が健全に回っていなければ、魔力もうまくいきません。


 しかし、体の方に欠損や病気などがある場合、魔力で保管してしまうのでもっと治りづらくなってしまうのです。


 健康を保つことが大切です。

 たっぷり食べてください。


 食べなければどんどん悪い方向にばかり言ってしまいます。






 貝王様が言っている時。

 なぜかほんの一瞬だけ、小さな可愛い天使のような幼い兄弟らしき子供達が見えた。

 もちろん頭の中にだけだ。


 なんだあれ?

 何の関係があるんだろう?


 貝王様達が伝えてくれるんだったら、フツー海の生き物じゃないか?


 まあ食べれなかったら、海の生き物だって死ぬんだろうけどさ。


 さっきのはどう考えても人間っぽかったけど。


 リアル天使でもいるのかな?




 はてー?と考えているうちに、イカさん先生が、遠慮してるとでも思ったのか、

 さあさ、どうぞ。

 と、出窓にでっかいエビさんとかを置き始めた。



 先生ーー!

 やめてー!

 私は勝てないから!


 シャッキンと切られる想像しか出来ない。


 ハサミをガムテープでぐるぐる巻きにしようとしたとしても、1匹ずつに時間がかかりすぎてそのうちに逃げていきそう。


 家の中にこっそり生息されそう。


 寝てたもんだったら物陰から出てきて、かまいたちのように切られそう。


 恐怖のおうちになっちゃう。


 怖いからやめてー。


 先生、私は勝てない。

 先生と違うから勝てない。


 先生、お願い、ストップ!


 必死に必死に、「ご飯いっぱい食べる」約束をして、貝数個と昆布?だけ受け取った。

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