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 嫌ですわ、聞いてらっしゃいましたの?


 とか人生で言ってみたいが……いや、言いたいか?

 昼ドラみたいだぞ?


 まぁ言ってみたい心境になったとしても。

 言い方がわからない。


 魔力の使い方、細かな制御然り。


 ()()という言葉の活用の不正確さ。


 ()での会話はないし、私は(頭の中でしか)独り言は言っていないのだから。


 魔力で語彙力吸引出来ないのかな?

 どっからだよ。

 この世界の辞書とかからさ。


 あれ?辞書って語彙のための物だよね?

 頭の中でゴッチャになってるけど、辞書は言葉で、百科事典は物理的に存在する物体の情報集だよね?


 もうサチコは日本の常識を忘れつつあります。

 もう1ヶ月も海の上だもの。

 そんな経ってない?

 いや、そろそろ?






 この珊瑚?はお客様とお話しやすいよう、彼に入れてもらいました。

 これは魔力で作りましたが、元は(まれ)に海に()るものです。

 海の生き物に似て非なるもの。

 生きているのは私は見たことがありません。






 頭の中に、成長途中のようなこの色の珊瑚が思い浮かぶ。


 もの凄い吸引力でマナを吸収し、珊瑚とは比べ物にならない早さで成長する。

 それが止まると、今度は全くマナを貯めなくなる。


 動物以外、石も砂も水もマナを貯めるこの世界では珍しい物だ。


 そしてマナを貯めないかわりに、とても魔力を貯められる。


 私が魔力を放射している?ように、魔力も漏れるものならしい。


 それがこの魔力珊瑚?は定着よく、容量も多く貯まる。



 長く生きる貝王様でも、あまり見かけない貴重な物だ。


 今回は、ちょうどよくストックがなかった事と、緊急時に魔法が発動するように仕掛けをしたので、貝王様が魔力で作った。


 ほうほう。面白い。



 ところで、珊瑚?の辺りで貝王様の抑えきれない知識欲がにじんでいた。


 珊瑚とは異世界の海の生き物かな?気になるなーというワクワク感、というか。


 知識欲凄い。


 ホントに己深子(きみこ)さんと正反対だな。

 貝王様は、内心では陸や人間の知識にも興味があるが、海を離れるわけにはいかない、と考えている。


 学者が旅に出たがるみたいなものなのかな。


 私が自ら全てを発信し続けるせいか、貝王様も自分について、私に情報公開してくれている。


 例によって海の時間の経過がわからないが、千年単位か、少なくとも数百年は生きてるみたい。


 その貝王様が、稀と言うのだから、これも大事にしなくては。


 うっかり割らないように、どっか避難場所作るか。





 魔王キミコは壁を壊そうとした実績がありますから。






 実績って、利益を生む行動を言うんだと思ってたな。






 壁を弱らせる恐れがある、という程度でしたが、思いの外早く使うことになりました。







 鬼海子(きみこ)さーん、アンタ悪さ予測されてるよー!





 お客様の方から魔力を流せばすぐに繋がります。

 外部から壁に接触があった場合も繋がります。

 問題があれば、まず押し返す魔法が展開され、その後私も出て参ります。





 最強セ〇ム!



 コンコン。


 え?


 今、何か聞こえた?

 鬼海子(きみこ)さんが出現した窓から聞こえた?

 いやいや、鬼海子(きみこ)さんは……鬼深子(きみこ)さんはノックなんてしない!


 コン、コン。


 ノックの調子を変えた!


 学習が早い!


 狼?妖怪?それとも魔王?

 さすが魔王、知能の発達が早いよ、ちくしょー私はもう何一つとして発達しないよ体重だけだよ、何に擬態するのか魔王め私には遊びにくる海坊主の友達なんていないぞ。


 ビビってさっき大事にしようと決めたばかりの珊瑚にしがみつく。


 安心しなさい、と魔王製魔力珊瑚から伝わってくるが、間近で見てもほぁんほぁん白い光が波打ってる。


 貝王様、笑ってますか?

 ちょっと!

 遠くから草生やさないで!


 コンコンコン。


 三回ノックに変化した!


 次は絶対きっと声真似だ!

 自分の周囲の人に擬態するやつだ!


 異世界にも妖怪はいたんだ!


 もはや魔力珊瑚は、ベビーピンクと白の縞々模様くらいに、白の光の波打ち方が活発だ。


 何スか、これ?

 大爆笑?


 触れている手からは、穏やかに微笑んでいるような感覚が伝わる。


 どっち?

 貝王様が、魔力で漏れてる感情を魔力で演技して誤魔化してるの?

 私だったらこれ、二重人格にでもならなきゃ出来ないよ。

 貝王様多分、詐欺師のフィクサーとかモリアーティ教授とか出来る。きっと。


 開けますよ、という感覚が、これも手から伝わり驚く。

 すると、すぐに窓の鍵(?というのか)がカチャンと下がり、自動で窓が開いた。



 開いた窓の外には、イカさん先生がいた。


 まん丸なお目めで、どうしたの?という風に頭を傾げている。


 ご丁寧に、イカさん先生の体に対してだいぶ小さい窓から、ノックしたばかりの足も見える。



 ……あなたでしたか。



 ビビらせないで。


 普通に礼儀正しくしてもらっておいてなんだけど、人類は二階の窓から訪ねて来られるのに慣れてないの。

 そんなのに慣れてるのは少年漫画の主人公の中でも、とりわけストーカーになったら一発アウトな距離の近さに、隣家の異性の幼なじみの部屋がある(やつ)だけなの。


 あー、ビビった。


 魔力珊瑚に触れたまま脱力する。


 貝王様に笑われただけで終わった。


 何もなくて良かったけどさ。


 なんて朝だ。


 海賊よりマシだけど。

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