表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/235

珊瑚電話

 


 鬼海子(きみこ)さんはまだ動かない。


 しかしこっちが話しかけているのに、返事どころか向こうから用件すら言わない。


 どういうことやねん。


 ちょっとイライラしてきた。


 何てったって危視子(きみこ)さんがいるせいで真っ暗なのだ。


 己深子(きみこ)さん。

 あなたは、ただただ、じーっと見つめ合い2人で居るのが好きなの?

 そんなインスタントコーヒーとクリープみたいな関係がいいの?

 でもね、私コーヒーにクリープは入れない派なの。

 残念ね、私達合わないわ。

 牛乳はたっぷり入れるんだけど。



 膠着状態に陥っていると、私の背後の方が光り出した。


 振り返ってみてみると自分自身で出した覚えがない、自分自身の持ち物ではない物があった。

 光っているのはそれだ。


 姉ちゃんの物でもない。

 少なくとも。

 だって私が出していないんだから。


 どういうこと?

 なにこれ?


 それは今、光っているので全貌がはっきりはわからないけれども、枝珊瑚の塊のようだった。

 それとも小さい珊瑚1株?

 知らんけど。

 なんかすごい高そう。


 それが何やらパパラチアサファイアのように輝いている。

 パパラチアサファイアを実際には見た事ないが。

 ネットの画像とかで見た、ピンクとオレンジが入り混じった色の光、みたいな感じだ。


 と思ったら、その光が強くなった。


 どんどん増してくる。



 ……これは、魔力で光っている。


 魔力の波紋のようなものが伝わってくる。


 あれっ?と思ってるうちに、パッと、もっと強く光って消えた。


 室内は、ただの昼間の光が入ってきている。


 外を見ると、窓の外に鬼海子(きみこ)さんがいなかった。


 塞がれていた日の光が入ってきたんだろう。



 さっきの光は貝王様の魔力だよね。


 思い出したのか、魔力で頭に浮かんだのかわからないけれども、理解し始めた。


 “彼の足を入れていいですか”

 というのは、これか。


 どうも私が倒れそうになった時に、スマホをイカさん先生にとってもらったのに、また落としたみたいだ。

 それをまた先生が拾って、開いてる窓から室内に入れた。


  その後に、貝王様が作ったものを受け取って、これをイカさん先生が入れた。


 そして最後に、私を窓まで送り届けてくれた。


 ……イカさん先生の足、どこまで伸ばせるの?

 便利過ぎない?


 あとすごいね、これ。

 魔を退けるの?

 魔除け?


 それはあんまりか。

 でも魔王だし、正統な使い方?



 光がおさまった珊瑚は、ちょっと黄色味のある、かわいいピンク色だった。


 ボケ珊瑚?

 いや、桃色珊瑚か。


 それってもっと淡いピンクだよね。

 サクラ色っぽいと言うか。

 わりと白いと言うか。


 実物は例のごとく見たことないけど。


 ま、いっか。

 魔力の媒介してる時点で、知ってる物と比べるのは意味がない。

 そもそも世界すら違うし。


 珊瑚の種類自体、黒珊瑚、赤珊瑚、桃色珊瑚しかわかんないし。

 ん?待って。 

 血赤珊瑚ってあったよね?

 あれって誉め言葉なだけで、最高級品みたいなただの実態のない感じ?

 ルビーをピジョンブラッドと言ったり、サファイアをカシミールブルーとかってカシミール産じゃなくても言うやつ?

 真珠メーカーが、花珠です、とか謎の独自ランク作ってるみたいなもの?

 種類じゃなく?

 種類? 品種?


 わけわかんなくなってきた。



 それに媒介っていうか、魔法具そのもの?

 魔法具がよくわかってないんだけど。


 こういう生き物?

 まだ生きてんのかな?


 触って大丈夫?


 おそるおそる、触ってみる。


 が、寸前でパアーッと光だした。

 そんなに強い光じゃないが。


 えぇー!拒否?

 センサーでもついてたの?

 察したの?


 温度とかは直接触ってないが感じない。


 LEDルームライトゆめかわマリン珊瑚風?


 ゆめかわって紫系の色使えばいいの?


 これ違う?


 貝王様、これ何ですか?

 灯台にはちっさ過ぎると思います。


 いや待てよ?

 灯台が魔除けとは、異世界ファンタジーでは重要そうじゃないか?

 魔物による破壊を防ぎ、道しるべとなる、みたいな。


 魔王は知ってるけど、この世界の魔物は知らないが。


 ……貝王様が、そんなの私に渡すわけないな。


 下手したらイカさん先生が魔物に分類されるじゃないの。


 柔らかな光を保っていた珊瑚が、ふぁんふぁんと白っぽい光で波打つ。


 ん?


 これは……、




 お客様、よくお休みになりましたか?




 笑う様子の貝王様だ。


 毅深子(きみこ)さんを追い払った光は貝王様の魔力だったが、その後は感じなかったから油断していた。


 何が油断って、中2な妄想である。


 体の調子が良いもんでね。

(さっきは望まない暗闇でちょっとゲンナリしたがね)

 知識貧困な幅の狭い想像力が全開だったじゃないの。


 はい、腹引っ込めてー。


「はい、おはようございます。昨日は途中で寝てすみませんでした。」


 これ、カメラとかついてんのかな?





 大仕事でしたからね。

 これは魔力を通せば会話出来るものです。

 生き物ではありません。




 駄々もれだったー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ