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誤解

 


 貝王様は、笑っているようだ。




 わかりました。


 お友達を招くのは問題がないのですが、彼女の力のこともありますし、我々はあなたの安全を守る義務があります。

 できればお家に入らないお付き合いするように、一度話をさせてください。




 ありがとうございます、 貝王様。


 何から何まで本当に。


 まあ多分鬼海子(きみこ)さんを家に入れることはないけどね。



 貝王様は、自分にとっての海の仲間が拒絶されなかったのは嬉しいのか、笑っている。

 とても暖かな気配を流してくる。


 さっき私が笑ってるのかな? って思ったせいなのだろうか。

 どちらにせよ嬉しそうだ。


 まあ確かに。

 わざわざ引き離したいとは思わないかもしれない。


 安全上がどうなるかが疑問なんだよね。

 

 自分で言っといてなんだけど。


 ……いや、言ってないね、私。

 頭の中で考えてただけだね。


 さんっざんゴチャゴチャ脱線するのに、貝王様もイカさん先生もずっとじっと待っているのか。

 すいません。

 しかもその上、たれ流しですいません。


 果たして危海子(きみこ)さんに持てができるのか。

 望み薄。


 私も持てができない派だけどね。

 集中力と忍耐力と落ち着きに欠けます。


 私が忌身娘(きみこ)さんと相撲取れるぐらい強かったら話が別だったんだけど。

 いやそれは無理か。

 人として無理か。


  ワンチャン、イカさん先生だったら行けるんじゃね?

 魔王キミコと相撲。


 貝王様と気味子(きみこ)さんは無理だけど。

 大きさからして圧倒的に違うし。


  まあ大きさ以外にも圧倒的に違うんだろうけど。



 またまた脱線してると、貝王様はまた白い光がホワンホワン波うってもれてきた。


 イカさん先生はまん丸な目が、くりくりに見開かれている。


 え?何?

 発信する気はなくても、流れ出てるかもしれないけど、そこまで変な事考えた?


 イカさん先生は、ふよふよ近寄ってきて、端の足先で頬に触れた。


 魔王と戦うというその発想が想像を絶する、という驚き。


 それが伝わってくる。


 戦いじゃない!


「えーっと、神事なのはこの際無視で……えー、これは遊びなんです!故郷では皆、子どものうちに経験する遊びです!」


 過激っ子のレッテルを貼られないように必死に抗弁。

 ただでさえ、()()毅満誇(きみこ)さんと、魔力の質が似ていると言われてるのに!


 子どもの頃、相撲をした事ない人、ごめんなさい。

 でもきっと、物心つくより前につかまり立ちとかし始めた頃には人類相手以外に経験があるから!

 多分。知らんけど。


 スポーツという言葉は、私には概念が説明しにくいので今は出さない。

 元は武道だったものもあるし、精神性の説明が重い。私の脳には。


 永遠にこの世界でスポーツの解説をする日は来なそうだ。



 遊びです。

 遊びなんです!


 立場とか身分差とか、それなら関係ないでしょ?


 ってか相撲みたいに、体一つに勝つ為や怪我しない為に、技術とか色々な準備が必要な競技でも八百長とかあるの?


 あるか。

 昔から存在すればそれだけ、賭けられてきた歴史があるか。

 当たり前か。


 魔王相手に八百長もヘッタクレもないがな。


 魔力持ちかつ、年の差とかが圧倒的にある場合のみ、だろうな。

 そんな事が可能なのは。


 一回経験しちゃったら、それが全部、魔王の糧になるのかな?



 貝王様は、自分の前に白い光を作り出した。


 見ていると、今見えている姿よりもっと小さい、白い貝になる。


 それがスーッと私の顔の前まで移動してくる。




 どうぞ。




 そう()()()()


 今までは貝王様は、頭の中に自動で浮かぶようにしてくれていた。


 どういう違いだろう?


 不思議だが、警戒はしていない。


 どうぞ、と魔力で言われたのだから、指で触ろうか迷ったが、はい受け取ります、と意識してみる。


 一瞬つぶっていた目を開ければ、白い貝はなくなっていた。

 あ、あった。

 自分の中に見つけた。


 今のは『ナイ』と思ったから魔力が自動検索したみたいに、自分の中から発見した感じだった。


 こーゆー感じかぁ〜。


 自分の中の、白い貝を外見(そとみ)に見ていても仕方ないので、()()


 取扱い説明書みたいに、項目が並んでいる。


 私の頭の中は、いつもゴチャゴチャなので、人生初の事だ。


 頭の中で、ココを見ればわかる、とはっきりわかる。

 家電が止まった時に、取説置き場がはっきり意識しなくても思い出してるみたいな。


 それが、自分の頭の中に。


 凄い。


 貝王様が。




 そろそろですから。




 私が確認するのを待ってたように、貝王様の声がかかる。


 そろそろ?と思うと、バン!と大きな音がした。


 斬海子(きみこ)さんは、あの球体を破るらしい。


 もっとも貝王様の態度から、だいたい時間を計算してやった事は明らかだ。


 うーん、人の事言えないけど、大人と子どものような精神年齢差。

 実際の年齢知らんけど。


 そう考えたら、ふっと浮かんできた。


 どうも、貝王様の魔力取説の1ページらしい。

 自分で開かなくても、脳内とリンクして、勝手に浮かび上がる。


 へぇ。

 魔力持ちが情報が入りやすい、ってゆうのは、こういう感じなんだ。


 感心して開く。

 どうも私がさっき考えた魔王の年齢に関することらしかった。

 正確には魔王に限らないのだが。


 魔力持ちに年齢は正確ではないらしい。


 というか、年齢という概念がない。


 少なくとも貝王様の中には。

 陸の人類はどうだろう?


 経験によるものだから、生まれてから経った時間はそんなに考慮されないみたい。

 本人の中に降り積もった経験値みたいなものと魔力などで組み合わされるらしい。 


 何歳って言っても、つまりこちら(私にとっての今まで)の概念とは別みたいだ。


 経験、知識、それ等を合わせた、つまり能力。

 レベル、みたいな。


 日本語に当てはめようとするからか、難しい。


 年の取り方が特殊、ってなんだよ、って思ってたけど、うまい言葉が見つからないな。


 魔王キミコはビジュアルも変わんなかったから、わかりやすいが、私みたいなのはどうなるの?


 特別なスキルも実績もないが、社会人経験でしょーもない横領話聞いたり、同僚同士の不倫離婚話聞いたり、なんか疲れて薄汚れた経験って、どんなレベルなの?


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