生まれ
あんまり追いかけっこすると、魔王組に近寄ってしまうからか、イカさんは諦めたようだ。
私のななめ後ろにきて腕に端の足で触れ、あっちあっち、というように反対側の足で隅っこの方をさす。
はいはい先生、参ります、参ります。
ちっちゃなイカに連行される私。
想像した事もなかったな。
てっこてっこ二人(?)で歩く。
何故か近くにきた小魚やカニ達も、チョロチョロ続く。
イカさん先生、ホントの大きさはどちらですか?
って、大きい方か。
そうだよな。
魔法で私の安全を確保してくれたけど、イカさんエレベーターは特に必要な要素じゃなかったもんね。
城に入るのには、小さくなったほうが楽だろうけど、お迎えはどっちでもいいもんね。
いや、デカい方が楽か。
けっこうここ(海底)は、深いからね。
明るいけど。
いや、必要以上に魔力を使わないように、一部でもくっついてる必要があったとか?
魔力を当てすぎたらいけないから?
そうするとデカいサイズの方が楽で、……いやいや、イカさん先生は元々デカい。
いや、デカ過ぎでしょ?
大王イカ?
毅御子さんよかデカいよ。
デカけりゃ魔王なんじゃないけど。
元々デカいアンド魔力で大きくした、これか?
だって大王イカは、北の海にいるんでしょ?
ここ、珊瑚生えてるもん。
隅っこについて、止まった。
イカさんは私の前にふよふよきて、一回体がちょっと膨れて戻った。
両端足を前で組む。
フーッ(ため息)、もー、ホントに〜。
と、いう感じ。
おやおや、……どれだ?
イカさん先生、不肖の弟子ですみません。
どれが、フーッ(ため息)?
イカさん先生、ちょっと頭を傾げ、組んだ足を一本、あご(が存在するとしたら、ここ)の辺りに添えた。
フム、という考え事のポーズですね。
足を組んで手を顎に添え……手?
手……?
呆然とどっかに流れ出しそうになる私に、白く長い足をフリフリして意識を向けさせるイカさん先生。
は!先生!
先生!お体は大丈夫なんですか?
手はありますか?
ぺちん。
ずいぶんと柔らかいデコぺちんされました。
目線より上に浮かれると、こう、ナデナデされてる気分。
ええ。気を抜くとしょうもない事ばっかり考えましてね。
もうちょいと、頭の良さそうな事を考えてみたいですよ。
でも、頭の良さそうな事を考えつけないからそこで思考が停止してしまう私でした。
あ、今は何も魔力をのせないぺちんだったけど、気を抜いたって事は、また頭の中が垂れ流しだったんだ。
こくこく。
イカさん先生、頷く。
すみません、むしろ発信してました!
そんでそんで、先生、どっち?
でっかいの?ちっさいの?
ぺちん。
今度は鼻の頭にきました。
ぺちん、いただきました!
今度は教えてもらえた。
イカさん先生は生まれつき魔力持ちで、生まれた時は私がよく食べてる種類のイカさんサイズだった。
ある程度魔力が大きく生まれると、それだけで元々少し知識があって生まれるらしい。
小さな頃は、生き物は本能にインプットされてたりするから、そこまで魔力なしのイカさんとの差はなかった。
しかし魔力持ちは、情報が入りやすい。
海にはたくさんのマナがあるし、漂う海藻に魔力が含まれていたり、成長する要素がたくさんあるのだ。
あ、そうか。
魔力持ちは経験で成長するんだ。
だから特に攻撃的で戦闘経験を積まなくても、生き延びればでっかくなっちゃうらしい。
ちなみに同じ頃に生まれた一応は同族(ちょっと無理があるが)のイカさん達は、皆さん寿命を迎えられている。
結論として、でっかいが本体。
ちっさいのは魔力で変身中みたいなカンジらしい。
極端な話、タコになろうとカニになろうと変わらない。
誰だかわかんないだけで。
はーい、はい。
「イカさん先生、カニさんに変身して横歩き出来るんですか?」
…………。
先生、目をそらさないでください。
まぁまぁ、それは置いといて。
と、感情豊かに両端足を動かすイカさん先生。
人の仕草が得意ざんすね!
イカさん先生は、両足でそっと小さな白い光を作り出した。
それを、そーっとそーっと私に差し出す。
そんな危険物みたいの、私受け取るん?
えー、なんかコワッ。
でも、とりあえず受け取る。
サイズ的には指でも掴めそうだけど、そんなに慎重に扱われると……。
コワイので手のひらに置いてもらい、意識を集中する。
内側へ内側へ。
外に危険物を発信したらアカン。
すると、魔王組についてだった。
この海域の魔王、貝さん。
貝さんは優しく、この辺の生き物にとって、平和だった。
魔王がどんなに苛烈でも、生き物は基本逆らえない。
とても慕われ、魔王である事を歓迎される貝さんは、正しく海の魔王。
なんとなく海王様、という感じ。
貝さん貝さん言ってたから、私的には貝王様、かな?
貝の城だし。
その後、珍しい事に同じ海域にまた魔王が生まれた。
魔王はマナの集まりで、自然発生だから、基本はある程度の範囲に一人。
二人誕生するのは、とても稀。
そして二人誕生する魔王には、必ず異性である、という理がある。
決められてるとかではなく、自然そうなるんだそうだ。
魔王が子孫を残す、唯一の方法。
それが魔王同士の結婚。
そう、キミコさんは気味(悪)子ではなく、……いやそれはそうだけど。
魔王は魔王でも、
海のお妃様。
妃海子さんだったのだ。
……また投稿出来てなかった(T_T)
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