魔力の使い方
毅海子さんは領海侵犯してんの?
地域に一魔王かと思ってた。
もしかして、スマ子の情報が違う?
それとも海が別?
『大変な目に合わせ』というのは、この城を作った事かな?
いや、作ったのは作ったが『貝さんが自分本体を作り変えた』が、正しいね。
そのためにカーサフクダがこっちに来たんだ。
巻き添えで。
海上に起こった事もわかるなら、私だけが来たのかもわかるのかも。
誰かがいても、別々に手紙で招待されてたら知らないままなんだし。
疑問が溢れすぎ。
じーっ。
は!イカさん。
はーい。(右端足)
イカさんは、私の考えが読めるような行動をとる。
鬼海子さんよりずっと、会話しやすい。
私もさっきから、自分の中で揺らぎを感じる。
視覚でも聴覚でも触覚でも嗅覚でもないもの。
音とかの衝撃とも別だ。
今日は毅御子さんの、体にビリビリくるような大音を何度もくらったから、比較しやすい。
今日一日で何度か、体に理解させる魔法を使われたからかもしれない。
多分これが、魔力を感じる事なんだ。
慣れたら私も、使えるのだろうか?
「イカさん」
なんだか考えるだけで通じているが、確認しない事には始まらない。
が、その前に。
「貝さんは偉いね。優しいんだね」
イカさんは情報だけ私に伝えようとしたが、貝さんへの敬意や温かな思いがどうしても端々に滲んでいた。
イカさんの真ん丸な目がニッコリ笑う。
ウンウン。
嬉しそうに頷く。
こうして、リアクションしてくれるとわかりやすい。
でも、意味が直接伝わるのもわかりやすい。
詐欺師にやられたら、騙されそうだけど。
これ、共感しやすい方法なんだよな。
でも、イカさんが相手だから今は会話しやすいだけだと思う。
他の方(人じゃないと何と言ったら良いのか)だと、そうはいかないのだろう。
「イカさんは、私が何を考えてるかわかるの?」
イカさんは、また外側の足を顔(の辺り)にあてて、考え込んだ。
あれ?ちょっと長いぞ?
むしろ
「私の頭の中が垂れ流しなの?!」
イカさんは思いっきり私の反対側に目を反らした。
同じ側に頭を傾げ、長い足を頬(?の辺り?)にあてた。
うーん、えっとねー、ちょーっと説明が難しいかなー?
そんな感じだ。
言いづらい事に言葉を濁す同僚みたい。
そんな……。
「い、イカさん!私そんなに垂れ流し?誰にでも垂れ流し?」
まーまー、というように、さっきふよんふよん浮きながら少し開いた距離を詰めながら、イカさんは両外側の足で私を宥める。
近くで、うーん、とちょっと考えてから私の腕にチョンと足を一本乗せた。
うん?
さっきと同じく、頭の中に映像が浮かんだりしない。
ん?何?
イカさんを見下ろすが、右足を乗せたまま、左足でどうぞどうぞみたいに持ち上げる仕草をする。
何だい?
何も浮かんでこないけど、と思った頃、小さな白い光を見つけた。
どこに?っていっても自分の中に、としか言いようがないが。
さっき映像が広がった、入ってきた時のように、その光に集中していると、自分の中にパッと光が広がった。
むしろ光の中に自分が入ったように感じた。
私っぽいものを俯瞰して見ている。
すると見えるのではないが、何というか、風車みたいに自分の四方八方に魔力を発していた。
……なんじゃ、こりゃ。
魔力を知覚(というのか?これは)すると、スルスル理解出来る。
魔力があって使う、というのは思い描く事。
頭で考えても、魔力を使うか使わないかは自分で制御しなきゃいけない。
イカさんが気をつけている事は、魔力を普段のせないように、スイッチオフにしておく事。
そうじゃないと、考えた事、見た事全てに魔力がいってしまって、自分にも周りにも良くないから。
私に魔力で伝えるのを躊躇したのも、魔力がない生き物や少ない生き物に魔力を当てるのは、悪い影響が出るから。
私が魔力持ちでも、容量次第で体を悪くするみたい。
イカさんは魔力持ちで体も大きく、自分より確実に魔力がある容量の大きな生物は魔王くらいらしい。
絶対じゃないが。
イカはイカでもちょっと、同じ種族というには微妙みたいだ。
私に悪影響がないように、魔力のキッカケくらいにとどめて、自分で情報をキャッチ出来るようにしてくれたようだ。
今、イカさんちっさいけど大丈夫かな?
なんとなくだけわかった魔力で、小さく絞って伝えてみた。
ありがとうございます。
いった?デカい?
心配だったが、イカさんはニッコリする。
両外側の足でパチパチと合わせた。
良く出来ました、の拍手らしい。
やったね、初魔法。
でも魔力持ちはイカさんと魔王夫妻(?)しか知らないので、他では使いようがないが。
そんでそんで、あの二人、何やっとーと?
イカさん先生、教えて?
イカさん先生、またも目を反らす。
ねぇねぇ。
物理、イカさんをちょんちょんしてみる。
海の魚に、人間の手は熱いというけれど、多分ちょびっとなら大丈夫だろう。
押されて流されちゃいました〜、みたいに、ふよんふよん逃げ腰のイカさん先生。
ねぇねぇ。
ちょんちょん。
詰めて追いかける私。
良く見たらお魚さんだのカニさんだのが、こっちをオロオロ見ている。
大丈夫。
イジメじゃありません。




