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海へ

 


 奇魅子(きみこ)さんが何喋ってるかわからないのは今更なので。


 ……いや、私等、会話、初めて。


 よくウソでも友達と言ったもんだな。


 ……いや、誰にも言ってないか。


 コミュ障プラス1人大好き人間の悲劇。




 とにかく


「連れてってください」


 力なくイカさんに言った。



 イカさんは、了承なのか、さっきと同じく横に頭を傾げた。


 いややっぱり、どーしたのー?と一緒に見える。


 私がうなだれてるから?


 えぇ、探偵役に何から何まで謎解きされて、刑事さんに言う犯人みたいだね。



 でも、寝起きだから待ってね、紳士。


 異世界のお出かけは寝起き40秒で支度が慣例になっちゃあ困るのよ。


 これは外に着てけるワンピースじゃないのよ。

 これ実は横がちょっと破れてんのよ。

 あと寝て起きると汗まみれなのよ。


 他にも色々さわりがあるから、だから


 ってちょっと待って!


 2,3本の足は近くにいたが、他の足もニョロニョロ寄ってきた。


 ナ○シ○じゃないから!その上に乗ったり出来ないから!



 鬼見子(きみこ)さんも、なお一層キシャーしている。

 キシャーという程、高い音じゃないけど。


 スーパーヤサイ人みたいに逆立つウネウネ汚髪。


「いや、あの少し、少しだけ待ってください、すぐ!すぐやるから」


 海では準備とかないのか!

 ハダカか!

 そうか!そりゃそーだな!


 でも顔を洗うくらい……ネコじゃないんだからやらないか!


 連れてって下さい、言ったの私だもんね!


 警察に背中を押されながらパトカーへ向かう犯人はトイレ行きたい時どうすんだ?


 謎解きの場所は景色で選ばれる。

 知らんけど。


 イカさんの足は金色ノ野には成らず、ニュルニュル集まってきた動きのまま止まらずに、カゴの底のように編み始めた。


 あっという間に、白く光沢のある巨大菓子入れカゴみたいになる。


 これに乗っても気球のカゴのようには見えないし、空飛ぶカゴもちょっと……。


 既存の乗り物に例えても何の意味もないのだが、なんか、こう。



「靴だけは!ホントにすぐなんで!」


 ニュルニュルの上、嫌。


 見てないですぐ行って戻れば良かった。

 私、だいたいこういう風に要領悪いんだよな。


 急いで玄関から靴を持ってくる。


 前回のお出かけよりヒドいな。


 顔洗ってないし。


 誰も私の顔なんか見てないよ、とか言えたのは東京で、だ。


 さすがに顔洗わないで外は出てないけど、化粧してなくてもそう思ってたんだ。


 今回むしろ招かれたんだけど。


 何が正解?


 スマ子を掴むと、もはや両手が塞がった。



 イカさんの足が、全部カゴになっているので、両手で受け皿しながらずっと待たせたみたいになってる。

 これ以上はきまづい。



「お待たせしました」


 人類の方が文化捨ててる現場。何故。


 しかしうまく言い出せない。よょ(涙)


 窓から足おろして靴を履き、すぐにスマ子を掴んだ。

 忘れたら大変。


 あのお手紙以外、私会話はコヤツ頼りなので。



 出来るだけソッとイカさんの足カゴに飛び降りた。 ……抜けたらどうしようかと思った。


 イカさんは一回瞬き。


 あ、

「よろしくお願いします」


 言い忘れてた。ごめんなさい。


 イカさんは二回瞬き。


 おっけー、みたいな事かな?



 ヒュン、と音がしたけど、特に何も起こらない。


 しかし、すぐに海に潜り始めてわかった。


 白いイカさんの足カゴより上の部分。


 私にとっては側面、頭上を、オーロラ色というか虹色というか、時折キラキラする光がある。


 透明だけど、薄っすらオーロラ加工みたいな色。


 日の当たり具合か、キラッと綺麗だ。


 青空を合わせて、とても素敵。




 でも窓は閉めたかった……。


 運動神経が不自由な私が、飛び降りながら後ろ手で全開の窓を閉める、なんて試そうとも思わなかった。


 イカさんのカゴから何とか手が届くかと思って、閉める気だったんだけど。


 ちょっと待って、ばっかり言っても仕方ないよね。

 やっぱり時間をください、ってちゃんと言えば良かった。


 私は職場でも、その他の人間関係もそうなんだよな。

 ヘタ。

 後から、言えば良かった、ばっかり。




 鬼海子さんは音を出すのをやめて、一緒に潜り始めた。


 あの音、威嚇以外に抗議もあるんだろうな。



 ナチュラルに海に潜り出したのに動じない自分、変な慣れ方した。


 なんか異世界の馴染み方がおかしい。



 私もどうせなら、魔法とかしたい。

 メラ〜とか、ストーンバレッタとか。


 ん?

 なんか違うな。

 なんかこう、石ころが飛んでくヤツで、こう……。


 ま、いいや。それは。

 海では使わんじゃろ。


 水が出せなきゃ意味がない。


 ウォーター、……ウォーター…………サーバーのわけないよな。


 スマ子はお株が奪われると思ってるのか、教えてくれない。

 本も翻訳してくれるのかと思ったら、内容とどう結びついて変化したか謎だから難しい、って言ってまだかかってるし。


 何も知らんで勝手にやるにはな。


 私が読んだ作品で、私が覚える程繰り返し出てくる魔法は、なんか攻撃系ばっかりなんだよな。


 家の中で出来ないし、奇魅子さんに当たっても困るし。


 ホントは私がやってみたいのは、空を飛ぶとか、視力良くするとか、肩コリ腰痛を消す、みたいなシンプルなのなんだけど。


 と、お!


 妙な考え事してたら、とうとう海に入った。


 青い!


 波間に光が揺れて綺麗。


 あれ??


 さっきまでのあんなに埋め尽くしてた海賊とその残骸は?


 綺麗過ぎない?海。


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