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海で2日目

 

 布団の中からこんにちは。

 二日酔いでもないのに、頭痛で目覚めた伊藤祥子(いとうさちこ)です。


 正確には布団の中ではありません。


 マットレスと封筒型寝袋の間です。


 どうでもいい?

 そうですか。

 ホント、どうでもいいよね。


 ホント頭が痛すぎて『昨日大海原で漂流したな~』とか『魔法あるんだ~、ってか姉ちゃんいないんだ~』とか『なんか巨大な目とか何あれ海坊主?アパートごと食われたらどうしよ~』とかどうでもいい。


 何してんの?昨日の私。

 暑いんなら水分とれよ。

 漂流しようがしまいが水飲まなきゃ人間死ぬんだよ。

 マジでウマシカよお前覚えとけコンチクショウ。

 何、繊細そうなフリして水一滴も飲まずにショック受けて、8月に冬用寝袋被って寝んの?

 脳ミソついてんの?

 東京は怖いとこだから令和ちゃん5月ですでに35度の猛暑投下するでしょ?

 え?

 海だった?


 なら尚更水飲めよ!!(尚更?)


 もうホントつらい。

 1人だけど誰か水ぷりーず。

 今ならギブみぃチョコレー!の気持ちわかる。いや、こんなセンシティブな話あかん。

 地獄の口が開く。

 すぐそこで。


 嫌だ、生き残りたい。


 オラそんな死に方イヤダ。

 誰だ。




 水。

 水と塩がほしい。

 海水少しでも飲めばこの痛みから解放されんのかな?


 誰かーー。

 オラに水をくれー!


 きのこかたけのこか迷ったとき、きのこ買うから。

 赤い気分のときでも今助けてくれたなら緑の蕎麦を食うから。

 だから助けてマジ。



 追い討ちをかけるように、私と呼応するかのように。

 海は昨日と違い、荒れて波のぶつかる音や、風の音が凄い。

 全く揺れていないのは不思議だが。


 大海原がそもそも人生初なので、この波が普通なのかはわからない。

 しかし晴れてても(外は明るい)こんなに音するのかな?

 するかも。

 昨日は完全に凪いでいたので、それが普通かと思ってしまった。


 祈っても好転するわけもなく。

 必死に四つん這いなのか膝歩きなのかとにかく水を目指してなんとか台所へ。

 目を開けてられる余裕もないが、見ないで進める訳もないのに不思議。


 でも謎も不思議も痛みから逃れられればそれでいい。


 なんとか水を飲み。


 塩を指でつかんで舐め。

 隣の砂糖も直接手を入れて取って口に入れて。(塩も砂糖も100均の計量スプーン一本ずつ入ってるのに)


 何度も繰り返し、フローリングの床に寝転んだ。




 しばらくして。

 寒い気がして迷い始める。

 風呂……いや、風呂はあかん。

 脱水状態になる。っていうかソレが今。

 そもそも風呂入れる元気ない。


 寒さ感じるほどに回復したか。

 いや、頭痛いです。

 ってか寒いって状態わるいよね?

 人類だからまだ熱要るよね?


 わかってたらすぐ床から離れないとヤバくない?

 軽くなくヤバいナウ。


 交通事故にあった人が、道路に転がって動けずに救急車待つしかない時、アスファルトが熱くて辛かったという話を思い出した。

 近所の人が毛布を持ってきて、アスファルトと自分のあいだに入れてくれたのをずっと感謝している、とも。


 私にも誰か毛布ください。

 下に敷いてくれたら、上は我慢します。


 神さま仏さま。

 今助かったら命大事に生きます、助けてください。

 お礼参りは行けないけど、多分、改めてます。


 いや動けやさちこ。だからお前はさち子なんだよ。

 幸子じゃなくて祥子なのよ、あんた。

 何度、しょうこ、って呼ばれたの?

 だからよ?

 後からとお化けは見たことない

 そう、村の知らんばばああに言われたでしょ?


 今動け。

 危ないのはお前なんだよ!


 辛すぎて意味不明な熱血が満ちなくては色んな意味で浮上できない。


 なんとか立ち上がった。


 そこから何ともならなかった。


 考える気力も再び尽き、立つので体力が減っていくので、もう布団に

 いや、マットレスと寝袋に戻った。


 最後の理性で、ペットボトルだけは持っていった。


 そこでまた意識がどどーん、と真っ暗にまっ逆さまに消える。

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