何故スムーズにいかないんだ
「公文書、役所等は共通語を使用すると思われます。」
何ぞ?
このカコドの街のある国、その周辺の国々で使用されている共通語。
それが元々はスマ子の情報源らしい。
もしやスマ子が盗撮か盗聴だかしてる研究機関もそれだろうか?
文字化けしていた『真実をうつす鏡』を思い出す。
ってゆーか、何故それを出発してから言うのかな?
他の人だって、ここは道だから皆無じゃないんだぞ。
「せめてお屋敷の中にしてよ。好きでやってんじゃないだろうけど、知らない振りしてもらってるのに」
「私はこの世界で唯一の存在。万能のスマホです。話し出したら近くの子どもが面白がって御主人から奪取するでしょう。私は子どもは嫌いです」
どんだけ自己評価高いんだよ、このポンコツ。
「いや、自衛の為風に言うなら人がいない時に話せよ」
ただでさえ暑いの耐えているのに、この状況でこんな馬鹿の相手する私ってエラいな、と思う。
こういうすぐ調子にのるところがスマ子に影響するんだろうか。
私の魔力を流し込んだからこんなお馬鹿のコになったんだろうか。
ってゆーか
「マスターはやめろ」
それどころじゃないのはわかるが、ディスられるままにすると舐められて本当に大変な時、何されるかわからない。
最近の大変な事はスマ子が引き起こしたけど。
とりあえず
「その共通語の、会話と、念のため読み書きも今と同じく瞬間翻訳みたいの出来る?」
主さん達との会話と同じように。多分お前の仕業だろ、助かります。
「可能です」
「んじゃよろしく」
どこまでお三方に聞こえているかわからんが、早く切りあげなくては。
立ち上がり、3人に向いて告げる。
「すみません、お待たせしました。靴紐は切れてませんでした。結び直したのでもう大丈夫です。」
靴紐アピール再び。
「良かった、では参りましょう」
安定の主さんの返答。
通行人に怪訝な顔をされても絶妙な近さでスルーしていた出来る男3人は、やはりツッコまず歩き出した。
あっちのグループが近くて遠い。
ポンコツをポンコツが補助するってある種の蟻地獄だ。
用のある建物には割りとすぐ着いた。
しかしここからが長いのだそう。
朝から順番待ちになるんだとか。重要度も話を聞いてもらえる順番に関係あるが、何時になるかわからない事が多いから。
だから早いのが1番良い、と。
ちょいちょい遅くしてすみません。
少し経った頃だった。
歩いていた時は平気だと思っていたが、汗というのは止まった時どっと吹き出る。
でも暑さの割には汗かいてない方かな、と思っていた。
そのうち、そんなに疲れていないのに息がゼイゼイし始めた。
熱中症を疑う気持ちと、こんな少し動いただけで?という信じられない気持ちがせめぎ合う。
時々、何か話しかけられた気がしたが、何故か、きちんと答えなければ、というような気にもならなかった。
自分の中をぐわんぐわんと何かが洗濯機のように回っていて、感情も思考も湧いてこない。
非常に遺憾だが、熱中症と思われる。
熱中症、何パターンあるんだよ。
こんなすぐにかかるなんて。
立っているのが辛くなり始めた頃、そういえばコップ1杯の水だけで動いていた事を、思い出した。
昨日、夜ご飯も食べなかった。疲れていて。
そういえば昼ご飯も食べてなかった。
お腹がへり始めて、肉が食いたいと思ったばかりに今もこんな目にあっているのだ。
グラグラし始めたら、ガシッと掴まれた。
私自身は力の入っていない姿勢なのに、全然落ちそうな気配もない。
肩なども掴まれて痛い、等もない。
凄いな、どうすればそうなるんだ?
と、思い、体調がすっかり良い事に気付いた。
あれ?
さっきまで本当に気持ち悪かったのに。
今思えば視界すら効いていなかったかも。
声をかけられたのに、その時に姿を見てない。
「大丈夫ですか?」
白服だった。
「はい。すみません、何ともないです」
そういえば、ガシッと掴まれる前に、膝がグラッときてその時、白服が手首掴んで引っ張ったのを見たような見てないような。
やはり視覚情報が当てにならない。
両肩を掴まれたまま、上に持ち上げられ立たされる。
足元に力が入るか確認するが問題ない。
暑いが元気だ。
「もう通されるようです。中で少し休みましょう。その方が涼しいです。」
主さんに言われ、後ろについて、建物へ入った。
部屋に3人とも勝手に入って行ったように見えた。
あっちに行ってください、とか特に誰かに案内されてないような?
まぁ私は勝手がわからないから。
ついていくと、イスが置いてある部屋だった。
藤とか竹とか、なんか植物で編んだみたいな、通気性の良い夏風なやつだ。
何人分の待ち部屋なのか結構ある。
そこに、頼んでおいたのかどうなのか、お茶が出された。
どうでもいいけど男の人だった。
特に気になるというほどじゃないが、お手伝いさんとか女中さんとかメイドさんとかがいる世界観で、男性がお茶持ってくるとかあるんだな、って思った。
お手伝いさんなら現代日本にもいそうだが、全然そういう世界に近くなかったから。
テレビで見る以外、実在は知らない。
同じ世界でも違う世界というヤツだ。
単にさっきの男性は、ここが役所関係で、職員なだけだと思うけど。




