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再び

 



 気味子さんは、指が一本増えたらしい。


 相変わらず私からよく見える位置に出てきた。


 目玉の両側にぴっ!と指を立てて。


 一本だと意味不明だが、指が2本だとポーズっぽい。

 少し斜めになってるし。


 少〜しだけユーモラス。 あざとい。


 ……全然かわいくなくてもあざとい、って言うのかな?


 今それどころじゃないが。


「ぁあの、ごめん!おはよう気味子さん。今日急ぐからこれでさよならまた明日」


 ちゃっちゃとカーテンを閉め、大急ぎで支度する。



 必死。


 何着てけばいいかな?どころじゃない。


 顔洗って近くにあるいつもの服着て、髪をブラシでといて。

 意味ないかもしれないが、財布もいつもの通勤リュックに入ってるか確認して、水のペットボトルをいれる。

 水だけは!

 ついでに台所でそのままコップ1杯だけ水を飲む。


 塩分も摂りたかった!


 もしかしたら40秒で支度出来たかも。人生初。


 だとしても今は心底、どうでもいいが。



 充電器から引っこ抜いたスマ子に、靴履くまでは絶対待つよう厳命し、晴雨兼用の折りたたみ傘がリュックに入っているのを確認する。


 スニーカーを履いて、よし。


「いいよ、スマ子。人目がなくてお屋敷の近くで、侵入禁止以外ね」


「移動します」


 今日は扉には始めから触れずに、スマ子に声をかける。

 スマ子の返事があり、光も何もなく、次の瞬間、昨夜の庭にいた。


 微妙に近くも遠くもないところで、誰かが驚いて声を上げたのがわかる。


「…………スマ子?侵入禁止以外って言ったよね?」


「昨日案内された場所なので侵入可です」


 いや、不法侵入。

 それ、私達が決める事じゃないから。


 昨日の通りのほうがある意味マシな気がする。

 あそこからお屋敷まで道わかんないけど。


 人目が避けられないなら、やっぱり街に出るのは危ないな。



 ざわざわとして、誰かの走る足音がして、振り返ると白服がちょうどやって来た。


 驚いた顔してる。

 あら、これは少し楽しい。

 急いだみたい。


 驚いた誰かが報告してくれたようだ。


 仰天して取り押さえる為に男を呼んできた、だったりして。

 ……洒落にならない。


 白服は出かける支度なのか、昨日街の人が着ていたマントのようなのを着ている。

 頭からすっぽり覆われてるが、少しだけ除く前髪が乱れていた。



 すいません。

 侵入したくてしたんじゃないんですが。

 ウチのスマ子は日本語が通じるようであんまり通じないんです。


 あれ?私そういえばどうやって異世界の会話してるんだ?

 こっちに来て初めて他者と会話したのがスマ子で、人類と会話したのは熱中症でぶっ倒れてる時だったから、気づかなかった。

 ホント今更。



 考え中に、白服は騒いでいた人達を落ち着かせ、他の人達はまた散り散りにいなくなった。


 ため息。


 を吐かれた。


 人がいなくなって、こっちを向いた後。


 いや、悪いとは思うよ?でも私もため息つきたいよ。


「……こちらで主がお待ちです」


 咎めるのは諦めたらしい。

 背中を向けて歩き出した。


 単純に、主さんが客のように遇しているからだろうが。


 主さんのあの、怪しくてもツッコまず流すのは『あなたは今回関わっただけの他人であ~る今後何か起きても我々何も知らないのであ~る』という主張の現れではないかと思う。


 それでも常識講座とか、今回の件とか、かなりの労をかけているけど。


 ありがたや〜。


 ほんのちょびっとだけ、ホントのホントは観光とかしてみたかったが、やはり陸には極力関わらないほうが良さそうだ。


 引きこもりらしくしとこうか。


 主さんのお屋敷の応接室(かどうかは知らないが素敵だった)とお庭が見れただけでも良しとしよう。

 お屋敷とか古民家とか好きだしね。

 詳しくないし、記憶には何故かほとんど残らないけど!



 白服について歩く。


 お屋敷を曲がり曲がり通り抜けながら、土足文化で良かったな、と思う。


 ……靴下、履いてくるの忘れた。


 急ぎ過ぎるのも問題だな。


(多分)朝早くと言える時間に着いたから安心して、忘れてた事にようやく気付いたんだろうけど。


 ってか顔洗ったけど、目やにとかついてないよね?

 ひげとかチェックしてないけど。

 ずっと1人だから、もう鏡なんてずっと見てなかったよ。



 昨夜はこんなに見かけなかった、と驚くほど、使用人さんなのか女の人がいる。

 お手伝いさん?女中さん?

 女給さん、は何だっけ?それはウェイトレスか?これは違うな。


 時々、移動中に偶然、とか作業中に出くわした、ではなく、白服を探して指示を仰ぎにくる人もいた。

 白服、若いのに凄いな。

 さっきは見た目より少し若いのかと思ったが。


 短い距離だが、とても活気を感じる。


 主さんは本当に大物らしい。


 ……この街で借りの返し方とか決まってるんだろうか。

 ちょっとコワイ。


 小説で、あれは確か歴史ファンタジー系な少女小説だったけど、砂漠では夜明け前から移動する、とあったので、念のため夜明けを目安に来ようと思ってたんだ。


 ここは砂漠ではないけど。


 昨日の街は、暑く乾燥が凄くて土埃が結構ある、という感じ。


 だからちょっとそっちより?かな、と。


 早く来て良かった。


 良かったと言える訪ね方じゃないが。

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