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 街は海と同じく晴れていた。


 まだ昼前だが、なかなか多くの人々がいる。


 ここが大通りなのかわからないが、道はかなり広く、そして何人かは私をガン見している。


 一見すると、人々はたいてい濃い色のフード付きのマントのような物を身に受けていて、白い浴衣地の甚平いっちょうの私は、浮いてる事この上ない。



 スマ子、薄々気づいていたが、ここまでバカだったとは!


「スマ子、まず、帰る。」


 怒りを抑えて現実的な判断をしたのに


「え?あと9時間は帰れません。 前に扉が海の上に直接繋がった時もそうでしたよね?」



 …………この、


 ボーーケ!


 バーーカ!


 ほんっとにお前、馬鹿!


 役立つどこじゃないだろ!


 気味子さんの方がまだ害ないわ!


「どうやってこっちの言葉もわかんないし金もないのに買い物すんのよ、馬鹿か!」


 一応、道の端にはいたのだが、邪魔にならないようにどこぞのお店の壁に寄ってスマ子に問う。


 お店の中から『何だコイツ』という顔で、こっちを見ている。


 ごめんなさい、怪しいものではありません。

 多分無害です。

 でも無知な状況だと危険な事になるかもしれないから、もうちょっと待ってください。何しでかすかわからない、ってヤバいでしょ?

 ウチのスマ子がホントにすみません。


「言葉は翻訳出来ます。こちらの知識も翻訳可能だから理解出来るのです。」


 です、じゃねぇよ!


 私が聞いて理解(わか)って話せんのか!


 お前に、スマホがない世界で、買い物中の会話を頼めるのか!



 ってか、


「使えるか使えないかわからんけど、そもそも財布持ってきてないんだけど!」


 ホントに馬鹿スマ子。


「元の世界の通過は使えません。そこまで都合よくありません。財布は意味がありません。」



 神様ー、

 今すぐコイツを粉々にして能力を私に移築してください、財布に残ってた1万3000円あげますからー!


 元はスマホなのにポンコツってなんだよ。


 落ち着け!

 短気は損気。


「お金ないのにどうやって買い物するの?」


 怒りで声が震えてんぜ。


 落ち着け、お店からこっち見てる人がまた増えてる。


 別方向から指さしてる人もいる。


 お願い、治安維持的な人を呼ばないで。


 いいこにします、しようと確認してるところなんです。


 傍から見たら私は、板に1人で怒ってる人である。


 珍妙なカッコのヤバいやつだ。


 これ以上はアカンよ。



「不明者登録所に行ってお金をもらい、そのお金で買います。」


 こいつなんかヤバそうな事言ってる!


 不明者登録所とは、このカコドの街の中でのみ使用できる、仮の身分証を発行する施設だそうだ。


 港街なので、事故等も考慮して、ほぼ無条件に発行されるそう。 街からは一歩も出られないが。



 その際、事故、事件によって今夜の泊まるところもない、という人の為に、申請すればお金が貰える。


 虚偽の申告には厳罰がくだされるそうだが。


「我々は大丈夫です。」



 …………。


 スマ子、一文無しなのはそうなんだけどね。


 寝る場所はあるよね?

 帰れるんだよね?


 ってか、あの海上は街の外じゃない?


「言わなきゃバレません。」


 だろうね。

 近所に別のお(うち)なかったもんね。


 確かに大海で漂流(?)とか大事故だけど。

 宿とる金は確かにないけど。


「何か……詐欺のような。」


 ふと、丸い影がさして上を見ると、お店(多分)の2階から、人が見ていた。

 それもいくつかの窓から、何人も。


 本格的に怪しいやつなのかも。


 何か犯罪みたいだが、とりあえずスマ子の言う通りにしよう。


 釈然としないが。


 ギンギンに、痛いほど照りつける太陽を浴びながら、先程の通りを、とか案内を始めるスマ子に従い歩き出す。


 この暑さで肉買って、9時間経ったら腐るんじゃない?


 進みながら、間違ってる気がするのに、人目があるので訊くことも出来ない。


 しかし忘れてはいけない。


 私はスマ子(コイツ)を信用してはならない。


 バカだから。





 茶色系に色が統一されてるかのような四角い建物郡。


 人の姿も、建物に馴染むというかアースカラーというか、地味な感じが多い。

 基本、頭からマント(?)で覆っていて、服装と言える程は見えない。


 逆に、とても鮮やかな服を着た派手な人もいるが、巻き付け系の服なのか、貫頭衣なのかもわからない。


 荷物を物凄い高さまで積んで歩くロバみたいな動物や、多種多数の台車がひしめき、賑わっている。


 賑わうとかホントはそれどこじゃない。


 そんな感想を抱く余裕はなかった。


 これは敷石と呼ぶのか、石畳と呼ぶのかとふと足元に目をやっただけなのに、すぐに人並みから弾き出された。

 誰かに押しやられたではなく、歩く人の体力に少しずつ跳ね飛ばされ続けた感じだ。


 踏まれるよりいいんだけど。



 さっきまでは人目が怖くてキョロキョロ出来なかったが、今はケガでもしそうでキョロキョロ出来ない。



「着きました。ここです。」


 そうスマ子に言われた頃には疲れきっていた。

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