ポンコツとは
肉の固まりが食いてー!
と体が叫んだ事はないだろうか。
心ではなく、体がである。
私はある。
大体、楽に用意できるご飯、みんな糖質。
茹でるとかお湯かけるとかチンするとか。
多分、たんぱく質を体が欲しているんだろう。
野菜は少なくなってきたし。
……畑のはもう少し覚悟が出来てから。
お肉を美味しく焼くのは、ズボラには結構ムズかしい。
まして、薄い肉じゃなくて厚い肉が食いたい。
そこまで大きくなくていいんだ。貧乏人なんだから。
高いもんは食えないんだから。
でも少しでいいから固まりステーキが食べたい。
前居の近くには、私でも払える金額で、分厚い豚肉がカリッと柔らかに焼かれた鉄板ステーキが食べられるお店があった。
あそこに行けば「年と共に脂身とか食べれなくなったわー」なんて、少食ぶってみたのが図々しい思い込みだったとよくわかる。
ライス大盛りの上、醤油ソースで300gペロリですよ。
トマトソースも美味しかったな〜。
チキンステーキも良いんだよ。
150円だかでアサリがゴロッと入ったスープつけてさ〜。
あー、食いたい。
肉、肉食いたい。
ただの肉じゃなく固まりを美味しく焼いたやつ。
美味しく焼いてくれるなら、ソースがどうこうは別にいい。塩コショウで。
アジシオ胡椒も良いよな。
店で出すものにアジシオ胡椒使ってるかは知らないけど。
物価が上がってくると金ない外食好きにはキツイ。 けど、自炊だって結局金かかるんだよな。
でも海上よりはマシだったな。
人間、感謝が大事よね。
失って初めてわかる、何気ない日常。
気味子さんに対する恐怖さえなければ、ここはある意味で平和でもあるけど。
平和か?
でも電気ガス水道まだ使ってるし。
恐怖……は、トモダチは、……えっと……。
まぁちょっと不穏で先が心配、と。
“都内で働いてる時も変わんないじゃん。貯金ほぼゼロよ”
そうなんだけど。
ちょっと現実逃避させてよ。
あぁ、現実逃避といえば家賃収入とか良いよね。
私もそうやって生活費稼ぐ必要ない生活したい。
んで空いてる1階とかで、ゆるくお店やって、バイトの美少女に
「店長、そんなんじゃお店今日も暇ですよー」
とか言われたい。
”バイトの美少女……。“
どっかから家賃入ってこないかな?
……ん、家賃?
家賃!
どうなってるの?
水道光熱費より大きい!
今月分までしか払ってない!
銀行アプリはもうないからどのみち振込出来ない。
無賃居住?
スマ子ーー!
“現実に戻ったな”
物件もないのに家賃入ってこないかな?とか言ってる場合じゃないんだよーー!
「こちらに物件がまだあるので、向こうにもあると思います。」
ま~たスマ子がワケわかんない事言ってるよ。
日本語喋ろうぜ、日本語。
アイムじゃパン。
”いや、日本じゃないだろ、一応“
向こうの世界から切り離されてたら、向こうから消えてこっちにいるのだろうけど、まだバリアの内側は元の世界だから。
と。
なるほど。
わからん。 さっぱりわからん。
だってこっちにいるじゃん。
あっちとこっちいたら2つじゃん。
私は、物凄く単純におかしな事を指摘してるだけなのに、何度も説明されたあげく『もうこいつに理解させようとするの無駄』という態度で、匙投げられた。
何故?
おかしくない?それ。
ともかく家賃は払えないしどうにもならない。
引き落としの電気ガス水道はともかく。
だそうだ。
大家さん、困らない?
大家さんは家賃の滞納が1番契約解除に結びつくから大丈夫だって。
うん。何が?
まぁいいや。
この海上でカーサフクダ消えたら困るが、大丈夫と言われたからには、もう考えない。
”わかんないからって投げ出すの早くない?“
いいの、佐知子。
バカの考え休むに似たり、ってね。
”バカから脱する努力をしたらどうなのよ!“
やべ、早知子出てきた。
「ところでスマ子や」
お前さん、私の生活のフォローの為に不完全変態したんだよね?
ポンコツ感漂ってるけど。 ……私のだから?
「分厚いステーキが食いたいんだが?」
金ないから大きくなくて良いよ。
“めんどくさい注文だな”
家賃とか大事な事をスルーしていたスマ子ではあるが、言うだけ言ってみる。
肉、食いたい。
「わかりました。まず、靴を履いてください。」
はいはい。
玄関に移動してスニーカーを履く。
他の部屋の何処かに、肉が隠されてるとかかな?
何の警戒もせず扉を開け階段に出た。
そこは階段ではなかった。
そもそもカーサフクダでもなかった。
ざわざわと人々の行き交う街だった。
「お肉を買うには街に出る必要があります。」
……それ、出る前に言えたよね?
私、甚平着たきりなんだけど。
スマ子ーー!
バカだ!
コイツ、ポンコツだ!!




