突入
サチ子さんはネコアレである。
多分。
ネコアレは猫アレルギーの話だ。一応言っとく。
小さい頃から、猫のいる家は痒くてしょうがなかった。
たまに猫に近づいてなでなでしたりすると、30分ぐらい目が痒くて痒くて涙が止まんなかったりした。
でも誰もが皆そうなのだと思っていた。
猫飼いの人は慣れてんだろう、的な。
大人になってからだんだんと、さすがにこれはアレルギーなんじゃないかと思うようになった。
看護師の友達に
「それ、猫アレだね。確実だね」
と言われたからそうなんだろう。
とは思っても、ちゃんと病院に行って調べたことはない。
アレルギーって繊細な人がなりそう、 という曖昧なイメージしかなかったので、自分でもびっくりした。
しかしそうやって理由ができてしまうと楽になった。
まあ確実ではないけど。でもまあ多分、猫アレなんだろうけど 。
ちゃんと「離れてもいいんだ」と、いうお墨付きとでもいうか。
ところが世の中には、何でもかんでも猫グッズに溢れている。
猫のためのグッズではなく、とりあえずなんか猫つけとけ!みたいなやつだ。
えーっくす(旧ツイッター)だって『猫を貼っとけばバズるんだろう?』みたいな風潮がある。
なんかそれに乗っかるのは、…………とっても癪だ。
ちょっと可愛いなあーと思ったりしても、猫柄は買わない。
世の中には、猫模様、猫柄が多い。
動物柄の中では他の追随を許さない。
ので。
もちろん。
そうした多種多様な猫柄の中から「可愛いー!こーゆーのが好きなんだよ、コレよ!」という、いわゆる刺さるものもある。
(刺さるはコレでいいのか?刺さるからいいのか……。)
けれど。
何か、負けた気になる。
だから我慢する。
特に今みたいに『なんかとりあえずつけてみた』以外の、何にも猫要素がなさそうなものを見ると。
これは絶対に負けちゃいけないような気分になる。
だって、このイラスト一つだもん、ネコアピール。
猫要素薄いもん。
名前(多分。近くで見れないけど)は『やまねこケン』だったけどさ。
でもさ……。
やまねこケンって、ケンって何さ。
カタカナだし。
どこ県さ。
何故に私はこんな1人で、アンタガタドコサみたいな感じ?
ぐのおぉぉぉ。
おーと!ここでサチ子さんの腹が鳴りましたー!
おかしい!サンドイッチを食べてからまだそんなに経っていなーい!
だがしかし鳴ったー!
どうする?
『やまねこケン』のネコブリッコに敗北か。
それとも退却か。
今日はもうすでにハチ(大)(小)の小演技に、退却している!
……ヤマネコが居るとして、私、この島の生き物にふりまわされっぱなしじゃない?
ぐきゅるるる。
はい、第二弾ー!
ぼっちマーケットも見つからず、スルーしてカーサフクダに帰るのも負けた気分。
入るのも『どうせネコが可愛くてつられたんだろ?』みたいな目で見られそうで(誰にだろう?)負けの気分。
ぐぬぬぬぬ!
……しかし、アレだ。
その、なんだ。
今日は探検の日だから(?)
何屋なのか確かめないと?
お店屋さんを探しに来たんだし?
ええ、別にネコはどうでもいいんですよ。
ちょびっと確認するだけだから。
ちょっとだけだから。
掴んでいたドアノブをとうとう押す。
中は少し薄暗い。
誰かいる様子もないし、あまり見ないですぐさまに入った。
後ろで扉がパタンと閉まる。
押した時の重さの割には静かだ。
そして完全に閉まって屋内の明るさだけになると、それほど暗くも感じない。
扉を閉めたら明るくなった気がする。
中は白い壁と木材との、ほぼその二色で構成された小さなホールのような空間だった。
二階建てのようで、二階の扉っぽいものが少し見えていて、このホールは吹き抜けだ。
真正面の奥の奥に、明るい空間があるようでそこだけオレンジ色っぽく見えている。
奥に続く正面だけ、廊下が少し長めなのか、トンネルや洞窟みたいな雰囲気がある。
こういうの建築って、ハーフティンバー様式というのだろうか。
本とかで説明されるのは建築の型の説明でも、参照写真は外観しか見たことがないから自信ないな。
右側は受付カウンターのようで、凹んだ部分があり、人二人か三人が立てるくらいの大きさだ。
『こーとおあずかりどころ』
『ぼーしおあずかりどころ』
『おにもつおあずかりどころ』
と、凹みの上にツヤツヤの木のプレート?が掲げられている。
カウンターは一つだから、別にお預け場所の名前も三つもつけなくてもいいと思う。
あと、全部ひらがなは読みにくい。
脳トレみたいだった。
『こーと』はともかく『ぼーし』はツッコミ待ちか?
サチ子さんはそこまで付き合いきれませんよ。
まぁヤマネコ氏がどうしてもというのなら考えんでもない。
そんな野生紳士、存在するのかどうか知らんけど。
左側は二階に通じる階段で、階段のほうがカウンターより大きく見える。
階段はこれも木で、深い茶色はピカピカのツヤツヤ。
細長い窓から日が当たり、まさに飴色に輝いている。
カウンターと階段だけ磨かれているようで、柱などは重厚ではあるけれど美しくはない。
たまたま日の加減でそう見えるだけ?
そういうものなんだろうか?
家主の趣味によるのかな。
日本人的には、大黒柱こそをせっせと磨きそうに思えるけど。
ゆったりとした階段は昇ってみたかったが、森(林?)の中を歩いて汚れてるだろうから止めておく。
自然の中にしては、かなり歩きやすかったけど、町中じゃないし。
気づかないうちに、靴底に砂利とかついてて傷つけても責任とれない。
それに階段に手すりがない。
木の階段だから木の手すりがありそうだが、あるのは手すりっぽい、白い壁と同じ……低い壁?
漆喰だろうか?
とにかく分厚いので、手で掴めそうにない。
壁に沿い、ゆったりと回りながら階段は入口扉の正面の上まで続いているようだ。
とりあえず、奥まで行こう。




