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初外出

 


 すり足、去り足後ろ足。

 あれ?

 抜き足差し足忍び足、だったっけ?


 ま、いいや。


 退却です。


 私は現実逃避することにした。


 いや、この言い方は良くない。


 戦略的撤退だ。


 何の戦線か知らんが、現状を把握出来ない。

 馬鹿ってゆーな。

 ってゆうか、現実を受け止められない。

 受け止めたくもない。


 今の私には、カーサフクダだけ漂流していたり、ある朝起きたらどこにも出れない絶壁の上だったりした頃の、忍耐力がないようだ。


 ……すり減っただけ、かな?

 そりゃあ、すり減るわ!

 いいんだ、逃げよう。

 そうしよう。


 ハチの世界にはハチなりに、きっと事情があるんだ。


 さっきのは、きっと見間違いだ。

 だって「部下です。ハチです。」って挨拶されたことないもの。

 蜂語わからないから言ってても謎だけど。

 携帯は見直さない。



 階段を駆け上がる。


 忍び足の意味ないじゃん。

 でも振り返らない!


 長い長い廊下を走ったり歩いたりして、まあまあ息を切らし部屋にたどり着く。


 迷いに迷って、『はにいますたぁどアジ』を急いで食べる。

 腹が減っては戦はできぬ。

 戦はしないけど、腹を満たすという準備が大切だということだ。


 美味しいが、どうしても『今、コレジャナイ』感が強くて可もなく不可もなく。

 もっくもっく。

 せっかくのしっとり具だくさんを、ただただ口に詰め込み咀嚼する。


 必死な割には、あまりスピーディーに食べ終わらなかったけれど、早速出発する。

 そのために玄関に靴を移動して、履いたまま座って食べたのだ。


 このまま庭からご飯を摂取し続けていると、そのうちに陸の蜂達に反乱を起こされるかもしれない。

 蜂起されるというやつだ。

 誰かサブトンくれ。

 そしてサブトンよりサチ子を助けて。


 バレーボールよりは小さかったが、大量に寄られたら避けられない。

 そして普通の蜂の百倍くらい刺されたら痛いだろう。

 一撃で()られるカモ。


 急がなければ。

 もはや『毎日ご飯探して歩いてネアンデルタール人より文明度低いかも〜(笑)』どころではない。


 走ってもすぐにエネルギー切れで歩くのは、目に見えている上についさっきもそうだったので、速歩きで頑張って移動する。

 どのみち足のスネが痛い。


 体感では思ったより早く扉について、羽音も聞こえず、滞りなく階段を降りた。

 つもりだった。


 階段を降りきって目にしたものはやはりオシャレ什器の小店。

 まだあった。

 入り口はやや塞いでいて、残った出入り口のところで大きなハチとちっちゃいハチが殴り殴られ怒られているような、寸劇のような光景を繰り広げていた。


 あっち側の階段下でやってたじゃん!!



 何?これ。

 移動して、同じことやってんの?


  この棚の中身も、日々入れ替えてんの?

 もう何やってんの?

 ツッコミが追いつかない私はどうしたらいいの?

 ここを駆け抜けるつもりだったのに。


 いや。

 走って出たところで、すぐにズッこけるかもしれないので走りはしないんだけども。



 ちょっと、あんたたち!

 そこで出入口を塞ぐのやめなさいよ!


 呆れから、やや強気になってきたサチ子である。



 ハチ、大小が動いていたのを止めて、チラリとこちらを見る。


 なぁに?それ。

 私の反応が大事なの?


 どういうことだ?

 私がハニーマスタード味が嫌だと言ったから?

 いや、嫌だとは言ってないな。

 後から食べるって言っただけだ。

 そのためのこのポーズなの?


 これ本当に寸劇なのか?

 どうしたらいいの私。

 なんかこれじゃ悪代官みたいじゃん。

  頼んでないのに、こんな茶番。

 後で食べるって言っただけじゃん。

 さっき、もう食べたけど。


 どうしよう、どうしよう?


 考えて全然わからないので、2人(2人?)のハチの間を突進していった。

 ハチはさっとよけ、私に道をあける。


 そのまま道を走ってつっきった。


 せっかくの庭なのに。


 全然見ることは叶わなかった。

 小道のように、踏みしめられている土の道があり、その上をただただ駆け抜ける。


 かろうじて、木材みたいなのをちょっと敷き詰めた小道と、こうやってただ土を踏みしめただけの小道と種類があるんだな、というのだけ、頭の中をかすめる。


  明らかに緑は緑でも庭ではないらしい場所に出た。

 カーサフクダの敷地内から出たらしい。

 なんてもったいない門出なんだろう。


 ちょっとがっかりと振り返ったが、このまま戻ったりしたら、私はもうこの島の探索に出かけないだろう。

 こういうのは勢いが大事だ。

 仕方がない。

 庭は次の機会に堪能しよう。



 今日のサチ子は朝から頑張っている。


 道なき道を進み……いや。

 獣道かな〜?それともたまたま空いてるだけかな〜?それともこれってちゃんとした道かな〜?みたいなのを、緑の中、進む。


 遠目(廊下から。魔力にあらず)から身を乗り出してみても、こんもりと緑が見えていたので木々があることはわかっていた。


 なんていうか雑木林!という感じだ。

 ほどよく日差しを遮り、時々日差しにあたり。

 そんなことを繰り返し歩く。

 心配してたほど歩きにくいわけでもなく。

 地方の、山の中の畑を観光用の花畑に転用した会場までの道、という感じ。


 ただなー。

 ちゃんと人工物があんのかな?

 森のお店屋さんとかって、さっきみたいに唐突に什器が置いてあって、青空市場みたいなのになってても発見できるかなー。

 ちょっとそこが謎なんだよな。

 謎ってゆうか、そうだったら困るよなー。


 特に山も谷もなく、不思議と凹凸のない蛇行した道を歩き、開けた……拓けた?場所に出た。


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