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まさかの理由

 

 唐突のバイオレンス。


 やめてください。


 え?

 私のせい?


 私の「後で食べる」って言ったから?

 どういうこと?


 ちょっとちょっと!

 上がヒステリーおこすと下の手のものは大変です、みたいな。

 そんなのやめて。


 私がわがままなの?

 どういうことなの?


 ハニーマスタード味は別に甘くないの?

 私はどうしたらいいの?

 これをこのまま食べればいいの?


 いや、それは確かにね?

 すぐ食べれる方がいいんだけどさ。

 メニューの自由はないの?


 よくわからないが必死。気にしてしまう。


 それくらいハチさんは小さいハチ(多分)をバコンと叩いた。

 いや、バコンと音がしたわけじゃないんだけど。

 せいぜい、ちっちゃいからパコンというぐらいだったんだけれども。

 しかし、小ハチさんの首の揺れがすごかったのだ。

 なんかあの首振り人形のベコみたいな。

 あれぐらい、ぐわんぐわん揺れた。


 蜂の首って丈夫らしい。

 いや知らんけど。


 っていうか、あこコは蜂なのか?

 まぁそこはいいんだけども。

 いや、良くないのか。

 げんこつを振り下ろしたようには見えなかったが、そのぐらいの勢いだ。

 蜂の足って器用だな。

 いやだから、そうじゃなくてさ!


 心の中でツッコミに勢いがありすぎたのか、気配が漏れてるのか。

 ハチさん(大)は、こちらを振り返った。

 やべ、こっち見た!


 とっさに見てたことを誤魔化そうと、リュックの左腕をぬいて自分の前に持ってくる。

 スマホをポケットから急いで取り出そうとするも、チャックが噛んだ。

 あぁ、もう!急いでる時にかぎって!

 三回くらい試してる間に、妙にポケットが軽いことに気づいて、ここには入れてないことを思いだした。


 ポケットはポケットでも、入れたのズボンのポケットだった。

 私、何しにリュック片肌脱ぎしたんだろ。

 リュックでもそういうのか知らんけど。


 1人でワチャワチャしているのをジッと見られていたので『私はスマホ見てたので見てませんでしたよ』から、『スマホを探して1人頑張ってました』に設定を変更する。

 言葉で言い訳するかはわからないから、設定がどうしても必要なんじゃないんだけど。

 自分の態度に迷わなくて済むから。

 なんて言えばいいのかわからないから。

 とりあえず。


 頭を閉じる余裕もないので、相手が魔力持ちならこんな無駄なあがきを説明しているようなものだが、多分大丈夫。

 私が伝えようとしてるんじゃないし、ハチさん(大)は魔力があるようだが、私と差がある。

 これが対話なら、魔力差で相手を変質させるか潰すからしいが、勝手に魔力が漏れてる分には、そこまで影響はないらしい。

 小さな生き物のほうが、そういったスルー能力が比較的高いそうだ。

 完全に影響がないわけではナイ、そうだけど。

 どっち?

 違いがわからん。


 どっちにしろ多分大丈夫。

 こっちから漏れているのをなんとなく感じ取ってるから、あれぇ?と思うかもしれないけれど。

 生き残る為に、魔力差のある生き物の魔力を基本的には避ける習性があるんだそうだ。

 その土地の魔王の魔力は例外らしいが。

 魔力差があるって便利だな。

 ありがたいこっちゃ。


 もし、こちらからあのちっちゃい方に用事があるんだとしたら、私は相当気をつけなきゃいけないけどね。

 言語で話しかけても魔力が漏れてるサチ子は、魔力が向かってしまうかもしれんから。

 体の動きも視線とリンクしちゃったりするしね。

 魔力にもっと慣れないと、やらないほうが無難だ。



『甘いのは後で食べたいだけなんですけれども〜』も、何がダメなのかがわからない。

 私以外が、多分そのせいで怒られてんだもんね。



 スマホを、とりあえず高く掲げる。


 大丈夫。


 私、超猫背だし巻き肩だしスマホっ首だけど。

 普段からこの高さだからね!

 ちゃんと目線の高さで持ち上げる、正しいスマホの持ち方をしてるだけだからね。

 あなた方から視線を外すためにやってるんじゃないから。

 現実逃避じゃないから。



 スマホを持ち上げてハチさんたちを視界から覆うようにすると、画面に妙なものが出た。


『ハチ(大)  魔王キミコとサチコの部下』


 部下?

 ブカ?


 ん?ちょっと待とうか。


 部下?


 私の人生初のシロモノだぞ?

 部下?

 何組織?

 魔王組織?

 なんで私は妖怪の仲間入りさせられてるの?


 何これ、スマ子のイタズラ?


 しかし反応を待ってもスマ子は何も答えない。

 やはりただのスマホに戻ったようだ。

 ただのスマホか?

 いや、妙なスマホでもいい。


 それより、私を忌海子(きみこ)さんと並べないで!

 それ人外、しかも問題アリ魔王だから!

 そこに私はいません!

 並んでなんかいません。


 ハチ(大)には続きが、もっと小さい文字であった。


『魔王キミコの差し金でサチコの周りをうろついている海の蜂。突然現れてみかじめ料をとっている。』


 チンピラやん。

 海の蜂って何?

 この、私の手の中にあるの、みかじめ料?

 思わず風呂敷包みを、いや包みが解けて覗くサンドイッチを見下ろす。


 ……すごいや!

 食べ物を探しに来たのに、後からでも食べたくならないんじゃないか、という気がしてきたぞ!


 突然現れてみかじめ料を、って、そこも毅深子(きみこ)さんの差し金?

 私、気視子(きみこ)さんの仲間だとして、もしかして自分の生活の為の島だと思ってたのに、ただの侵略者だったの?

 この島の歴史は知らないところで紡がれていたの?


 ってゆーか、陸なのに。

 魔王も代わったのに、海のモンに支配されてんのかい。

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